俺は諦めが悪い 第8話 不屈、覚醒
「誠二さん! 誠二さん、起きて!」
目を開けると、涙でぐしゃぐしゃになったセラの顔があった。両手から放たれる治癒の光が、誠二の胸を必死に照らしている。
体中が痛い。肋骨が何本か折れているのがわかる。だが、まだ生きている。
「……セラさん。皆は」
誠二は、首だけを動かして洞窟の前を見た。
ガルドが巨大化した盾で、森の主の前足を受け止めていた。足が地面にめり込み、髭の奥で歯を食いしばっている。その盾にも、細かな亀裂が走り始めていた。
ミーナは岩陰で杖を握りしめ、震えている。レオンは額から血を流しながら、それでも剣を構えて立っていた。
「くそっ……くそっ! 俺のせいだ……俺が、あんな約束信じたから……!」
レオンの叫びが、洞窟に反響する。
誠二の脳裏に、ひとつの光景がよみがえった。誰もいない夜のオフィス。空っぽになった隣の席。
――もう二度と、俺のせいで誰かを潰させない。
十九年前のあの夜から、ずっと自分を支えてきた言葉。
ここで寝ていたら、また誰かが潰れる。ガルドが、ミーナが、レオンが、そして目の前で泣いているこの少女が。
「田村。お前、まだ立てるだろ」
闇の中で聞いた声が、耳の奥でもう一度響いた。
「……はい、高橋さん」
誠二は、セラの肩を借りて立ち上がった。膝が震える。視界がかすむ。それでも、足はしっかりと地面を踏みしめていた。
「誠二さん、まだ動いちゃダメです!」
「すみません、セラさん。でも――」
誠二は、森の主をまっすぐに見据えた。
「俺は、諦めが悪いんです」
その瞬間、半透明の板が、これまでにない強さで輝いた。
条件を満たしました
スキル「不屈」が覚醒します
覚醒効果:あなたが立っている限り、仲間は倒れない
累積値:19年分の誓いを確認――計測限界を突破しました
誠二の体から、淡い金色の光があふれ出した。その光は細い糸のように伸び、ガルドに、ミーナに、レオンに、セラに、そっと結びついていく。
「なんじゃ、こりゃ……体が、軽い……!」
ガルドが目を見開いた。盾の亀裂が、みるみるうちに塞がっていく。
誠二は、自分の胸に手を当てた。仲間たちが受けるはずの痛みが、糸を伝って自分に流れ込んでくるのがわかる。重い。苦しい。だが、それでいい。
誰かが潰れるくらいなら、全部俺が引き受ける。それが、田村誠二という男の、十九年分の答えだった。
(第9話へ続く)




