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捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます! 関連話  作者: 池中織奈


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「いえ、私は彼をずっと傍に置くつもりはあるわ」―頑張る、エルマルア編⑰―

 エルマルアはロルナールがこの場に居る事に驚いた。

 なぜなら、彼はロルナールに母親と元婚約者に会うことを告げていなかったから。それはロルナールに母親と元婚約者のことを関わらせたくないと思っていた。ロルナールに不快な思いをさせるのが嫌で、そういう選択をしたわけだが……ロルナールは今、この場に居る。





(……騎士達が止めていないのを見るに、ロルナール様が自分からこの場に飛び込んできたのだろう)




 幾らエルマルアがロルナールに知られたくないと思っていても、結局のところロルナールが望めばこういう状況になるのは当然のことであった。






「私の家……? ということは、あなた様はもしかして……第一皇女殿下でしょうか」

「まさか、この場に第一皇女殿下が来られるなんてっ! お会いできて光栄ですわ」




 流石にエルマルアの母親や元婚約者たちも、ロルナールの登場には顔色を大きく変化させた。

 ただの帝国の属国の一つでしかない、エルマルアの祖国。そこの一介の貴族である二人からしてみると、ロルナールは雲の上の存在だろう。





「初めまして。あなたたちがエルマルアの母親と元婚約者の方ね?」




 ロルナールは微笑んでいる。



 その赤い瞳が、じっと彼女達のことを見据えている。一見すると友好的に微笑みかけているように見える。しかしエルマルアからしてみると、ロルナールの様子は何処かいつもとは異なっていた。やはりエルマルアの母親や元婚約者に何かしら思う所があるのだろう。

 しかし二人はロルナールに微笑みかけられたからと言って勘違いしてしまったようである。






「第一皇女殿下からもエルマルアを説得してくださいませんか? 皇帝一家は大変、家族仲がよろしいとお聞きしますわ。やはり家族は仲良くすべきだとあなた様もお思いになりますよね? エルマルアは私が謝罪をしているのに許してくださらないのですわ」

「第一皇女殿下はエルマルアと親しくしているとお聞きしておりますわ。エルマルアのような者に優しくされるなんて本当に第一皇女殿下はお優しい方なのですね。しかしもう大丈夫ですわ。私がエルマルアのことを支えますから」




 エルマルアの母親と元婚約者の言い分はなんともまぁ、自分勝手なものである。本人の意思などを無視して、ただただそうあるべきとロルナールに向かって告げる。




 ロルナールがまだ若い少女であるから、言いくるめることが出来るという侮りのようなものもあるのかもしれない。

 帝国の皇帝一家の中でも、ロルナールの噂は心優しいだとか、愛らしいとかそういうものばかりである。





 皇帝は『暴君皇帝』と呼ばれ、怒らせるべきではない存在と言われている。次期皇帝である第一皇子も侮れない存在だと周辺諸国に広まっている。

 しかし第一皇女であるロルナールには、そういった噂はない。だからこそこういう態度をしても許されると――そう、愚かにも思い込んでいる。




 ロルナールはにっこりと笑った。



 その笑みを見て、目を輝かせるエルマルアの母親と元婚約者たち。しかし、その口から放たれるのは彼らが到底望んでいない言葉だった。




「あなたたちとこれから関わっていくかはエルマルア自身が決めることですわ。家族仲が良いのにはこしたことはないですけれど、もう既に断られているのでしょう? なら諦めるといいと思うわ」




 まずはエルマルアの母親に向かって、笑顔のままそう告げる。そして次に元婚約者の方を見る。




「あなたとエルマルアの婚約は既に解消されているのは私も知っているわ。それと……エルマルアのような者にという言い方は私は嫌だわ」



 そう言って、微笑むロルナール。

 だけれども、エルマルアの目からするとロルナールは何処か怒っているようにさえ見えた。




(ロルナール様がお怒りになられている……?)



 ロルナールが怒りを露わにしているのなど、エルマルアは見たことがなかった。常にロルナールは笑みを絶やさず、いつだって穏やかに微笑んでいる。まるで花の妖精か何かのような愛らしい笑みを浮かべている。その目が、何処か冷ややかなのだ。




「まぁ! 第一皇女殿下はもしかして、エルマルアに何か吹き込まれておりますのでしょうか? エルマルアはあなた様もご存じの通りに魅了の魔法にかかってしまうような問題のある方ですわ。気まぐれでエルマルアを傍に置いているのは、第一皇女殿下のためにもなりませんわ。伯爵子息としての道を絶たれてしまったエルマルアを慈悲深い気持ちで帝国に連れてきたのはとても素晴らしいと思いますけれど、流石に、恋仲だと噂されるのはねぇ……。期待させるだけ期待させてしまうのも、エルマルアが可哀想ですわ」





 そんなことを勢いのままに語り始める元婚約者を前に、エルマルアは思わず反論をしようとする。

 だけれども――ほかならぬロルナールに目で制される。まるで、自分が答えるから黙っててほしいとでもいう風な態度だ。




「――エルマルアを支えると言いながら、そのように悪く言うのはやめてくださらないかしら? 彼はとても素敵な方よ。少なくともあなたにそんな風に言われるような方ではないわ」




 ロルナールが怒っているのは、あまりにもエルマルアの母親と元婚約者の言葉が彼を蔑ろにするものだったからと言える。

 ロルナールはあまり人を悪くは言わない。そもそも悪い所を見つけるよりも、良い所を見つける方がずっといいと思っている。それは母親であるマドロールの影響である。

 ロルナールは周りに守られている皇女なので、こういう不愉快になるような人たちが近づくことはあまりない。




「第一皇女殿下、そうはいってもあなた様がエルマルアの面倒を一生見るわけではないでしょう? 私は――」

「いえ、私は彼をずっと傍に置くつもりはあるわ」




 元婚約者が何か言い募ろうとしたときに、ロルナールははっきりとそう言った。

 その言葉に一番驚いたのは、他でもないエルマルアである。


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