到着「アルカイド」
一時間後、アヤたちは馬に乗って町の門に現れたのでそのままアルカイドに向かって出発した。
「あの…ナオヤさん」
「ん?どうかしたか?」
「いえ…あの……つらくはないんですか?」
アヤは俺の現状を見てそう聞いてくる。
現在の俺の状況はアヤたちの馬を追従する形で身体強化魔法で走っている。ほんとはもっと速く走れるし、空歩で空を蹴っていけばもっと早く移動できるのだが、さすがにそんなことをしたらアヤたちを置いていくことになるのでしないがな。
「別に辛くはないぞ……もっとペース上げる良いんだったら上げたいくらいだ」
「そ、そうなんですか……」
流石にその返答は予想外だったのか顔が面白い感じに引きつっている。
俺はそのことより目的の街であるアルカイドの情報が聞きたいのだが、聞いても良いのだろうか?
「それで、まずアルカイドについたらどうするんだ?」
「そうですね……まずはギルドには向かわず、いったん私の寝泊りしている宿に向かいます。ナオヤさんもその宿に泊まってください、そこまで高いわけではないので。そのあと直属の上司である私の上司に今回の件を報告、そしてそのままリンカを拘束して事情聴取が流れだと思います」
「ふむ……なら急いだ方がいい感じか?」
「ええ、ですが先ほどまでいた街からアルカイドまでは馬を使っても二日かかります」
俺の質問にアヤはそう答えた。
馬で二日か……ならアレを使うか。
「少し馬に付与魔法をかけるぞ」
「え?ええ……わかりました」
了承をとって、アヤとミネルバが乗っている馬に付与魔法をかける。
「『俊足』、『体力増強』」
俺が二つの付与魔法をかけた瞬間、二人の馬の速さが数段上がる。
「きゃあ!」
「なっなんだ!」
「付与魔法で馬の足の速さと、体力を増加させた。これなら先程の二、三倍以上早くなる……って聞いてないか」
俺がかけた付与魔法の説明をするが二人はいきなり早くなった馬に戸惑っているのか話を聞いていない。
まあ、流石にいきなり速さの上がった馬に戸惑うなっていうのが無理な話か。
俺は説明は後にしようと思い、自分も付与魔法で自身を強化してスピードを上げて走り出した。
♢♢♢
「あの……ナオヤさん。少し休憩しませんか?」
「ん?……ああ、そうだな。でもアルカイドまでもう少しだぞ?」
「え?」
半日ほどそのまま走り続けているとアヤから休憩の言葉が入る。
後ろを見えるといきなり早くなった馬の速さに慣れていないせいか、ミネルバもかなり疲れているようだ。
だが、俺が見え始めている街を指差すとアヤは少し驚いた感じで街を見ている。
どんだけ馬に気をかけていたんだか。
「じゃあそろそろ馬にかけていた付与魔法を解くな」
「あっはい。ありがとうございます…負担をかけてしまって……」
「いいのいいの、急いでるんだったら早い方がいいだろ?そこまで魔法は負担になってないから大丈夫だ」
「そうなんですか……」
俺の言葉に少し顔をひくひくさせているアヤから俺は視線を外し、ミネルバの方を見てみる。
ミネルバは早くなっている馬には慣れたようで少しアヤと違い余裕が見られるが……少し何かがおかしい。ぱっと見はそこまでおかしくは見えないが、なんとなくどこかおかしい。
俺は魔力の流れを対談室と同じように見てみると、やはり魔力の流れが乱れて見える。勘違いと思ったが、やはり何かが原因で魔力が乱れているようだ。魔力は人間の中を血管のような感じで循環している、それは普通の人間でも時々乱れることはあるがそれはそこまで影響がない。だが、それが長く続いたりすると魔法の発動速度、体の調子や精神状態にも影響が出る。
アヤがミネルバと行動をともしていたのが半年前……なんとなくきな臭い。
俺はその考えが外れて欲しいと思いながら、アルカイドに向かって走る速さを少し早めた。
「ここが私が普段アルカイドに来ている時に寝泊まりしている宿です」
俺はアヤが普段泊まっているという宿に案内された。
今回のこともあるから、俺にも同じ宿に泊まって欲しいそうだ。正直、この宿も信用できるかはわからないが、雇い主であるアヤに文句は言えない。
「三十分ほど休憩を挟みましょう。では後ほど」
俺が部屋を借りたあと、風呂などの休憩をしたいと言うアヤの提案に賛成した。流石にノンストップで来たので体力の余裕はあっても汗はかなりかいているのだ、いい加減風呂に入りたい。
俺は自分の割り当てられた部屋に入って、まっすぐ風呂部屋に向かう。
そして…神無月に手をかけて俺は部屋の中にある気配に声をかける。
「そこにいるやつ、何している……」
「あはは……本当に気付けるんだ…コウキ様の言ったとうりだ」
幼い言葉でそう帰ってきた返事とともに、家具の影から一人の幼い男の子が現れた。その男の子は俺を見てニヤリと笑って自己紹介をしてくる。
「初めましてナオヤ・イスミ…僕は魔神教第五柱、『ジェミニ』だよ。今日は君にコウキ様の伝言を伝えにきた」
その男の子は不気味に左側の表情筋だけを動かして、そう言った。




