9.マテリアライズ
「っせい!」
──ガッ、ドゴンッ!
キューブの至近距離にまで一気にたどり着き、ユウヤは〝天昇地墜〟を放つ。
蹴り上げからの踵落としを受け、キューブの身体が僅かに床に沈んだ。
さらにユウヤは続けて攻撃しようとするが、キューブが高速で回転をしたことによって、上空に弾き飛ばされる。
直後、キューブの回転が止まり無数の魔力球が出現した。
「させぬ!」
──ドドドドンッ!
ユウヤに向かって飛ぶ魔力球をクロセルがハート型の魔力弾で撃ち落としていく。
それでも全てを撃ち落とすまでには至らず、数発がユウヤの身体を掠めたが問題はない。
──カチカチカチカチ
不意の物音に全員の視線がキューブへと集まった。
見るとキューブが身体のマスを動かして、本物のルービックキューブの様に1面の色を揃えようとしている。
──カチカチカチ、カチンッ!
小気味良い音とともにユウヤたちに向いている面の色が赤1色に染まる
【焔凰の羽刃切】
直後、ユウヤたちの視界に文字が現れた。
それと同時にキューブの前に巨大な鳥の翼が顕現する。
それも、ただの翼ではない。
焔によって形創られた焔翼だ。
「……ッ! クロセル、横にずれろ!」
「分かったのじゃ!」
一瞬、現れた翼に驚くも、ユウヤはすぐにクロセルに指示を出す。
──ドドドォォオオオンッ!
2人が移動したのと同時に先ほどまで2人がいた地点が爆発した。
見れば、焔で創られた羽根が無数に床に突き刺さっており、キューブの前の焔翼が羽ばたいたような位置にある。
どうやら焔翼を振るって羽根の1枚1枚を飛ばして攻撃したらしい。
2人が避けることができたのは、ユウヤが攻撃が直線的だと分かったからであり。
もしも反応が遅れていれば爆発の嵐に包まれていただろう。
──カチカチカチカチ
さらに再びキューブは身体のマスを回転させて色を揃えていく。
先ほど揃っていた赤はすでにバラバラになっており、何色が揃うのか予想がつかない。
「左右からやるぞ!」
「うむ!」
ユウヤの言葉にクロセルは頷き2手に分かれる。
──カチカチカチ、カチンッ!
2人の攻撃がキューブに当たる直前。
再びキューブの面の色が1色に染まる。
揃った色は、緑だ。
【旋虎の風壁爪】
直後、先ほどと同じようにユウヤたちの視界に文字が現れた。
そして、キューブの両側に巨大な獣の爪が顕現する。
そしてこの爪も翼と同じようにただの爪ではない。
風によって形創られた風爪だ。
──ヒュッ、ギュォォオオオンッ!
瞬間、爪が動くのと同時に突風が巻き起こる。
それも一方向に直線で吹く風ではない。
キューブを中心とした巨大な竜巻だ。
当然ながら近づいていたユウヤとクロセルは突風に吹き飛ばされる。
「防御も自在か……。クロセル、あれを抜ける自信は?」
「無いのう。あのような〝魔法〟を使うとは」
「対応属性の雷を使えれば抜けられるとは思うが……」
「拙は扱えぬよ。拙ができるのは誘惑と魔力弾、肉弾戦のみじゃ」
「そうか。……なら、俺がやる」
──パチンッ
そう言ってユウヤは指を鳴らす。
するとユウヤの近くに雷の槍が出現した。
これはユウヤが装備しているフォースリングの〝付与能力〟のお陰だ。
ここで対応属性について説明をしよう。
対応属性とはこの世界に存在する焔、氷、風、雷、光、闇の6属性のそれぞれ有利、不利な属性のことを指す。
焔は雷に対して、氷は焔に対して、風は氷に対して、雷は風に対して有利であり、高いダメージを与えられる。
逆に焔は氷に、氷は風に、風は雷に、雷は焔に不利となり、あまりダメージは与えられない。
よって雷槍は風壁に対して高いダメージを与えられるのだ。
ちなみに光と闇は焔、氷、風、雷に対して有利であると同時に不利でもあり、受けるダメージも与えられるダメージも高くはない。
しかし、光と闇は互いに対応属性なので必然的にダメージは高くなる。
これが対応属性の大まかな説明だ。
ただし、いくら対応属性と言っても〝エレキ〟1発程度の威力では風壁を抜けるまでには到底足りない。
──パチンパチンパチンッ
さらにユウヤは指を鳴らし、雷槍を作り出す。
「そちの職業は〝格闘士〟であろう。どうするのじゃ?」
「こうするさ」
そう言ってユウヤは雷槍に触れた。
すると他の雷槍がユウヤの触れている雷槍に集束していく。
「なにを……ッ?!」
「マテリアライズ!」
クロセルが尋ねようとした瞬間、ユウヤの触れている雷槍が凄まじい光を放った。
あまりの眩しさに部屋にいる全員が目を瞑る。
やがて光が徐々に収まっていく。
「『雷天・リュナスティール』……」
全員が目にしたのは身の丈を越えそうなほどに巨大な槍。
それが存在しているのは先ほどまでユウヤが雷槍を握っていた手の中。
さらに槍はバチバチと周囲に雷を放っている。
「また、使えるようになるとはな……」
手に持つ槍を見ながらユウヤは懐かしそうに呟き、槍を構えた。
そしてキューブに向かって素早く駆け出す。
「『ライトニング・スターダスト』!」
瞬間、ユウヤの身体に槍が放っていた雷が纏われた。
その姿はまさに雷の流星。
そして、風壁と雷の流星がぶつかる。
──ギィィイイイッッ!
凄まじい音をあげながら槍の切っ先が風壁にゆっくりと突き刺さっていく。
槍の刃先が半分ほどまで埋まったとき、ユウヤは素早く斬り上げた。
その1撃により風壁は完全に斬り裂かれ、同時に風爪が片方だけ破壊される。
さらにユウヤは槍の動きを止めずにそのまま横薙ぎの1撃を放つ。
──ズザンッ!
風壁と風爪が破壊された無防備なキューブ。
ユウヤの1撃を防げるはずもなく、その身に真一文字の傷跡を残すことになった。
さらにユウヤは続けて攻撃をしようとするが、キューブの作り出した魔力球の攻撃により距離を取ることになる。
「ちっ……」
舌打ちをしながらユウヤは魔力球をかわし、弾き、斬り裂いていく。
クロセルもハート型の魔力弾で魔力球を撃ち落とす。
──カチカチカチカチ
3度目。
キューブが再びその身体のマスを動かしていた。
そこでユウヤは急いでキューブの元に駆け寄り、槍を突き刺す。
その1撃にキューブは動きがわずかに鈍る。
しかし、完全に止まったわけではないので。
──カチカチカチ、カチンッ!
再びキューブの1面が揃った。
揃った色は、青。
【凍竜の穿尾槍】
そして、ユウヤたちの視界に文字が現れる。
同時にキューブの前に巨大な竜の尾が顕現した。
この尾も先ほどまでと同じで普通の尾ではない。
氷によって形創られた氷尾だ。
──ギュガガガガガッ!
氷尾が素早く動き、床にいくつも穴を開ける。
どうやら槍のように動作するようだ。
「クロセル、俺があの尾を防ぐ。その隙に攻撃してくれ」
「分かったのじゃ。無理はせぬようにの」
「ああ」
──パチンッ
クロセルの言葉に頷きながらユウヤは指を鳴らす。
現れたのは雷槍ではなく火球。
──パチンパチンパチンッ
さらに続けてユウヤは指を鳴らし、火球を作り出す。
いつの間にか握られていた槍は消えており、ユウヤは火球に触れる。
そして他の火球がユウヤの触れている火球に集束していく。
「マテリアライズ!」
ユウヤが言うのと同時に火球が光を放った。
それは先ほどの雷槍と同じくらいの光を放つ。
「『焔煌・ヴォルフレイム』……」
現れたのは巨大な大剣。
この大剣も先ほどの槍と同じで普通の大剣ではないことが伺える。
大剣は周囲に火花を散らしていく。
「推して参る!」
大剣を手にし、ユウヤは駆け出した。
・焔凰の羽刃切
モンスター専用の〝魔法〟。
焔によって形創られた翼を振るって羽根を放つ。
・旋虎の風壁爪
モンスター専用の〝魔法〟。
風によって形創られた獣の爪を振るって竜巻を作り出す。
・雷天・リュナスティール
〝魔装神器〟によって〝エレキ〟が武器になったもの。
雷属性の巨大な槍。
槍の刃身は黒く染まっており、黄色いラインが走っている。
常に周囲に雷を放っており、装備中はある程度雷を操れる。
・ライトニング・スターダスト
〝雷天・リュナティール〟で雷を纏い突撃する。
ユウヤが言っているだけで〝創技〟としては登録されていない。
・凍竜の穿尾槍
モンスター専用の〝魔法〟。
氷によって形創られた竜の尾を凄まじい速さで放つ。
・焔煌・ヴォルフレイム
〝魔装神器〟によって〝フレア〟が武器になったもの。
炎属性の巨大な片刃の大剣。
刀身は白く染まっており、赤いラインが走っている。
常に周囲に火花を放っており、装備中はある程度炎を操れる。




