これが美少女特典か……!
「おい」
………。
「……おいって!」
「うるさいな、今考えてるんだから後にしろよ……って、なんだソレ」
あんまりしつこいからしぶしぶ振り返ってみれば、譲はいつの間にか、可愛らしいピンクの花を大事そうに持っている。
「な……なんか、貰った」
「はぁ? なんで」
「そこのばあちゃんが、今度なんか買ってねって」
譲が指さす先には、露店で花を売る、人の好さそうなおばあちゃんがいた。俺が見ているのに気が付いて、皺を深くして笑う姿からは悪意は感じられない。
「オレ、金払うって言ったんだけど、ばあちゃんがいらねえって言うからさ」
「脅してねえだろうな」
「ちっ、ちげーよ。オレ、別に」
珍しくも譲は困ったような顔で、おばあちゃんと自分の手元の花を交互に見てはオロオロしている。自分では脅したつもりはないけれど、もしかして怖がらせてしまったのかも知れない……そんな不安が、表情から見て取れた。
「ごめんごめん、冗談だよ。おばあちゃん、嬉しそうだもんな」
「だ、だよな!」
ホッとしたように譲が破顔する。
そんなに握りしめたら花がつぶれちゃうんじゃないかと思うんだけど……でも、よっぽど嬉しかったんだろうなあ。コイツがまさか、花貰って喜ぶなんて思いもしなかったけど。
俺達のやりとりを微笑ましそうに見ていたおばあちゃんに、花を指さして「ありがとうございます!」と礼を言ってから俺達はまた歩き始めた。
そしてすぐに、譲の変化に気付く。
さっきまでとは明らかに違う……できれば俺に隠れていたいとでも言いたげに後ろからついてきていたのに、
足取りも軽やかになったし、うつむきがちだった顔もしっかりとあげられている。
おいおい、鼻歌でも歌い出しそうなくらい機嫌いいんじゃないか? こんなに上機嫌な譲なんて、もう数年レベルでみてないと思うんだけど。
俺を追い抜いてあっちの露店、こっちの露店をちらちらとみている後ろ姿をぼんやり見ていたら、譲がくるりと振り向いた。
あ、マジで機嫌いいわコレ。
「なんかこの体……いいな」
「へ?」
「いや、誰もからんでこねぇし」
それが普通なんだよ。
そう言いたかったが譲があまりにも嬉しそうだったから、とりあえず黙っておいた。ただ、一人で歩いてたら別の意味で絡まれそうだから、後で注意しといた方がいいよな。
「むしろ親切にしてくれるし、気軽に声、かけてもらえる」
噛み締めるように呟く譲に、さすがの俺も何も言えなくなってしまった。
ガサツでケンカっ早くて堪え症のない奴だと思っていたが、姿さえ違えばあんなに酷くはならなかったのかも知れないなぁ。




