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Vivid World〜彩られた世界〜  作者: 竜音(ノンイン)
双子の魔導師・ルリ&リル編
13/30

6.サキュバス



──ウィザード・グレイヴ8F



「かなり効率が良くなったな」

「ユウヤ自身も微弱ながら〝魔法スペル〟を使えるようになったからな……」

「それに、私も近接武器を手に入れたし、リルもある程度なら〝魔法〟を連発できるようになったしね♪」



 目の前の最後のモンスターを殴り飛ばしながらユウヤは呟く。

 殴り飛ばされたモンスターが光の粒子となって消えていくのを確認しながら、3人は歩き始める。

 事実、この階まで進むのに3人はあまり疲労していない。

 これは3人が4Fで手に入れたエリアクリア報酬のお陰だ。



「と言うか、ユウヤは本当に〝格闘士〟なのか……?」

「だよねぇ。いくら〝魔法〟が使えるようになったからって使いこなし過ぎな気がするよ」

「使いたい属性をただ念じているだけだが」



 次の階への階段を探しながらリルはジトリとユウヤを見る。

 ここまでユウヤはモンスターに合わせて的確に弱点属性を撃ち出しているのだ。

 その威力はルリとリルよりも低いが、モンスターの弱点属性を的確に攻撃するので特に問題はない。



「モンスターの弱点を知ってるからな。と、階段だ」

「情報は最大の武器、か」



 次の階への階段を発見しユウヤは指差す。

 手を顎にあてながらリルは呟き、納得したように頷く。

 そして、3人は階段を降りて次の階へと進んでいった。



   ‡   †   ‡



──ウィザード・グレイヴ9F



「ようやくここまで来たか」

「この階を抜けたら最後だったよね?」

「けっこう楽だったな……」



 降りてきた階段に腰掛けユウヤは手首と足首をコキコキと動かす。

 ルリはユウヤの方を見ながら確認をとり、リルは軽く伸びをしている。



「あ、この階に出るモンスターは1種類だけだぞ」

「1種類だけ……?」

「どう言うこと?」

「この階では冒険者の男女の人数でモンスターが変化するんだ。男が多ければ『サキュバス』、女が多ければ『インキュバス』ってな」

「〝魔法の妖精姫(ウィズィターニア)〟以外とも入ったの?」

「いや、ここに入るのはアイツと組む以外に入る気はなかったからな。どうして分かったかは答えられないが……」



 伸びをしているリルに苦笑しながらユウヤは思い出したように2人に言う。

 サキュバスとインキュバス。

 どちらも人型のモンスターで、様々な外見をしているのだ。

 また、どちらも会話が可能なため、相棒にしている冒険者もいる。



「となると、出てくるのはサキュバス?」

「は? 俺とルリとリルだからインキュバスだろう?」

「「え?」」

「え?」



 首をかしげながら言うルリにユウヤが答えると2人は驚いたように聞き返す。

 そんな2人を見てユウヤも聞き返す。

 どうやら3人の間でなにやら認識に違いがあるようだ。



「……まさか、ルリを女子だと思っていたのか?」

「……違うのか?」

「ふふふ、私は可愛いものが大好きな男の子だよ?」



 リルの問いにユウヤは、まさかと言った表情で聞き返した。

 そんなユウヤの姿にルリは面白そうに答える。

 ルリの場合、男の子ではなく男のと言った方が正しいのだろう。

 驚きの事実にユウヤはポカンと口を開けてルリを見る。



「まさか、リルもか?」

「失礼な。僕は女の子だ」

「リルはれっきとした私の妹だよ♪」

「……違う。僕が姉だ」

「違うよ。私がお兄ちゃんだよ」

「姉だ」

「お兄ちゃんだよ」

「姉」

「お兄ちゃん」

「姉!」

「お兄ちゃん!」

「「ぬぐぐぐ……」」



 ユウヤの問いにリルは少し怒った表情で答える。

 まぁ、女の子に対して失礼な発言をしたのだから当然だが。

 ルリの言葉をリルが否定すると、2人はひたいを突き合わせて言い合いを始めてしまった。

 そんな2人の様子にユウヤは困ったようにほほを掻く。



「「ユウヤ!」」

「お、おう?!」



 いきなり2人に名前を呼ばれ、ユウヤは驚きながら返事をする。

 2人の様子があまりに鬼気迫っていたのでユウヤの表情はややひきつっているが。

 そんなことも気にせずに、2人は素早くユウヤに詰め寄っていく。



「僕が姉だよな!」

「私がお兄ちゃんだよね!」

「え゛……あ、え〜……っと……」

「「どっち!」」



 2人に詰め寄られユウヤはしどろもどろになる。

 そんなユウヤに2人はさらに詰め寄っていく。

 ルリはややたれ目で可愛らしさの、リルはやや鋭い目で凛々しさの伺える顔立ちをしているので、そちらの意味でもユウヤは困っているのだ。



「さ、先を急ぐぞ!」

「「あ!」」



 ついにユウヤは耐えきれなくなり、立ち上がって歩き始める。

 その後を2人は不服そうに追いかけていく。

 しかし、2人の言い合いから分かるようにルリとリルは双子。

 つまりどちらが兄か姉かなどと簡単には決められないのだ。

 仮に決めたとしても、その後で片方がジッと見続けてくることが予想できるので、ユウヤの行動はあながち間違いではない。



「姉!」

「お兄ちゃん!」

「姉ったら姉!」

「お兄ちゃんったらお兄ちゃん!」

「喧嘩すんなよ……」



 後ろで喧嘩をしながら歩いてくる2人にユウヤはため息を吐く。

 そんな3人の前に人影が1つ現れた。



「あらあら、男の子が2人も♪ 運が良いわ」

「さっそく出たか」



 現れたのはピンク色で腰までの長さの髪の女性、サキュバスだった。

 サキュバスの服装は皆一様に水着のような服装であり、ルリとリルは少し顔を赤らめる。



「それじゃ、いただきましょうか!」

「させねえよ」

「え、きゃ?!」



 妖艶に舌舐めずりをしてサキュバスが飛びかかってくるのに合わせてユウヤは回し蹴りを放つ。

 回し蹴りを受けてサキュバスは驚愕の表情と共に後方へと吹き飛ばされた。



「な、なんで『誘惑』が効いてないのよ……」

「〝格闘士〟の〝技能スキル〟にこんなのがあるんだよ。『明鏡止水めいきょうしすい』って〝技能〟がな。リル、ルリから杖を預かっておけ。この階では戦えねぇから」

「分かった。ルリ」

「は〜い……」



 ユウヤの言葉にリルは頷き、ルリから杖を預かる。

 ルリは渋々ながらも杖を渡し、頬を膨らませる。



「とりあえず、まずは1人目!」

「く、きゃぁぁあああ!」



 気がつけばいつの間にやらユウヤがサキュバスに止めを差していた。

 











・サキュバス

モンスターの1匹。

様々な女性の姿、移動スピードは成人女性並み。

弱点は頭と心臓。

攻撃パターンは誘惑とハート型の魔導弾。

会話が可能なため一部の冒険者は相棒にしている。



・インキュバス

様々な男性の姿、移動スピードは成人男性並み。

弱点は頭と心臓。

攻撃パターンは誘惑と肉弾攻撃。

会話が可能なため一部の冒険者は相棒にしている。



誘惑ゆうわく

サキュバスとインキュバスの〝技能〟。

異性を誘惑してパラメータのダウンと傀儡化を行う。

冒険者個人の精神力によっては受けないことがある。



明鏡止水めいきょうしすい

〝格闘士〟の〝技能〟。

混乱などの精神に関係する状態異常にならない。






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