デレ!?デレなの!?
息を止めたまま、巨大ゲジゲジに向かって猛ダッシュしたキャッシュちゃんは、左右の剣で素早く脚を薙ぎ払う。無数の脚がうじゃうじゃと宙を舞った。
うおおぉぉぉおおお!
気・持・ち・わ・る・い~~~!!
なんで満足げなのキャッシュちゃん!?
あ、そうか。脚さえ奪えば機動力は半減だ。闘いやすくなる……って言ってる間に仕留めちゃったよ、流石だな。
大きく息をついたキャッシュちゃんは振り返り、唖然としている俺を見て小首を傾げた。
「これ、素材にならない?」
これ!?
ってゲジゲジの脚!?
無理無理無理!!!
だってまだピクピクしてるじゃん!
何に使えるか見当つかないじゃん?
いくらキャッシュちゃんのご提案でも限度があるでしょ!?
「カ、カンベンして下さい…っ」
思わず泣きが入った俺を見て、キャッシュちゃんは上機嫌で笑う。
「冗談」
と首をすくめた。
……ちょっと何これ!
キャッシュちゃんが!
あのツンデレキャッシュちゃんが!
冗談とか!
***
「……おい」
「んーーー?」
「おいって!」
「んーーーー……?」
「シバくぞこの野郎!」
怒声と共に脳天に衝撃が走った。
「痛っっってぇぇ!?」
「デレデレニヤニヤすんのも大概にしろこのデレ男が!」
目の前にはイライラMAXのゆずがいつでも第二投を放てる構えで息を荒げている。
あーー痛てぇ。
何もチョップかまさなくても。
「痛ってぇなぁ。別に俺がデレデレしてようがニヤニヤしてようが関係ねぇだろ? 世間様に迷惑はかけてねぇわけだし」
「目の前で! 今現在! オレが迷惑こうむってるだろうが! 気持ち悪いわ目障りだわ、話聞かねぇわ」
「だって俺の天使が」
「もう十回は聞いた。そろそろ正気に戻って飯でも作れ。それともオレが作ってやろうか?」
「カンベンして下さい」
殺す気か。
多分俺の顔はこれでもかの無表情だっただろう。ゆずの作った飯なんか怖くて食う気にもならん。
「……冗談だ」
何そのしてやったりの顔。
いいだろう、受けてたってやる。
「分かった分かった、じゃあメシにするから。実はこの前キノコのスープ作ってて、閃いたレシピがあるんだよ。せっかくだからお披露目するわ」
「え?」
途端に逃げ腰になりやがった。
「いやメシくらいさ、普通に作らねぇ?」
ゆずは何故だか知らないが、錬金で作られた食物が苦手なのだ。味は別に普通なんだけどな。
「やっぱさぁ、得体の知れない液が入った釜にぶち込まれたモンとか、ちょっとヒくだろ」
「初日からウサギ丸焼きにして、素手でかぶりつこうとしてたワイルド野郎が、なに繊細ぶってんだか」
まあ見た目的には繊細でいて欲しくはあるが。




