03話 風来亭
人がいなくなった所で後ろから声を掛けられる。
「おい、待ちな」
立ち止まり後ろを振り返ると、チンピラ風の冒険者三人が道を塞ぐ様に立っており、回り込んだ仲間が反対方向から現れる。
「なにかようか?」
「へっスカしやがって、いけ好かねえやつだな。用件はシンプルだ。金や金目の物全て渡しな」
「ふむ、理解出来ないな。何故俺が如何にもザコなお前達に下手に出ないといけないのだ?」
「なっ!何だとテメエ!腕の一本や二本は覚悟しやがれ!」
「ならば、貴様らは命を取られる覚悟をするのだな」
一斉に五人のチンピラが襲い掛かって来たが、彼らは数歩も走らぬうちに倒れた。
よく見れば胸あたりから血がドクドクと流れており、上条圭ことケインの手の中には六つの心臓があった。
それも握り潰し、手の血もサラサラと灰になり消えた。
「さて、完全に死ぬ前に誰からの指示だ?」
頭を掴み情報を得る。
「ほう、これは予想外の人物だ」
笑みを浮かべてその場を去る。
その後遺体を発見した人の悲鳴により、衛兵が呼ばれて捜査が開始された。
そして一方のケインは宿を探して歩いていた。
「確かここら辺に評判の良い宿屋があった筈だが……すまない。ここら辺に風来亭と言う宿屋はあるかな?」
道行く人に宿屋の場所を訪ねる。
「ああ、それでしたらあそこの交差路を左に進むとすぐにありますよ」
「ありがとう」
礼を言い言われた交差路を通り左に曲がり歩くと、すぐに目的の宿屋『風来亭』が見つかった。
「ここか」
目の前にある大きな建物に目をやる。
二階建ての建物であり、一般家庭の一軒家を三軒横に並べた大きさだ。
中に入ると昼を過ぎた辺りだが、人が多く賑わっていた。
一階は食堂でもあるらしく、食事をしている人達を見かける。
中に入るとこの店の店員と思われる少女が声を掛けて来た。
「いらっしゃいませー!お一人様ですか?」
「ああ」
「お食事でしょうか?それとも宿泊でしょうか?」
「宿泊で頼む。それと昼はまだなので食べたいんのだが?」
「わかりました!お母さん!宿泊客!」
「はーい!」
奥から恰幅のいい女将さんが現れた。
「いらっしゃいませ。当宿をご利用頂きありがとうございます。この宿の女将で御座います。ささ、此方の台帳に名前をご記入下さい」
言われた通りに名前を書く
「ケイン様ですね。当宿は初めてでよろしいでしょうか?」
「ああ」
「はい、ありがとうございます。当宿風来亭は一階は大部屋の雑魚寝。二階は一人部屋と二人部屋が御座います。勿論一階の方がお安く二階は少し高めで御座います。一階が一泊銅貨30枚それに食事代とお湯を使うならお湯代も込みですと銀貨1枚です。二階の一人部屋が銀貨1枚。二人部屋が銀貨2枚となっております。此方も食事代とお湯代込みですと、一人部屋が銀貨1枚と銅貨70枚です。二人部屋ですと銀貨2枚と銅貨40枚となります」
「一人部屋の食事代込みで。お湯は大丈夫だ。そうだな三泊頼む」
「畏まりました。しめて銀貨4枚と銅貨50枚になります」
「銀貨5枚をお預かりします。お釣りの銅貨50枚となります。早速お昼は食べられますか?食事代は朝と晩代だけですので、別料金になりますが?」
「ああ、頼む」
「畏まりました。お席へご案内致します」
女将に案内されて席に着く。
「おススメで頼む。飲むものは果実水で」
「畏まりました。少々お待ちくださいませ」
そう言って女将さんは厨房の方に行く。
しばらくするとスープとサラダにパンそれと分厚いステーキが運ばれて来た。
「お待たせしました。スープとパンはお代わり自由ですので、ごゆっくりとどうぞ」
そう言って女将さんは下がって行く。
早速スープをスプーンですくい口に運ぶ。
出汁が効いていて美味い!
正直見た目は中世風なこの世界なので、食事にそこまで期待していなかったがこれは美味い!もしかしたらこの店が特別美味しい可能性はある。
何せ大繁盛しているからだ。
次にサラダを食べたが、かかっているドレッシングも美味しくサラダもシャキシャキと新鮮な野菜を使っており美味しい。
ステーキも切るとジュワッと肉汁が溢れて来て、タレと合わさっていい匂いを出している。
食べるとホロっと崩れるくらい柔らかく、白いご飯が欲しくなる。
パンも出来立てであり柔らかく美味しい。
あっという間に食べ終えて、スープとパンも二度もお代わりしてしまった。
果実水を飲み一息入れる。
大満足である。
そうしてゆっくりとしていると、隣の商人の話し声が聞こえて来た。
「聞いたか?何でもダウンカーズ帝国とアルカランス王国でも勇者召喚が行われたらしいぞ?」
「マジかよ!」
「声が大きい」
「おっと、すまん。でマジなのか?勇者って言えばあの伝説のか?てことは最近の魔物の増加原因はやはり魔王が復活したって話もマジだって事だよな?」
「多分な。それと情報はもう一つあってな。この国でも近々勇者が召喚されるらしいぞ」
「本当かよ?この国の王様って言っては悪いけど、かなり傲慢な性格らしいぞ?勇者と喧嘩にならないといいけど」
「そこらへんは国のトップだ。ちゃんと分別あるんじゃないか?」
そんな事は無かったぞ?だから排除したしな。
そうやって後ろの商人から情報を聞き終えた後、部屋に行きこれからの事を考える。
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