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第57話 とっておきの情報

 ミタライが教えた石のコンパスが指し示す方角へと、タイキが操舵輪を両腕で操作し傾ける。九人の乗客を乗せた宝船は順調に宴へと続く海の道のりを消化していくのだった。


 そして宝船が安定した航行を続けている間にも、九人の内のイレギュラーである一人、密航者コットン・シルバーへの厳しい面接が執り行われることとなった。


「ワタァシのギフトはこの通り、超絶無敵のギフトであーる!! ──ってなぁ!? 刺すな!!」


 まずは最も肝心なギフトの詳細について打ち明けてもらうことにした。するとアキトがレイピアで肩口を貫き、嘘がないか再確認をする。


 銀髪の男は大袈裟なリアクションを披露しながらも、とても痛みがあるようには見えない。だが冷や汗は流れる仕様のようだ。刃で貫かれた恐怖までは拭えないのだろう。


「目的はなんだ?」


 超絶無敵の正体である綿のギフトの念入りな確認が済んだところで、次にペコロが男の目的を問う。まだその銀髪の男のことをコックはしつこくも疑っているようだ。


「目的? そんなものはなぁぁい。あぎゃー!?」


「やっぱりコイツここで燃やすか?」


 ペコロがコットンの盛大に広げた両手の手の甲に焼けた鉄串を打ちながら、そう物騒な提案した。


「あはは、そうだな。超絶無敵……そんな不死身のギフトをどう料理して倒すかはジブンも気になるところだね?」


 ギフトの研究と言えばこの男、アキトが興味が示さない訳がない。中でも不死身の綿のギフトなど珍しいもの。今目の前にいる銀髪の男はアキトにとって恰好の研究対象であると言えた。


 デッキの上をのたうち回ったコットンは突き刺さった鉄串を外し、不吉な煙の立った手の甲へと、カップに余った冷めた紅茶を注ぎなんとか事なきを得た。


 濡れて萎んだ左手をぷらぷらと力なく揺らしながら、コットンはようやく正面に向き直った。視界には──微笑する黒髪のレイピア使いと、口元に近づけた一本の鉄串に息を吹き込み火を灯すコック。


 冗談か本気か、ただならぬ圧を見せつける性格の悪い二人の男がいた。


 やはりこの船は天敵だらけ、中でもこの二人の男には引き続き深く注意をする必要がある。焦燥の中で冷静にそう考えたコットン・シルバーは、歯を食いしばる苦しい顔をしながらも、ここで一つとっておきの切り札をきることにした。


「そうだ、オマエらにとーっておきの情報を教えてやる!」


「とっておきだと?」

「とーっておきか?」


 突如コットンが自信気に掲げたとーっておきの情報に、ペコロとアキトはまんまと興味を示したようだ。





「はぁ? お前いったい何を言ってやがる? 正気か? 酔ったか?」

「はぁ、それって……本当なの?」

「とても現実味がありませんね。かと言って、ここがどこでどこに向かっているかと問われれば……僕も困りますが?」


 密航者コットン・シルバー、今彼が吹いたのは大ボラか。彼の口から説かれたとっておきの話の内容は、団員のペコロ、リリス、美楚羅までが鵜呑みにするにはいかないそんな誠に懐疑的な情報だった。


「ワタたたたたた、おうおう好きに疑えばいいさ! だぁがしかしィ……このコットンお兄様のふわぁり詰まったスーパー頭脳を用いれば、すぐに分かったさ。これぐらいのお安いハリボテの仕掛けはな……!」


 コットンは向けられたその疑いの言葉と視線さえ心地よく感じているように、胸をドンと叩きさも堂々と言い放つ。なおも自分がハリボテの仕掛けを見抜いたのだと、確信を持ったように言い張った。


「ふふっ。それは愉快な妄想だね。面白いことを言う、──本当に」


「ええ」


 嘘かハッタリか脚色か。果たしてコットン・シルバーの語ったとっておきの情報とは──。


 笑うアキトと顎に手を当てた支部長のミタライが一瞬、互いの目を合わせ頷いた。


 あの港の新聞から共有した二人に渦巻いていた疑念は、今ここで確証へと変わっていく──。

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