いやいやいや……
マジですか……なんと奇特な。
あれだぞ? 今でこそ見た目愛らしいかも知れねぇけど、アイツ毎日猛者をのしちゃあ傷だらけで帰ってくるような、乱暴者だぞ?
もはや何度目になるか分からない心のツッコミは、勿論誰にも聞かれる事はない。よって、ゆずの本当の姿を推し測れるヤツは現れようがない。
ゆずが女らしくなればなるほど、俺の感覚と周りの見方はかけ離れていくんだろうと思うと、何となくモヤっとするが。
しかしまぁ、なんというか。
一匹狼で恐怖の対象だったあのゆずが、たかだか半年弱で超絶人気とまで言われるとは。ほんとに随分となじんだもんだ。
今まで散々恐れられ、ケンカを売られ、子供に泣かれまくっていた過去を思えば、これはこれでいいのかもしれない。
ちょっとした親心のようなものを感じてホッコリする。
なんせしょっちゅう手当てしてやったり、一緒に謝ってやったり、宿題片付けてやったり、散々手を焼かされてきたんだ。同い年だが、もう弟みたいなもんだからなぁ。
「こら、聞いてんのか? 俺は真面目に忠告してるんだぞ?」
「聞いてるさ」
「どうだか。そのニヤニヤ顔じゃ真面目に聞いてるとも思えんが」
「悪い悪い、ゆずのヤツ皆と楽しくやってんだな~と思うと嬉しくてさ。アイツはおと……妹みたいなもんなんだ。前は結構言葉とか荒くて誤解されがちだったから、人気あるとか聞くとなんか安心してさ」
「へえ、あのゆずちゃんが? 想像出来ないな……ああでも、確かに最初に会った時より雰囲気も丸くなったし、言葉使いとかも女の子らしくなったよな」
なるほど、ゆずのヤツ外では女らしくしてるって言ってたけど、どうやら他人から見ても充分に成果がでているようだ。さすが単細胞、順応が早い。
ミランダ姐さんのセクハラスパルタ教育の基礎プラス、ゆずの努力の賜物なんだろう。
いやしかし、すっかり女子力が上がったあたりで、もしも元の世界に戻ったりしたら、それはそれで恐ろしい事になるんだろうなぁ。
ちょっぴりだけその光景を想像して、俺は体を震わせた。
***
それからさらに2ヶ月。
ゆずのヤツも今となってはどこからどう見ても愛らしい女の子だ。
地味に歩き方とか身のこなしとか、仕草が洗練されてきている。これはステータスの魅力がガンガンに上がっているのが原因なのか、それともゆずの意識と努力の賜物なのか、考えるとちょっと怖い。
なぜこんなしょうもない事をつらつらと考えているかというと、今俺は現実逃避したいほどの恐怖と戦っているからだ。
女子力に目覚めたゆずが、今まさに手料理とやらを作っていらっしゃるのだ。
ヤバい。
ただただ怖い。




