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『証拠保全は完璧です。追放令嬢は有能な親友と氷の公爵と組み法廷ざまぁを始めます〜慰謝料請求?倍返しで合法的に買収しますが〜』  作者: 月神世一


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第一章 氷の公爵と最強の契約結婚

『証拠保全は完璧です。追放令嬢は有能な親友と氷の公爵と組み、法廷ざまぁを始めます〜慰謝料? 商会ごと乗っ取りますが〜』

第1話 婚約破棄と横領の冤罪ですか? ええ、証拠保全は完璧です

「アカネ・ヴィクトリア。貴様のような性悪女との婚約は、本日この場をもって破棄させてもらう! さらには我が商会の資金を横領した罪、万死に値すると思え!」

王都の中心にそびえ立つ、最も豪奢な王立ホテルのメインラウンジ。

大理石の床に響き渡ったその大音声は、優雅なティータイムを楽しんでいた貴族や豪商たちの視線を一斉に集めた。

声の主は、王都最大規模を誇る『グランツ商会』の御曹司であり、私の婚約者――否、今しがた「元」婚約者となったルーファスだ。

金糸のように煌びやかな髪と、見目良い顔立ちを持つ彼は、しかし現在、醜く顔を歪めて私を指差している。

「横領、ですか。私が、グランツ商会の資金を?」

「しらばっくれるな! 貴様が裏帳簿をつけ、私腹を肥やしていた証拠は挙がっているのだ! 恩知らずめ、拾ってやった恩を仇で返しおって!」

彼の言葉に、周囲のギャラリーからヒソヒソと侮蔑の囁きが漏れ始める。

無理もない。私は後ろ盾の弱い貧乏男爵家の令嬢であり、王都最大の商会に「拾われた」身分だと認知されているのだから。

だが、現実は全く逆だ。

私が『概念設計ブループリント』というユニークスキルを駆使し、画期的な魔導具の設計図を次々と生み出したからこそ、斜陽だったグランツ商会は王都最大の規模にまで成長できたのである。

横領どころか、正当な報酬すら支払われていないのが実情だ。

「それに、お前が先日発表したという『魔導浄水器』の新モデル! あれは元々、私が考案したものだ。お前は私のアイデアを盗み、自分の手柄顔をしていただけのパクリ女だ!」

――ドクン、と。

胸の奥で、嫌な音が鳴った。

ルーファスのその傲慢な顔を見た瞬間、私の脳裏に「前世の記憶」がフラッシュバックする。

私はかつて、日本という国で社畜として働いていた。連日徹夜で企画書を書き、身粉にして会社に尽くした。だが、手柄は全て無能な上司に奪われ、責任だけを押し付けられて、過労の末に孤独に死んだのだ。

『お前の代わりなんていくらでもいるんだよ』

『俺のアイデアのおかげで通った企画だろうが』

前世の上司の言葉と、目の前のルーファスの声が重なる。

血の気が引き、指先が微かに震えた。

……また、奪われるの?

必死に努力して、ようやく手に入れた私の「居場所」と「価値」を、またこんな理不尽な形で踏みにじられて、追放されるの?

膝から崩れ落ちそうになった、その時だった。

「――よろしいのですか、ルーファス様。そのような虚偽の申告を、公の場で堂々と声高に叫ばれても」

凛とした、氷のように冷たくも美しい声がラウンジに響いた。

私の半歩後ろに控えていた親友であり、商会の法務・財務顧問を務めるサクヤ・リリーシアだ。

彼女は銀色の髪を優雅に揺らし、完璧な営業スマイルを顔に貼り付けたまま、ルーファスの前に進み出た。

「虚偽だと!? 黙れサクヤ、お前もこの女の共犯だろうが!」

「共犯、とは心外ですね。私は常に『法と契約』に忠実なだけです。ところで、ルーファス様。婚約破棄は合意いたしますが、横領とアイデアの盗用について、我が社長アカネに慰謝料を請求されるおつもりですか?」

「当然だ! この泥棒女め、横領の罪で投獄されたくなければ、今すぐ身一つで出て行け! もちろん、お前が書き溜めていた他の設計図も全て置いていくんだな。慰謝料代わりにもらってやる!」

勝ち誇ったように鼻で笑うルーファス。

自分が絶対的な強者であり、私たちが絶望して泣き喚くのを確信している顔だ。

だが、サクヤは眼鏡の奥の瞳をスッと細め、隠し持っていた『魔石』を高く掲げた。

その魔石は、淡い赤い光を点滅させている。

「……確認いたしました。ルーファス様、あなたは今、『横領の罪で投獄されたくなければ設計図を置いていけ』と脅迫なさいましたね。さらに、アカネのアイデアを『自分のもの』と偽証した上で、不当な利益を得ようとした」

「な、なんだその石は……!」

「『完全記録の魔石』です。先ほどのあなたの暴言、脅迫、そして事実無根の自白。全て一言一句違わず、クリアな音声で記録させていただきました」

サクヤのユニークスキル『絶対契約イージス・コントラクト』の恩恵を受けた魔石は、いかなる魔法による改ざんも受け付けない絶対的な「証拠」となる。

彼女の有能すぎる手回しに、私の心を満たしていたトラウマの暗雲が、一瞬にして晴れていくのを感じた。

そうだ。私はもう、前世の孤独で無力な社畜じゃない。

私の隣には、絶対に私を裏切らない、最強の親友がいるのだから。

私は震えていた手を強く握り込み、顔を上げてルーファスを真っ直ぐに見据えた。

「……サクヤ、今の撮れた?」

「ええ。バッチリよ、社長アカネ

「ご苦労様。――さて、ルーファス様。婚約破棄の件、喜んでお受けいたしますわ。ですが、慰謝料を支払うのはあなたの方です」

「なっ……き、貴様! そんな石ころ一つで俺を脅せると思っているのか!」

「ええ、脅せますとも。この記録が商業ギルドや貴族院に提出されれば、グランツ商会の信用は地に落ちるでしょうね。では、失礼いたします。今後の連絡は全て、法務代理人であるサクヤを通してくださいませ」

顔を真っ赤にして何かを喚き散らす元婚約者を背に、私はドレスの裾を翻し、サクヤと共に悠然とラウンジを後にした。

泣き寝入りなど、絶対にしない。

奪われたものは、法と経済の力で、利子をつけて全て奪い返してやる。

王都の喧騒を抜け、北へと向かう馬車の中。

心地よい揺れを感じながら、私は深く息を吐き出した。

「お疲れ様、アカネ。見事な三下っぷりだったわね、あの男」

「サクヤこそ、完璧なタイミングだったわ。ありがとう、助けられた」

向かいの席に座るサクヤが、クスクスと笑いながら『完全記録の魔石』をトランクにしまう。

「証拠は完璧に保全したわ。横領の冤罪も、アイデア盗用も、これで完全に裏が取れた。……でも、問題はここからよ」

サクヤの言葉に、私も表情を引き締める。

そう、証拠があるからといって、すぐに王都の法廷で勝てるわけではない。

ルーファスの実家であるグランツ商会は、王都の商業ギルドはおろか、国政を担う悪徳宰相とも深く癒着している。正攻法で訴え出たところで、権力によって握り潰されるのは目に見えていた。

「私たちの弱点は明確よ。私には法務と契約の知識があり、あなたには『概念設計』という無から有を生み出すチート頭脳がある。でも……私たちには、物理的な『武力』と、不当な圧力を跳ね除ける『権力』がないわ」

「だから、彼のもとへ向かうのね」

私は馬車の窓から、遥か北方の空を見つめた。

向かう先は、極寒の北の辺境。

そこに君臨するのは、この国で最も強大な武力と魔力を誇り、いかなる権力者にも屈しない絶対的な強者。

冷徹な合理主義者として知られる、『氷の公爵』クラウス・アルヴィン。

「彼を私たちの商会のスポンサー……いえ、最強の『盾』として取り込む。それができれば、王都の腐敗した利権ごと、ルーファスを合法的に叩き潰せるわ」

「ええ。最高のビジネスプランね」

二人の間で不敵な笑みが交わされた、まさにその瞬間だった。

――ヒヒィィィンッ!!

馬が悲鳴を上げ、馬車が急ブレーキをかけて激しく揺れた。

「きゃっ!?」

「アカネ、伏せて!」

サクヤに腕を引かれ、床に身を屈める。

直後、ドンッ!という重い衝撃と共に、馬車の御者台から人が転げ落ちる音が響いた。

窓の外から、野太く下品な男たちの声が聞こえてくる。

「へっ、チョロい仕事だぜ。坊ちゃんからの依頼だ、『女二人は生かして連れ戻せ。ただし、荷物と魔石は全て奪え』だそうだ」

「抵抗するなら、手足を一本ずつ折っても構わねぇってよ!」

暗殺者……いや、ならず者の傭兵団か。

ルーファスめ。証拠を握り潰すために、力業の実力行使に出たらしい。

サクヤの法務能力は書類や契約には絶対の力を発揮するが、無法者の暴力の前では無力だ。私にも戦闘力はない。

万事休す。薄暗い馬車の中で、私とサクヤが息を呑んだ、その時だった。

――ピキィィィィンッ。

異様な音が、森に響いた。

それは、空気が悲鳴を上げて凍りつく音。

真夏であるはずの森の気温が一瞬にして急降下し、窓ガラスに純白の霜が張り付いていく。

「な、なんだ!? いてぇっ! 足が、足が凍りついて……ッ!?」

「ひぃぃっ! ば、化け物……!」

外で喚いていたならず者たちの声が、次々と恐慌の悲鳴に変わり、やがてカチン、カチンという氷の彫像が完成するような音と共に静寂が訪れた。

馬車の扉が、外からゆっくりと開かれる。

そこから差し込む月光を背負って立っていたのは、軍服に身を包んだ、長身の男だった。

夜空のように深い漆黒の髪と、凍てつくような氷青の瞳。

彼の周囲だけ、まるで空間そのものが彼に服従しているかのように、絶対零度の冷気が渦巻いている。

「……我が領地の入り口で、薄汚いネズミが何をしている」

低く、しかし圧倒的な威圧感を伴うその声。

ならず者たちを一瞬にして氷漬けにした、規格外の魔力と武力。

私は震える手でサクヤの腕を掴み、興奮を抑えきれない声で囁いた。

「サクヤ……見て。最高のスポンサー様(物理)のお出ましよ」

「ええ……完璧な防衛力ね。さっそく、投資の交渉プレゼンを始めましょうか」

窮地にあっても怯えることなく、私たちは顔を見合わせ、共犯者のように深く笑った。

法と経済、そして最強の武力が交わる、痛快な反撃の幕開けだった。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

社畜トラウマを抱えた主人公アカネが、絶対に裏切らない親友サクヤと、圧倒的な力を持つ氷の公爵クラウスと共に、悪役たちを「法と経済と武力」で容赦なく叩き潰していく物語です。

「この先、公爵様とどうやって最強の商会を作っていくの?」「元婚約者がどうやって合法的に身ぐるみ剥がされるのか見たい!」「公爵様の不器用な溺愛が楽しみ!」と少しでも思っていただけましたら、

ぜひ画面下部(または上部)の【ブックマークに追加】と、

【☆☆☆☆☆】の評価ポイント(星をタップして応援)を押していただけますと、執筆の最大の励みになります!

皆様のストレスを限界まで吹き飛ばす、爽快なざまぁと甘い溺愛をお届けします。

引き続き、アエギス商会(仮)の3人の活躍をよろしくお願いいたします!

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