色々な意味でヤバい。
念仏でも唱えないと口からうっかり「可愛い」って出そうだった。
ちくしょう……ゆずのくせに!
ヤバい。
いよいよもってヤバい。
薄々気がついてはいたが、認めたくは無かった……日に日に、可愛いと思う回数が増えている。
だってしょうがないじゃないか、ゆずのヤツ、尋常じゃなく乙女スキルが上がってきてるんだ。レベルアップのスキルボーナス、女子力とか乙女とかに全振りしてるんじゃないかってくらいの凄まじい進化なんだ。
いやまあ、そんなスキルツリーないけど。
今だってホラ、頭を抱えてる俺を不思議そうな顔で小首傾げて見てるし、チラッと一瞬だけ視線を送ったら、満面の笑顔を惜しげもなく晒してくる。
ちくしょう、可愛いじゃないか……。
俺が視線を逸らしている間にさっさとブーツを履いたゆずは、鏡の前に立ってみたりジャンプしてみたり、その場で軽く回し蹴りの型をやってみたりと動きの確認に忙しい。
一通り済ませて満足したのか、跳ねるような足取りで俺に駆け寄ってきた。
「ねえ、これさ? 早速フィールドで試してみたい! 履き心地も抜群だし、すっごいジャンプできる!」
「おう、防具なんか使ってナンボだしな、リストでも誘ってクエストに行ってこいよ」
「え、なんで? 陸と行きたい」
こっちの気も知らないで、ゆずときたら無邪気に一緒に行こう? と誘って来やがる。
バカ言うな、これ以上一緒に居てうっかりトキメいたりしたらどうしてくれるつもりだよ。
「いや、俺はまだ改良作業が残ってる」
「じゃあ、終わるまで待ってる。実際に使ってるとこ見た方が改良だってしやすいんじゃない?」
「……」
もっとも過ぎて言い返せない。まさかゆずに口で負ける日が来ようとは……こんなところでまで女子力発揮しないでくれ。
「ええと、ゆず。その靴、すげえ似合ってるから」
「えっ?」
答えにすっかり窮したあげくに絞り出した言葉に、ゆずは一瞬驚いて、すぐに嬉しそうに微笑んだ。照れているのか、頬がほんのり紅い。はにかんだ笑顔がさらに目の毒だった。
「あの、だからさ。せっかくだからリストに見せて来いよ」
「はあ!?」
その瞬間のゆずの表情の豹変ときたら。般若が降臨したのかと思った。
俺、なんかヤバいこと言ったんだろうか。
「なんで、リスト?」
「え、だって好きなんだろ?」
「この前、違うって言ったじゃん!」
拳を胸のあたりで固く握って、噛みつくみたいにゆずが叫ぶ。でっかい目には、大粒の涙が浮かんでいた。
違ったのか、そんなに怒らんでも……。いや、怒るのが普通なのか?
「す、すまん。ええと、じゃあ誰だ、ディーノか? ラツィオか? アデラールか?」
慌てて攻略対象の男連中の名前をあげていくが、ゆずの眉間の皺はぐいぐいと深くなっていく。
マズイ。これはマズいぞ……!
「すまん……あっ、まさかのプラグ王子か?」
「知るか! 陸のバカ!!」
ゆずの右脚が、えげつない勢いで俺の頭部に炸裂した。




