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捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます! 関連話  作者: 池中織奈


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「お父様はお母様に頼まれごとをされるのが好きだから大丈夫よ」―皇妃、記憶喪失編⑧―

 現在、皇妃であるマドロールの記憶喪失の状況は、周り全てに周知されているわけではない。

 皇妃が記憶喪失状態になっているというのはそれだけ隙になってしまうものなのだから当然である。



 それもあって慎重に周りを固めている。万が一でもマドロールが傷つくことや不安がることのないように、繊細な注意を払っているのである。皇帝の最愛である彼女が傷つくことがあればどうなるか分かったものではない。



 当然のことだが、誰一人として皇帝の機嫌を損ねたいわけではないのである。

 そういうわけで余計な者をマドロールの視界に留めないように徹底していた。




「侍女や使用人達以外の姿はないのね?」

「こんな状態のお母様を人前に出したくないのですって」

「お母様、突然話しかけられたらびっくりしちゃうでしょう?」


 そんな風に言われて、「そうなんだー」という気持ちになったマドロールであった。



(ヴィー様は隣に居なくても、私のことを守ってくださっているのね。なんだか嬉しい。……抱きしめられていなくてもお城の中に居るだけでヴィー様に包まれているような気分になる)



 マドロールはそんなことを考えて胸を熱くさせていた。



「お母様、図書室はお気に入りの場所なのよ」

「お母様は本を読むのがお好きだから」



 図書室に案内される。様々な本が並んでいる大きな図書室に、マドロールは目を輝かせる。

 地球で生きてきた頃から、物語を読むのが好きだったのだ。

 記憶を失う前の彼女が読んだことのある物語も、今のマドロールにとっては初見のものだ。





(小説が多いのは、私が気に入っていたから? 皇妃として過ごしていた過去の私の望みってこうして沢山叶えられているんだろうな。そしてその叶えられた願いの数が……ヴィー様の愛の証でもある。だって、漫画のヴィー様は特別な相手の望み以外は、聞かないタイプだった。合理主義というか、必要じゃないものは用意してくださらない方というか……。ヒロインの子とも仲良くなるまで時間がかかっていたし、というかヒロイン相手でもここまで甘やかしていたっけ?)



 マドロールはそんなことを思考して赤面してしまう。

 ここでの暮らしを知れば知るほど、愛されていることをマドロールは自覚してならない。



「お母様?」

「顔赤い? 風邪ひいたかしら」

「ち、違うわ。なんというか、私、こうして過ごしているとヴィー様に本当に愛されているんだなと自覚して、恥ずかしくなって」




 彼女が素直にそんなことを口にすると、娘たちは驚いた顔をして嬉しそうに笑った。




「もうお母様、何を当たり前のことを言っているの? お父様はね、お母様のことが大好きで仕方がないのよ。お母様のためなら何だって出来るんだから。お母様がね、やりたいって言ったことはお父様はなんでも叶えようとするんだよ。だからご飯とか、出かける場所とかも全部お母様の希望通りなんだから」

「そうよ。お母様は凄くお父様に愛されているの。お父様はお母様のことを何時も離したがらなくて、私達がお母様と話したい時だって独り占めしていたりするんだから」




 そんな風に言われて、益々顔を赤くするマドロール。



 子供達の前だというのに、その有様である。というより地球に居た頃は結婚などしていなかったので推しとの結婚生活は何とも刺激が強すぎた。



「ほら、見て、お母様。ここの本はね、お母様が面白い小説を読みたいって言った結果集められたものなの。お母様がね、本を読むのが好きだからって帝国では出版業が活発なのよ。それにお母様は劇を見るのも好きだから、その事業が栄えているのもお母様のおかげだわ」

「お母様はお父様に物語の台詞を言ってもらうのも好きなの。あとはお父様に普段とは違う服装をしてもらったり、眼鏡をかけてもらったりすると嬉しいみたいでいつもにこにこしているの」

「そ、そんなことを……。国が栄えていることは素晴らしいことだけれども、ヴィー様にそんなことをしてもらっていて大丈夫なのかしら」



 話を聞いていて記憶を失う前の自分はそんなことをしていたのかと、そんな気持ちになっているようだ。



 ……皇妃が望んだからといって、物語の台詞を言ってくれたり、色んな服装を見に纏う皇帝。それだけでも周りからしてみると驚くことだろう。

 少なくとも暴君皇帝とその妻がこのような暮らしをしていることはトップシークレットである。全員が知っているわけではない。




「お父様はお母様に頼まれごとをされるのが好きだから大丈夫よ」

「お母様も一緒になってお揃いの服装しているのよ。制服着たりとか、侍女服着たりとか」

「へ、へぇ、そうなのね」



 笑顔の二人に少し顔が引きつるマドロール。



(な、なるほど。コスプレ? ヴィー様が絶対に着ない服装なども着ていただいているということね。……やばい、涎が垂れてきたわ。そんなヴィー様なんて漫画でも見たことない。見れたとしたらファンアートぐらい? 見たい……。って、過去の私はどんなテンションでヴィー様にそんなことを頼んでいたの? きてください! って記憶喪失の状態でいきなりそんなことを言い出すのも変かも……)



 過去の自分に思いを馳せて、様々なことを思考するマドロール。

 ただし想像しただけで、興奮した様子だった。

 ……マドロールにとってはヴィツィオは推しなので、普段は見られない姿が見られると思うとオタク心が騒ぐようだった。



「お母様?」

「変な顔しているよ?」

「あ、ごめんね? 気にしないで。えっと、他の場所も案内してもらってもいい?」


 マドロールが慌てた様子でそう口にすると、娘たちはそれぞれ反応を示した。




 ロルナールはにこにこして、仕方がないなという笑みを。

 ミドロールは呆れながらも受け入れている様子だった。


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