オレはうまいメシがあれば充分だから!
「お前、意外と褒め殺しなんつぅベタな戦法、使うんだな」
思わず言えば、譲は不思議そうに小首をかしげた。
「戦法? ってなんだ?」
こいつ……素で褒めちぎってたのか。
「いや、ラツィオのことめっちゃ褒めてたじゃん」
「ラツィオって、あの学者の兄ちゃんか。だってすげえじゃねーか、魔物殺すんじゃなくて、手なづけようなんて、なかなか出来ねえぞ。あのワンコ、懐かねえかなあ」
あまりにも譲が嬉しそうだから、なんだかもうどうでもよくなってきた。
ほっとけばスキップでもしそうなほど浮かれている譲に、俺は軽くアドバイスする。
「ワンコじゃなくてウルフな。まあ、ラツィオも町の外に出るときに誘えばいいよ。仲良くしていけばそのうちアイツ、本気で魔物を仲間にする方法編み出すからな。なんならスライムだって手下にできるようになるぜ」
「それはぜって-------イヤだ!」
「ま、それは冗談として、さっきみたいなウルフ系とかは懐くと可愛いと思うな。モフモフだし」
「モフモフか……」
「そう、モフモフ。お前まだガキの頃、捨て犬拾っておばさんにガチでげんこつ貰ってなかったっけ。ここなら飼い放題だぞ」
「そっか、それいいな!」
可愛く笑う譲を見て、俺もなんだかちょっと幸せになる。
譲は確かに、この世界にきてから笑うことが格段に増えた。眉間にしわがよってるトコなんて今日は一回も見ていない。
譲が「いつまでも女のままはいやだ」って早く元の世界に帰りたがってたから、できるだけ最短でゲームクリアすることを考えて行動してるけど、それでも一年や二年はかかるに違いない。
その間少しでもこうして、笑って暮らしていければいいよな。
「なあ陸、次はどこ行くんだ?」
「ん? 今日は忙しいぞ。通行証貰えたから、みんなに会っときたいし。牧場にいるディーノと、農場にいるルーフェルミちゃん、食堂にいるミリーとアデラール、それに」
「待て待て待て待て! なんだそれは! どんだけ行くつもりなんだ!」
「え? この村に住んでる攻略対象者たち全員に会わないと。仲良くなるとレアな素材の採取場所教えてくれるから、とりあえずは顔合わせときたいんだよ」
「意味は欠片もわかんねえけど、なんか面倒なこと言ってるのだけはわかる」
「さっきラツィオと仲良くなれば、そのうち魔物が仲間にできるようになるって言ったじゃん?」
「言ってたな、そういえば」
「この世界ってさ、なーんもしなくても別にいいけど、特定の人と仲良くなると色々できることが増えていくわけよ」
「なんかお前、目が怖い」
「ディーノなら牧場、ルーフェルミちゃんなら農業体験できるぞ?」
「いやいや、そんなタルいの、オレはいらねえから! うまいメシがあれば充分だから!」
「いいからついてこいって。頑張ったら最後に食堂に連れて行ってやるから」
面倒がる譲をエサで釣り、俺はその日、日が落ちて暗くなるまで村中を駆け回った。




