お前ら騙されてる!
堂々と歩いても人を脅かすこともなければケンカを吹っ掛けられることもないと理解した譲は、その後終始楽しそうに町を散策していた。
どっからどう見てもちょっと声をかけたくなる可愛い子にしか見えない。
正直これがあのいつ見ても藪にらみで町を闊歩し、凄みを利かせていた大男かと我が目を疑う思いだ。姿が違うだけで心持ちまでもこうまで変わるんだろうか。
結果、ギルドへ行って少々店をひやかし、自分達の家に帰るまでに、譲はなんとケーキとキウイみたいなフルーツと、可愛いピアスまで貰っていた。こんなのゲームでもなかった事だ。
あれか?
親切にされ慣れてない譲の、ぎこちない笑顔がいいのか? 初々しさを感じるとでも言いたいのか?
声を大にして叫びたい。
お前ら騙されてる!
こいつ中身は、ケンカっ早くてガン付きの悪い大男なんだからな!!
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「おい陸、なんかお前機嫌悪くねぇか?」
部屋に戻ってくるなりテーブルに突っ伏してグダグダしてる俺を見て、譲は怪訝な顔をした。……譲にバレるくらい俺ってわかりやすいのか……。我ながらがっかりだ。
確かに俺は嫉妬している。
だって、俺の方がこのゲームをやり倒してたんだ。イベントだって概ね把握してるし、上手くやれると思ってたのに。
ゲット出来てるアイテム数には大きな隔たりが出来ているこの状況。
悔しくない筈がない。
そしてそれを口にするのも悔しいんだよ! 察してくれ……。
「食えよ」
「え、なんで。お前が貰ったんだろ」
察してくれたかどうかは不明だが、譲が貰ったケーキを俺の目の前に無造作に置いた。
気を遣ってくれたのか……? とも思ったが、「オレ、甘いモンなんか食わねーし」と言うなり、自分はフルーツにそのままかぶりついて、「げ、皮かてーな」とか呟いてるあたり、他意はないのかも知れない。
ていうか、せっかく可愛らしい顔してんだから大口あけてフルーツ丸かじりとかしないで欲しい。元のお前に比べると顎のデカさとか強靭さとかないわけだから、ちょっとは考えろよ……。
あ、ケーキ意外に美味い。
フルーツがふんだんにトッピングされているからか、甘すぎず瑞々しさもある。これなら譲でも食えるかもな。
「甘すぎなくて美味いよ、このケーキ。お前もひとくちくらい食っとけば? 次会った時、味の感想くらい言っとけよ。それだけでもくれた人は喜ぶんだから」
この世界じゃ、そういう細かい行動も大切だ。これまでの譲の行動パターンから考えるに、絶対にあとからお礼なんて言いやしないだろう。そう思って忠告したわけだが、譲は意外にも「そ、そっか」と受け入れた。




