今日は勝負の日
譲を促して先へ進めば、案の定、でっかいウルフが閉じ込められた背の高さほどの大きな檻の前で、困った顔でたたずむラツィオがいた。
緩やかなウェーブの黒髪も金縁のモノクルも怜悧で知的な印象を醸し出している美形だけど、めちゃめちゃ魔物オタクなのが玉に瑕……という設定だったが、俺はそのオタク部分が気に入っていて、割とよくパーティに入れて冒険に連れ出していたメンツだったりする。
せっかくこの世界に来たんだから、会ってみたい一人だ。
「うーん、なかなか懐いてくれませんね」
「だから無理なんだって。魔物は人に懐かないって、何千回言えば理解できるのさ」
そして、呆れたような声とともにラツィオの家の扉が開いて、銀の短髪の男が出てきた。
この国の王子であり、この村の開拓を計画した張本人、プラグだ。
俺たちと同じ年くらいだというのに、村の開拓なんて一大事業を企てるとはさすが王子様って感じだけど。
「餌は食べてくれるんですけどね。まだお手は無理です」
「やめときなって! そいつ、ラツィオの手、食いちぎる気マンマンじゃないか。そんな凶暴なのと遊んでないで、さっさとこの村を開拓して、隣国までの街道を通してよ」
そう、これが今日絶対に見たかったイベントだ。
プラグ王子が、この村の開拓責任者ラツィオと話しているところに出くわすイベントが、最初のキーイベントで、ここだけ選択肢を誤らなければ、たくさんのイベントと採取場が一気にオープンするんだ。
ちなみに、プラグ王子はこの日以外は気まぐれにしかこの村にこないので、この日を逃すと様々なイベントが一気に遅くなってしまう。
まさに勝負の日だ。
よしっ! 頑張るぞ!
「すっげえな……魔物、手なずけようとしてんのかよ。チャレンジャーだな」
勢い込んで声をかけようとした瞬間、隣に立っていた譲から、感心したような声が漏れ出た。
プラグ王子とラツィオの目が、一気に俺たちの方へ向く。
「……君は?」
その後、二人にすっかり気に入られてしまった譲のおかげで、魔物オタクのラツィオからは、これから出会った魔物が自動で書き込まれていく魔物図鑑をゲットし、プラグ王子からはいろんな場所に入っていける通行証をなんともあっさりゲットできてしまった。
いや、予定通りではあるんだが、ラツィオを褒めまくるという、譲の思わぬ行動に俺は内心ドン引きしていた。
コミュ症だと思っていたが、ガタイと顔が怖かっただけで、意外とコイツの本質って人たらしなんじゃねえかな。




