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1. ノック

前々から書きたい構想があった話です。

マイペースに書いていきます。

正義は必ず勝つ。


それがこの世のあるべき姿だと思う。

そうあるべきだと俺は日曜の朝にガキの頃から叩き込まれた。


そう。つまり悪は必ず負ける。

どんなアニメやどんな映画でも最後には必ず悪は負ける。何故か。簡単だ。皆がそれを望むからだ。

悪が蔓延る事を望む人間も環境もありえない。

この世にいる人間は全て。自分が正義だと思ってる。

だから悪は悪であることに気づけず他人の正義を正義として認められない。

だから俺はあの日…


「樹〜行ってくるぞ〜」


ドアが閉まる音が響いた。

樹。それは俺の名前だ。

父は毎朝毎朝同じセリフを吐き舞台袖に捌けていく。

俺という主役はこの舞台の上で壊れたスポットライトに当てられ座っている。


俺の言う舞台とはこの部屋の事を指す。

俺の引きこもり専用部屋だ。母は俺が小さい時に道路に飛び出た俺を庇って車に轢かれ亡くなりその後学校でいじめを受けるようになった俺は引きこもりになった。

それでも父は俺を見捨てないでいてくれた。

ただの平サラリーマンだ。稼ぎもそれほど多くない。それに周りにはシングルファーザーとして引っ越してきた挙句息子が引きこもりだと知られてから露骨に冷たい態度を取られある事ないことを囁かれている。


それでも父は俺に優しい。一度も怒鳴られた事もないし殴られたこともない。できた人だと…捻くれた俺でも手放しで認める善人だ。


対する俺は…何をしているのだろうか。

今年で高校卒業の代。…まぁ進学してないけど。

食べて寝て、起きたらFPSかRPGかアニメ、特撮鑑賞に勤しみ疲れたらまた寝るを繰り返すだけ。


生きてるような感覚も意味もこれといってない。虚無に苛まれる度にあぁ。俺はなんの為に生まれてきたのだろう。死ぬまでには俺が生きる意味を見つけたい。そんな風に思ってしまう自分はつくづく何も出来ないただの引きこもりだと自虐の歯車を回す。

それが俺の普段の生活だ。

そんな落ちぶれた俺の人生に突如今までの何よりも辛い最悪な出来事が起きた。


ある日の夕方。

俺はいつもと同じような一日を過ごしていた。昼頃から降り始めた雨は止む気配もなく窓へのノックを続けている。俺はその音が嫌でプレイしていたゲームの音量をあげた。そこに遠方から着信音が聞こえてくる。

どうやら俺のスマホらしい。

ったく。どこのどいつだよ。俺の番号に掛けてくるやつなんて居ないぞ。そうか。父さんだ。おおかた携帯を忘れたか何かで公衆電話から掛けて来たのだろう。


「もしもし?」


「あ、もしもし。こちらは渡辺 樹さんのお電話で間違いないでしょうか?」


「は、はい?」


思ってたのと違う。

父とは違う声質のきっちりとした男性の声だ。


「突然のお電話で申し訳ありません。私、川越警察署交通課の大平と申します。ただいまお時間よろしいですか?」


交通課?

一体なんの電話だろう。俺は外に出ないから関係ない。父は電車通勤で車は使わないし…


「えっと…なんの用でしょう」


「落ち着いて聞いてください。本日、川越市内で重大な事故が発生致しました。現場の状況から車両は現場から立ち去っており捜査しております。事故現場で発見された被害者の方が所持品等から渡辺様のご親族である渡辺 和貴様の可能性が高い事がわかっております」


「は?」


「遺体の損傷が激しくその場での身元確認が困難な状況です。そのためご家族様に身元確認をして頂きたく思いお電話致しました」


父さんが………死んだ………?

何を言ってんだこいつは。身元確認?

ふざけんな。違う。絶対に違う


「違う!俺の父さんじゃない!」


「落ち着いて下さい。それを確認する為にも一度署に来ていただいてよろしいですか?」


「ふざけんな!行くか!違うったら違う!」


父さんが死ぬわけない!

この警察を名乗る男はデタラメを言っているんだ!

そうだ…!これは詐欺だ!ニュースで言っていた。

最近警察を名乗り金を要求する詐欺が流行ってるって!


俺は電話を切り父の携帯に電話をかけた


「出てくれ…出てくれよ…父さん…!」


プルルル…________


プルルル…________


プルルル…________


おかけになった電話番号は電源が入っていないか電波の届かな…_________


「なんで出ないんだよ!父さん!父さぁぁぁん!」


窓へのノックの音はより強さを増す。

まるで現実から目を逸らし閉じこもる俺に外に出て現実を見ろと諭しているかのようなその音はとても…


気持ち悪かった。




2話に続く

毎話この位のボリュームになると思うお

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