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樹属性魔法の使い手  作者: 深海 和尚
魔法学校四大競技大会
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選抜戦

宜しくお願いします。

 週が明けた。

 

 いつものように振る舞って俺は登校する。


 まだ馴染めない教室は、魔法四競技大会の話で持ちきりだった。

 教室に限らず廊下でも外でも、なんなら学校に来るまでも、 そのことを口にする人々で溢れ返っていた。

 競技についての話題がほとんどを占めているわけであるが、今年は例年とは違い、あることが注目されている。

 それはもちろん他国の王族についてだ。


 皆興味津々。

 そりゃそうだ。

 他種族が、ここ王都に出入りすること自体珍しく、ましてや王族が全て集まるというのは、後にも先にも初めてのことであったから。

 競技に興味がなく、四競技大会をどうでもいいとさえ思っていた俺だって、その話が聞こえようものなら少し耳を傾けてしまう。

 正直、少し大会の日が待ち遠しくも感じていた。

 

「───ねぇ! 聞いてるの?!」

 

「イタッ!」

 

 俺は隣にいる女性から突如として肩にパンチを喰わせられた。

 言わずもがな、シャーロットだ。

 何故か教室に着くなり、先に着席していた彼女へと隣に座らされた。

 そして、そのまま実技訓練所へと首根っこを掴まれ連れていかれることとなった。


「アンタね、次、私とやるんだからね? ったく、しっかりしなさいよ! 呆けててあっさり負けたりなんかしたら許さないんだからね!」


「はぁ……」

 

 今、俺達の目の前ではまさに模擬戦が繰り広げられている。


 一組あたり十五分程度だろうか。

 言っちゃ悪いが、どれもこれもあっさりしたものだ。

 死に直結するような、ヒヤヒヤするものなど今のところ一つもない。

 ──ぬるい。

 それが久々の学校で見た模擬戦の最初の感想だった。

 それ以降は申し訳ないが全く見ちゃいない。

 いや、一応ここで観戦しているから視界に入っているのだが、全然頭に入ってこないのだ。

 正直、どうでもよかった。


 屋敷に行ってからは、さっさと寮へと帰り、その後はずっと悶々としていたわけで、結局次の日もそれが晴れることなどはなく、実家に帰ることも忘れ引きこもってしまった。

 ただ、やはり無事なことだけは知らせたくて手紙を出しておいた。

 無事とかの前に心配をしているのかどうか知らないが。

 まぁ、数年も連絡一つしていなかったのだから、とりあえずはそれだけでもよいだろう。


「──では、ブラク君、シャーロットさん! 中央へ!」

 

 先生の声が会場内へ響き渡る。


 実技訓練所に到着してからも考え事に耽っていたら、いつの間にやら俺の番となっていた。


 ちなみにうちクラスで注目の対戦カードとなっている、シーニィとペランは大取りとなっている。

 別に二人が実力者だからというわけではなく、あれだけ騒いだもんだから注目されてしまった。

 とはいえ、ペランは天才らしいから楽しみだ。


 さっさと適度に負けて彼らの試合へと回そうかな。

 

 と、思っていたのだが。


「──その試合ちょっと待った!!!」


 中央へと歩み始めた途中、突如としてかけられたのはまさかの待ったコール。


 俺は足を止め振り返った。


 透き通るような白い肌。

 艶のある髪を首に流した可憐な少女。

 身長は俺と同じぐらいか。

 ピンクの唇に、キュッとした顎ライン。

 綺麗なパーツで形作られた顔立ちは、美少女の一言。

 ゆったりとしたローブを着ているが、ラインが浮き出るほどに胸はそこそこ。


 そんな彼女が俺の方を見ていた。


 よく見れば、視線は俺ではなく、俺の後ろにいる人物に向いていた。

 声の発生元である男を見ていた。


 そうなんです。

 待ったをかけたのは男なんです。


 いやー、ドームで反響して分かりづらかったとはいえ、正面から声を掛けられたのに振り返ってしまうなんてお恥ずかしい。


 少女はただのは観客だな。

 同じクラスメイトで、たぶん観客だ。

 というかあんな子、クラスにいたんだろうか。

 全く気付かなかった。

 あんなに可愛いのに。


「何でしょうか?」


 少女のことはとりあえずどうでもいい。


 問題はこの男だ。

 大柄で筋肉質、腰に携える武器は杖というより棍棒。

 最早、魔法使いというより戦士だ。というか、オーガだ。ケダモノだ。

 こんなケダモノがクラスに潜んでいたとは。

 あの少女以上に驚きだぜ!へっ!


 しかし、俺はどうだっていいのだが、やる気に満ちていたのに水を注されたシャーロットが怒り狂った顔になってしまったじゃないか。ばかっ!


「──わ、我と勝負を代わってくれんか!」


「えっ? 俺とやるということで?」


「い、いや、貴殿ではござらん! シャーロット殿と一戦をば! そしてあわよくば一線をば」


 コイツ、何をイッテンダ?


 だが、まぁそれならオッケイだろう。

 やらなくていいならそれがよいよい。


「あんたね、何言ってんのよ! 気持ち悪い!」

 

 眉をハの字にしたシャーロットさんだ。

 腰に手を当て、怒り心頭といったところだ。

 

「……お願いします…。 シャーロットさんとやらせて頂き、我が勝ったらお付き合いください……そして一線を…フカフガ──」

 

 告白ですか。

 鼻の穴を膨らませてフカフガしやがって。

 

「…………ちっ。 受ける義理もないけど、面倒くさくなりそうだから、いいわ。受けてあげる」

 

 シャーロットは心底嫌そうな顔をしている。


「あ、あざっす!」


 あっさり上手くいくとは思わなかったのか、逆に驚いた顔をしている男。

 

「──ただし! その男、ブラクに勝ったらやってあげるわ!」

 

 ………はっ?

 えっ、とばっちり?

 

「すいません、腹痛が……あっ、漏れそうです。やばいです。キツイです。というわけで、あちきはこれにて───」

 

 馬鹿馬鹿しい。


 俺はそう言うと、くるりと翻しこの場を去ろうとする。

 

 すると、

 

「───ぐぅわぁぁてぇぇぇえいぃぃ!!!」


 男が大声をあげた。

 反響も相まって、物凄くうるさい。

 うん、うるさい。


 そして、男はダダダッと大きな足音を鳴らしながら、俺の目の前へと移動してきた。

 足はそこそこに速い。

 オーガの世界なら一等賞をとれるかもしれない。


「貴殿に拒否権などはありはしないのだ!!

 シャーロット殿の許可が降りた今、いざ、尋常に勝負するのだぁ!」


 俺は先生の顔を見た。

 組まれた試合をするにも拘わらず、これでは予定が狂ってしまう。

 もちろん、止めてくれると思って視線を合わせたのだが、先生は何も言わなかった。

 むしろ、ニコニコと機嫌よく面白そうなものを見るように静かに 佇んでいる。


 くっ。

 

「あの、俺はシャーロットとは大丈夫なので、貴方に全てを───」


 俺はシャーロットとどうこうもないし、関係ないことだからと断りを入れようとするのだが、話し終える前に男が目を見開き啖呵を切った。


「やあや!我こそは偉大なる父、テランブール・オーガストの嫡男、ゴブリング・オーガストである!

 シャーロット殿との一線、いや、正式なお付き合いを賭け、貴殿と我はこれより真剣勝負を行うのであーる!!!」

 

 もう聞く耳をもっちゃいない。

 しかし、名前からもうオーガなんだな。

 というか、ゴブリンでオーガじゃねぇか。

 ゴブリングってなんだよ。

 何かの遊びか、おい。

 まぁいいけど。

 

 しかし、これは俺が勝ったらどうなんだ?

 付き合う権利を獲得するのか?

 そうか、獲得か……。

 いらないかな。うん、それはとりあえずいらないとして……やるしかないか。

 

 仕方なく中央へとトボトボと歩みを進め、男と向き合った。

 

 先生は何事もなかったかのように片腕を上げると、

「───それでは、始めっ!!」


 声を張り上げドーム内へと響き渡らせた。

 男は、先生の声が完全に消えるのを待たずして、杖改め、その厳つい棍棒で奇声を上げながら飛び掛かってきたのだった。

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