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ラプンツェルと5人の王子 【漫画】

 グリム童話ほど世界中で受容され、様々な媒体で翻案されているお話もないのではないでしょうか。

 これもそんな一冊。

 グリム童話のお話を元に、作者の箱知子さんが描かれた創作メルヒェン集です。

 正式なタイトルは『ラプンツェルと5人の王子 恋するグリム童話』。

 背景から小物から、細部まで丁寧に描かれた絵本のような漫画で、恋すると副題された通り、すべてが恋のお話です。

 タイトルだけ見ると、かぐや姫ばりに、五人の王子様がラプンツェルに求愛をしているようにも見えますが、王子の五人に対してお姫様もちゃんと五人いますよ。

 そのうちラプンツェルのみ原作通り庶民の娘なのがちょっと面白いです。


 かなりのアレンジが施されているので、グリム童話の漫画版ではなく、グリム童話に触発されて描かれた作者のオリジナルというのが正しいでしょう。

 グリム童話が大好きだ! っていう人も、グリム童話にはもう飽きたという人も、どちらも楽しめるはずです。


 収録されたお話は全部で七本の短編と幕間が四幕。


「カエルの王様」「いばら姫」「白雪姫」

「千匹皮」「星の銀貨」「ラプンツェル」

「黒の魔女の物語」および「interval」。


 目次のところで吟遊詩人が子供たちを集めて語り聞かせているカットが描かれているのですが、それぞれのお話は、彼が語った物語という体裁をとっています。

 いわゆる枠物語の形式ですね。

 そういえば、ラプンツェルや白雪姫など後のグリム童話に収録された物語の原形と考えられるお話が多数収録された説話集「ペンタメローネ(五日物語)」も枠物語でした。


 このうち、星の銀貨とラプンツェルは続き物で、一つのお話の前後編になっています。

 黒の魔女は作者のオリジナルで、作中での魔女の役を一人で引き受けています。

 わざわざ一章をもうけて、最後に持ってきていることから、想像がつくかと思いますが、彼女がこの漫画の裏の(真の?)主役です。

 ちなみに、カバーを外して、裏表紙を見ると、あっと驚くことが一つあります。すべてを読み終えてから、めくってみてください。



 さて、すべての話を紹介するのもかえって無粋でしょうから、二つほど。


「カエルの王様」

 この話の冒頭に入るナレーション「むかしむかしのおお昔、王さまもお姫さまも魔法使いもいたころのこと…」がこのシリーズのすべてを言い切っていると言えるでしょう。

 王子様とお姫様、そして魔女の物語です。

 王様の末のお姫さまは、かつてとある舞踏会で王子様から助けられ、以来、その王子様をお慕いしていました。

 けれど、結婚の話が持ち上がり、近頃は憂鬱に過ごしていました。そんなある日、お姫さまは池で蛙と出会いました(言うまでもなくその蛙こそ王子様なわけです)。

 あとはまあ概ね原作通りですね。

 グリム童話の一番最初のお話「蛙の王様 あるいは鉄のハインリッヒ」(一般にはかえるの王子様や金の鞠として知られる)例の「お姫様の口づけで蛙に変えられていた王子様が元の姿を取り戻す」あれです、その前半部分を元にしているようです。

 もっとも、原作だと蛙は壁にぶつけられるんですけどね。

 そしてこの漫画版でもそれを踏襲しています。

 そういう意味でも、このお話は六本のうちで一番原典に忠実だと思います。


 さて、この蛙、言動がなかなかストーカーくさいです。

 ですが、なんとなく、分かっててやっているような気もします。

 ヒロインも言っているのですが、実に「いい性格」をしていて好きです。



「白雪姫」

 この作品の白雪姫は大変に行動的です。

 意に染まぬ結婚を強いられそうになっていると知るや、「私の王子様を迎えに行って参ります」の書置き一枚残して、一人馬を駆って出奔します。

 そして実はその結婚というのも、かねがね心に決めた王子が居て、彼から求婚されることを待っていたのですが、なかなか先方から話が来ず、それを不安に思った母親が「そろそろ結婚しなさい」とプレッシャーをかけてきたという話だったりします。

 一方の肝心のヘタレ(王子)はというと、魔女の呪いで子供の姿に変えられて、不貞腐れて森の中の小屋にひきこもっていました。

 そして、そこに、一夜の宿を求めた白雪姫がやってくるのです。

 この話に関しては、姫がヒーローで王子がヒロインだと思います。




箱知子

『ラプンツェルと5人の王子 恋するグリム童話』

 新書館、2011年11月10日。


 なお、姉妹編に『雪の女王と5つのかけら 夢みるアンデルセン童話』があります。

 また、単行本には収録されていませんが、「ラプンツェル」の数年後を描いた「おかしの家」という掌編が一つあるようです(「小説Wings 2012年 03月号」掲載)。

 自分は未読ですが、機会があれば読みたいと考えています。

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