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捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます! 関連話  作者: 池中織奈


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「私もランジネットとそんな夫婦になれたら嬉しいものだが」―ヴィダディの花嫁探し編⑲―

「わぁ……」




 ランジネットは今、空の上に居た。

 それも皇帝であるヴィダディの愛竜に乗せてもらっている。当然のことながらランジネットは竜に乗るのは初めてだ。

 目を輝かせて、怖がる様子を一つも見せない。



(なんだか故郷の湖で魔物に乗せてもらった時のことを思い出すわ。でも流石竜の上……! こんなに地面がずっと下に見えるなんてっ)





 ランジネットの故郷では湖の魔物に乗せてもらうことはあったが、そのくらいだった。

 だからこそ目を輝かせているランジネット。その竜に乗っているのは、ヴィダディとランジネットだけだ。




「この景色を気に入ってもらえたようで良かったよ。父上もよく母上と一緒に竜に乗っているんだ」

「そうなのですね。そういえば確かにそういった逸話も沢山ありますわね」

「父上と母上はよくお忍びでお出かけに出かけたりもしていたんだ。そういう時は手っ取り早く竜に乗ることも多かった」

「とても素敵ですわね!! 先代の皇帝夫妻は噂通り仲が良いのだなととても羨ましく思いますわ」







 ランジネットは先代皇帝夫妻の溺愛エピソードを思い起こしつつ、楽し気な様子である。大抵の令嬢達はその様子に憧れるものだ。




「父上と母上はよく私達を置いて二人で出かけることも多かった。もちろん、家族で出かけることも沢山あったが」

「そうなのですわね。結婚生活が長くてもそのままというのは素敵です」

「私もランジネットとそんな夫婦になれたら嬉しいものだが」

「……も、もう」




 ランジネットはヴィダディの言葉に顔を赤くした。



 ヴィダディは明確に、ランジネットとの未来について考えてくれている。一緒に過ごしてみて拒絶しても構わないとそうそう言ったにもかかわらず、そういったことを簡単に告げる。

 だからランジネットは何だかんだ……このまま絆されてしまうようなそんな予感もしていた。




(ああ、でも深く考えずに頷いてしまうのは駄目だわ。そんなことをしたら、折角私に対して陛下は誠実であろうとしてくださっているのだもの。私だって……ちゃんと考えないと駄目だもの)




 ランジネットは、とても可愛らしい見た目の少女である。それこそ気が弱そうに見える。守ってあげなければならないような、そんな背の低い令嬢。

 ただしこういう時に流されないのが、彼女である。





「陛下……そう言っていただけるのは嬉しいですけれど、私はそう簡単に陛下に絆されたりはしませんからね。結婚相手は慎重に選ぶのですから」

「分かっているよ。ただ私が言いたかっただけ」


 そんな風に言われて、ランジネットは正直言ってときめいてはいた。




(……陛下は素直な方だわ。自分の思っていることを隠さないというか。これも仲睦まじい両親をお持ちだからかしら。聞いている限り、噂以上に仲がよろしいみたいだし。照れて言いにくいようなことでもさらっといってしまって……。皇帝という立場がなくてもさぞ、女性たちに騒がれるタイプだわ)



 ヴィダディはさらっと女性が喜ぶようなことを言うのだ。それも……ランジネットには勘違いされても問題ないからというのが分かる。

 誰にでもこんな態度をしていたら色恋沙汰でもっと問題になっているはずだから。



(……わ、私にだけこんなことを言っているのはそれはそれで恥ずかしいわ。陛下は私のことを口説きにかかっているのよね……)



 考えれば考えるほど、ランジネットは照れくさい気持ちでいっぱいになっていた。

 花嫁候補として帝国に向かう前はこのような状況など考えたこともなかったのだ。

 ヴィダディと一緒に竜に乗っているだけでも緊張しているランジネット。しかし移動距離が延びれば延びるほど、気を抜いてしまいそうになる。別荘まではもうしばらく距離があった。





「ランジネット、初めての移動疲れるだろう? 眠ってもいいよ」

「流石にそれは……」

「大丈夫だよ。落ちないように私が支えるから」

「えっと……」

「寝ている君に手を出すなんて紳士じゃない真似はしないから安心していいから」

「そ、そんなことは心配してません! 陛下はそのようなことはなさらない方ですもの」



 言われた言葉に顔を赤くして、そう告げるランジネット。その様子を楽しそうに見ているヴィダディ。



「折角竜に乗るなんて機会を頂けたのですもの! 寝てしまうなんてもったいないから起きますわ」

「こういう機会なんて君が望むならいくらでも作るけれど」

「それでもです!」



 ランジネットはヴィダディの言葉にそう答えた。




 そして別荘に着くまでの間、ランジネットは周りをきょろきょろと見渡して起きていたのであった。


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