可愛いは正義
「わあ〜可愛い!!」
でた、女の子の定番の第一声。しかしキラキラした目を見るに、その言葉に嘘はないらしい。
そりゃまあ可愛かろう。
白を基調にした編み上げブーツではあるがなんせ膝上までのロングブーツだし、なんとなくデザインが間延びしてる気がしたから足首とふくらはぎにはレースのアクセントをいれてある。
さらに太ももの部分は折り返しになっていて、ここにもフェミニンなレースがあしらってある非常に乙女チックな仕上がりだ。
ついでに言うと断裁部の縁取りも複雑な模様を施してあるし、留め具には守護の効果がある魔石を使ってある。
デザインにも徹底的にこだわった自慢の一品だ。
だがしかし!
褒めて欲しいのはそこじゃない。なんならデザインは俺が可愛い女子を堪能するためにこだわった、単に趣味の範疇だ。どっちかって言うと褒めて欲しいのはその強靭さ、攻撃力の高さ、そしてバネによる機動力の高さ、そこである。
素材を徹底的に開発したことで、「付加効果」なしでここまでスペックの高いブーツ作れた俺って天才じゃない?
普通のブーツって付加効果つけまくっても「守備力25、攻撃力5、俊敏30」がマックスなんだぞ? このブーツ「守備力55、攻撃力35、俊敏60」ってもう、神スペックだと思わない? 普通に最上級の鎧レベルだからね?
「あ、すごい。硬い……ここ、なんか鉄板とか入ってる?」
ブーツを撫で回して「可愛い」を連発するゆずが、ようやく「可愛い」以外の言葉を口にした。
待ってました! ようやく気づいてくれたのか!
俺はここぞとばかりにこの世界で一番硬い鉱石を使ってるんだとか、布に練りこんだんだとか、開発が大変だったんだとか、頑張って説明した。
力の限り力説した。
ほんと、ちょっと汗ばむくらい力説したんだ。
しかしゆずはニコニコと笑うだけ。こいつ、絶対分かってねえ……。
ちょっとした失望感に襲われたが仕方ない。努力なんて分かって貰えない方が多いんだもんな、技術者の悲哀である。
「陸」
「なんだよ」
仕方ないとは思っていても、若干唇が尖ってしまった。
「難しい事は分かんなかったけど」
だろうな、そんな顔してたわ。
「すっごい素材で、陸がすっごい工夫して作ってくれたんだって事は分かった」
ゆずはそう言って、新作ブーツをギュッと抱きしめる。
「すっごく、嬉しい! ありがとう、陸!」
殺す気か。
なんと言う愛らしい笑顔。
花が咲くような、ってこんなのを言うのか。心の底から「嬉しい」ってのが溢れ出してきそうな、そんな笑顔だった。上気した頰も、嬉しさに細められた目も、大事そうにブーツを握りしめる小さな拳ですら可愛い。




