初のバトルはもちろんスライム
安心したところでやっと採取に入ろうかと思えてきた。
そうそう、この森は最初に行ける森だけあって、品質は悪いが初期錬金に必要なものがそりゃあ色々採れるんだ。
ああ、腕がなるなぁ!
「で? 何すりゃいいんだ?」
「ああ、食料や錬金の素材になりそうな物を採取していくんだよ。そうだな、例えば」
キョロキョロと辺りを見回せば、画面で見たことがある感じの薬草やキノコ、石ころ、木材、木の実といった様々な素材が目に入る。
それが認識できた途端、新たな感動で胸がいっぱいになった。
やっぱりテレビの画面で見るのとは、断然実物感が違う……! キノコを手に取って360度色んな角度から矯めつ眇めつ眺めまわす。
傘の裏のひだひだは意外と繊細だし、じくの部分はちょっとふんわりしてて食べても美味しそうだ。そっか、だってこれ食材にもなるんだもんな。傘の部分はまあるくてぱっと見シイタケみたいなイメージで、和食にも洋食にも使える優秀な食材だ。
薬草も木の実も石ころでさえ、一つ一つが絶大な存在感を持って存在していることに感動しながら、俺は大切に素材を採取していく。
見本として必要なものを一通り採取したら譲に丁寧に特徴を説明しながら渡し、同じ物を探すように指示。微妙に分からなそうな顔をしていて不安だが、これはもう慣れていくしかないもんな。
「頑張れ!」と背中をおして送り出したら、俺も本気で採取モードだ。
よっしゃあ、頑張るぞ!!!
……楽しい。
採取作業、超楽しい!
思わず夢中になってしまったのがいけなかったのか。
「うわぁぁ、ぁ、ぁ、ぁ…」
悲鳴!?
「譲!!?どこだ、譲!」
夢中になり過ぎていつの間にかはぐれていた。
「り、りく……!なんか、変なの、いる……っ」
声の方に走ったら、譲はデカい樹にへばりついていた。譲の前には3体の青いドロドロしたヤツら。
……なんだ、スライムかよ。
「なんだよ、びっくりさせんなよ。ザコ敵じゃねーか」
スライムごときを怖がって大樹にしがみついている姿は可憐な乙女っぽくて可愛いが、そこはそれ、中身は譲だからな。
普段ガラの悪そうな不良の皆さんや明らかにチンピラな皆さんと日常的に拳で語り合ってる癖に、何を可愛い子ぶってんだとも言いたくなる。
「スライム君とも拳で語り合ったら?」
まぁ、打撃は効かないけどな。
軽く冗談で返した俺に、譲は泣きながら「ばかぁ!」と震え声で抗議する。
「む、無理……! グニャグニャしたのとか、ドロドロしたのとか、プルプルしたのとか、ホント無理!」