俺も男だ! ハッキリさせてやろーじゃねーか!
ぽろぽろぽろぽろととめどなく流れては落ちる涙を拭いもせず、ミニスカートの端を握りしめて泣き続けるゆずの姿に、むくむくと圧倒的罪悪感が沸き起こる。
あああもう! 何やってんだよ、俺!!!!!
自分のダメさ加減に、ついに俺の感情も臨界点を超えた。
「うぉああああああああーーーーー!!!! ダァッ! ぅらっしゃあああああああああ!!!!!」
「ひぃっ」
突然の俺の雄叫びに、ゆずの肩もびくりと跳ねる。空なんかゆずの腕から飛び降りて、今や部屋の隅っこで尻尾を足の間に挟んで震えている。脅かしてすまん。
「な、な、な、なに、突然。どうした、の?」
どうしたもこうしたもあるか。
ゆずにここまで言わせて、なんなの、俺。
昨夜だってしっかりコイツの気持ち聞いたじゃねーか。
リストじゃねーが、はっきりさせるべきなんじゃねーの? 俺よ。
つーか、迷ってるポイントってそもそもなんなの?
矢継ぎ早に俺自身が俺を責め立てる。そもそも昨夜からここまで、俺の精神はずっと『平常心』から遥か彼方の『今にもヤバい』臨界点をフラッフラしてるんだ。
自分の腰抜け加減に自分でも嫌気がさすわ。
「よーし、俺も男だ! ハッキリさせてやろーじゃねーか!」
目の前のゆずの肩を両手ではっしと掴む。驚きですっかり涙が止まったらしいゆずが、目をまんまるにして俺を見上げた。
「はっきりって……はっきり……だ、ダメ!! まだ待って!!! 私頑張るから、お願い、まだダメ!!!」
断られると思ったらしいゆずが、必死に「まだ言わないで!」と懇願する。
「違うわ! 俺なりに真剣に葛藤してる!」
言いざま、俺はそのままゆずの細い体をしっかりと抱きしめた。俺の飛び出さんばかりの心臓の音もまる聞こえだろうが、もう仕方がない。
ああもう、こっ恥ずかしい。
何が困るって、弟とも妹とも思ってきたコイツとこういうことになるのがもう、恥ずかし過ぎるんだよ。
どうだ、耐えられるか俺。
コイツとちゅー出来るっていうのか?
自問自答しつつ見下ろせば、ゆずは真っ赤になったまま、震える瞳で俺を必死に見つめている。なんだこれ、健気か。
ヤバい、出来る。超、出来る。つーか、もしかして今出来るんじゃね?
自然な成り行き? で徐々に顔を寄せていくと、ゆずは目を閉じ……閉じ……閉じねーな。
お願い、恥ずかしいからせめて目を閉じてくれ。頼む。
願い虚しく、俺から目をそらすことさえ出来ないらしいゆずは、プルプルと震えながら近づく俺の顔を一心に見つめている。
ええい、ままよ! 強行突破だ!
意を決した俺の視界のはしに、鮮烈な赤が走った。
……ん?
「うわぁ、ゆず! 鼻血!!!」
「も、もうダメぇ……」
俺の腕の中で茹であがったまま、ゆずはクテンと崩れ落ちた。
「ちょ……ええ!? 大丈夫かおい!」
とめどなく溢れる鼻血を必死でおさえる。ゆずを抱きかかえてベッドに運び、鼻血を処置し、くずかごが赤いティッシュでいっぱいになった頃には、なんかもうめっちゃ疲れていた。
うん……だよな。グイグイくるから忘れてたけど、俺とおんなじくらいコイツだってこーいうことに免疫ねえんだよ、そういえば。
ゆずを寝かせたベッドの横で、ぐったりと座り込む。
ちえ、気持ち良さそうに寝てやがる。鼻血は止まんねえしそのくせ顔の赤みはひかねえし、さすがの俺も心配したってのに、呑気なもんだ。
半目のままゆずの寝顔を見ていたら、ゆずは、ふと嬉しそうに微笑んだ。
「幸せぇ……」
あまりの破壊力に、俺は心臓をおさえたままベッドに突っ伏す。
寝てるくせに、人を殺す気か。クリティカルヒットが過ぎるわ……!
腹いせに鼻でもつまんでやろうかと思ったが、また鼻血が出ても困る。仕方なく、俺はただただゆずの平和な寝顔を見守った。
明日は多分、村中のヤツらに冷やかされるんだろうなぁ。明日の惨状が目に浮かぶ。ゆずはただただ純粋に祝福されるだろうが、多分俺には野郎どもの手荒い祝福が待っているはずだ。
めっちゃ怖い。
まあでも、いいか、コイツが幸せなら。
そう思えてしまうほどには、どうやら俺も末期だったらしい。
これにて完結です。
四年近くもの間、モダモダし続ける二人を見守ってくださった方たち、本当にありがとうございます!
またそのうち、SSでもあげますね!
ありがとうございました(^^)




