エピローグ
これで、完結です!
ここまで、大変お世話になりました(*^_^*)
都内。なんの変哲もない普通の一軒家。
「おはよう。と、何してんだ?」
「あ、瑛さん、おはようございます。」
「おはよう。で、何してんだ?」
同じ問いを繰り返す、瑛と呼ばれた男性。悪人面した彼が話しかけたのは、古びたパソコンの前に座っているひとりの美しい女性。
「実は、日記を書いてるんです。」
その返答を聞き、瑛は苦笑する。最近ようやく敬語を話さなくなってきた女性が、自分が無意識のうちに敬語で話しているのに気づいていないからだ。
「瑛さん――わるものAさんと出会った時からのことを振り返ってみようと思って。」
瑛の苦笑の意味に気づいたのか、こちらも少し笑みをこぼしながら言う女性。
それを聞き、
「っは! くっ……ははっ!」
「な、何がおかしいの?!」
突然笑い出した瑛に、子供のように頬を膨らませて睨む女性。
くすんだ茶髪をアップにして、眼鏡をかけた彼女は一見するとものすごく知的に見えることもあり、その表情はどこかちぐはぐな印象を与えた。
だが、瑛はまるで気にせず笑い続けている。
それは、
「記憶力が悪い、お前が? 無理だろ――っ!」
「無理かどうかなんて、わからないでしょ!」
「いいや、無理だね。じゃあ、一つ聞くが。」
「?」
「今日の午後、俺たちには大事な用事がある。」
「大事な、用事?」
「そうだ。」
ニヤニヤしている瑛と、対照的に眉根を寄せる女性。どうやら「大事な用事」とやらに、全く覚えがないようだ。
「ひっどーい! 萌葱ちゃんったら、忘れたの?」
そんな言葉とともに、玄関から入ってきたのはこれまた美しい女性。萌葱と呼ばれた女性が、どちらかといえば可愛い、そんな言葉が似合うのに対してこちらの女性は、綺麗、そんな枕詞がつきそうだった。
「って、先輩。午後からの約束でしたよね?」
「んー、待ちきれないから来ちゃった!」
てへ、そんな効果音がつきそうな笑顔を浮かべる女性――音無鈴。
「鈴さん! そうか、今日はみんなでデートに行くんだった!」
「違う! 今日は、お前の職探しだろ!」
「あ。」
デートとは対極に位置するであろう職探し。萌葱は、見るからに嫌そうな顔をしている。
「これも全部、瑛さんの甲斐性がないから……」
「っぐ……」
萌葱のあんまりな評価に、反論が出来ないのか唸る瑛。
「と、とにかく! こんな大事なことを忘れていたお前が、2年も前のことを覚えているはずがないだろ?」
「うー……」
そもそものきっかけの日記に、無理やり軌道修正を図る男。その目論見は成功し、萌葱は沈んだ顔をしている。
それでも、まだ諦めきれないのだろう。チラチラとパソコンを見ている萌葱。
「なら、俺とお前の出会いを言ってみろ。」
「……たしか倒れている瑛さんに、私がビックマックをおごって……」
「ダウト!」
実際は、ドックフードだった。それに、ビックである必要性はどこにもなかった。
「まぁ、まぁ。こんなダメ夫との出会いなんて忘れて、あたしとの愛のメモリーを……」
「おい。」
もちろん冗談のようで、瑛が睨むと鈴は残念そうな顔で抱きつこうとした手を下ろす。
だが、そんな姿を見ても萌葱の顔はどこか陰ったままだ。それを見かねたのか、瑛が突然叫ぶ。
「それなら、今から書けよ。」
「今から……?」
「過去なんて、忘れようぜ。色々あったし、さ。」
本当に、色々あった。それを思い出したのか、萌葱、瑛、鈴はそれぞれ遠い目をする。
「そう、しようかな。」
やがて呟いた萌葱。
その顔には、確かな未来に対する希望が溢れていた。
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これまで、わるものAが現れた! を読んでいただき、本当にありがとうございました!




