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2.予感

 またなにか起きるだろうという予感はあった。「保管よろしく」と渡されたドアはティッシュ一箱と同じくらい軽い。やはり現代物だろうか。こうしている間にもみるみるうちに溶けて……。

「うわっ」

 あっという間に白い子猫へと変わった元・扉が光を発しながら床を跳ね回る。空間圧縮収納魔法をかけているドッグタグを強く握りしめる。

 敵性生物なら――。

「みゃう」

 ドッグタグから室内でも取り回しやすい短槍を引っ張り出したところで可愛らしく鳴かれた。母性本能をくすぐる声に、槍を向ける決意がブレる。

「落ち着け。宇宙空間を無傷で漂流する生き物なんて」

「いるんだなぁ、これが」

「エゼット」

「この生き物は魔法学でいうところの――」

 目の前の生き物について解説が始まる。

 魔法学の専門家ではないので聞き流すが、地球より進んだ魔法文明出身者の言葉なら俺が野蛮に切り捨てるわけにもいかない。だが警戒を完全に解くのも怖い。宇宙船の外は広く深く暗い星の海だ。急に暴れだしたり最悪船体をへし折ることだって考えられる。

 槍を持ったまま警戒することで譲歩したということにしてもらおう。

「と、まあそういうわけだ。質問はあるか」

「敵性生物じゃないんだな?」

「猫をベースとした友好的な種だ。魔法で透視した限り武装なども見当たらない」

「そうか」

 短槍をドッグタグに収納した。おとなしく座っていた猫のような生き物に歩み寄り、膝をつく。

「……怖がらせてごめんな」

「にゃーん」

 喉をなでてやると、気持ちよさそうに床へ寝転がって体をくねらせ始めた。ヘソ天だ。とてもリラックスしているらしい。

 宇宙は広く深く暗い。そんな世界を孤独に彷徨い、ようやく安住の地を見つけたのだとしたら。

「終生飼育するか」

「ふふふ。お前が相方でよかった」

「俺もだよ。名前はどうしようか」

「ヴァリューはどうだ。この銀河で最も価値ある者として相応しい」

 俺たちに同意するように猫――ヴァリューが嬉しそうに鳴いた。

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