「貴方達が作ってくれたもの以上のアクセサリーなんてないわよ!」
「ねぇ、お母様、ちょっとこっちに来てほしいの」
「お忙しくなかったら、私とお姉様と一緒に少し歩きましょう」
ある日のこと、マドロールは娘であるロルナールとミドロールからそんなお誘いを受けた。
子供達のことを大変可愛がっているマドロールは、娘達から声をかけられ断ることなどありえないのである。
「もちろんよ。行きましょう」
マドロールが優しく微笑むと、二人は満面の笑みを浮かべる。
(私の娘達、本当に可愛い。どうしてこんなに素直で愛らしいのかしら。私が一緒に行くとしったら、こんなに嬉しそうだなんてっ!! いつかこの子達も誰かと結婚したりするのよね。どんな相手を連れてきてくれるかとか考えるだけで楽しみ。ああ、でもその時はヴィー様とお話をしないと駄目ね。だってヴィー様は娘たちが結婚相手を連れてた時、動揺なされるかもしれないもの)
マドロールは常々、夫にそのことを言っておこうと決意している。
ヴィツィオは子供達のことをそれはもう可愛がっている。他でもないマドロールとの子供だからこそ、慈しんで育てている。
親になるのが初めてなヴィツィオからしてみれば、子供が結婚相手を連れてきた際にどんな対応をするのかマドロールには想像がつかない。
だからこそマドロールはちゃんと話をつけておきたかった。
「ほら、見て、お母様!! これね、私とミドロールで準備をしたの」
「お母様に似合うと思ったのだけど、ど、どうかしら」
二人はそう言ってマドロールを見る。
マドロールが案内された先に存在していたのは、手作りのアクセサリーだった。
どうやら娘たちが作ったらしい。ロルナールはにっこりと微笑み、ミドロールは少しだけ遠慮しながら口にする。
「とっても可愛いわ。私のために作ってくれたのね。ありがとう」
マドロールがにこにこしながらそう言うと、ロルナールは満面の笑みを浮かべ、ミドロールはほっとした様子を見せる。
「あのね、私とミドロールもお揃いなの」
「三人で一緒に身に着けられると嬉しいなって」
二人がそう口にすると、マドロールは感激した様子で愛らしい二人の娘を抱きしめる。
「もうっ、本当に可愛い!! こんなに可愛い娘が二人もいるなんて私は幸せ者だわ」
マドロールはいつもこうやって子供への愛情を隠さない。ロルナールとミドロールも抱き着かれ慣れているので、特に動じた様子もなかった。寧ろぎゅっと抱きしめ返してくる。
「今度のパーティーの時に三人で同じものを身に付けていきましょうね」
「ええ。そうしましょう!」
「あ、でもお母様……パーティーでは流石にちゃんとした物を身に着けた方がいいのではないかしら?」
母親の言葉に素直に頷くロルナールと、少し心配そうなミドロール。
ミドロールはロルナールに比べて少しだけ心配性な部分があった。皇女が作ったアクセサリーという付加価値はかなり高い。帝国の皇族というのはそれだけ特別な存在なのだから。彼女達が黒と言えば白いものでさえも、黒となる。そういうものである。
ただしミドロールは材料はそれなりに高価なものであるが、有名なデザイナーの作ったものでもないので身に着けてパーティーに出るのはどうなんだろう? と思っているようである。
「貴方達が作ってくれたもの以上のアクセサリーなんてないわよ! 私にとっては一番のものだわ。寧ろパーティーでは自慢することになるわね。娘たちが私のために作ってくれたんだって!! あ、でも私達だけで身に着けるとヴィー様が拗ねてしまうかもしれないからヴィー様達にも作らない?」
マドロールはにこにこしながらそう告げる。
皇族の女性陣だけで同じアクセサリーを身に着けるというのも素晴らしいことだと思っているものの、それだと他でもないマドロールの愛しい夫が拗ねることは間違いなかった。
(ヴィー様って仲間外れにされると悲しそうな様子を見せたりするのよね。本当になんて可愛いのかしら。可愛いヴィー様を見たいという気持ちもあるけれど……、ヴィー様は笑っている方がいいわ。ヴィー様に作るなら、ヴィダディ達にも作らないと……)
マドロールは拗ねているヴィツィオの様子を思い浮かべて、頬を緩ませている。
「確かにそうかも! お父様はお母様と一緒がいいっていうものね」
「お父様ってお母様のことが大好きだもんね。そしたらお兄様達にも作らないと! あ、でもロッツィオとルッツィオはまだ小さいからパーティーに出ないわ」
ロルナールとミドロールはマドロールの言葉を聞いてそう答える。
「そうね。また二人は小さいけれど、作るだけ作っていていいと思うわ。大きくなった時に、自分だけ持ってないってなったら二人とも落ち込むわ。家族全員でお揃いなんてとても素敵だと思うの」
マドロールがそう口にすると、娘たちは頷く。
そしてそれからヴィツィオ達の分のアクセサリーも三人でつくるのであった。妻と娘達からアクセサリーを受け取った皇帝は、それはもう嬉しそうに笑うのだった。




