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black red flame

 何が起こったのか、その時はわからなかった。

 

 ただ、目の前に映る真っ赤な景色。

 燃え上がる炎……

 単純に、その炎が〝綺麗〟だとも思えた。

 

 思考は微かに働いて、その目の前にあるのが何なのかを思い出す。

 

 あー。ここは、私の家だ……


 夜に映える炎。

 周囲の喧騒。

 そんなものは関係なしに、私はその場に立ち尽くすしかなかった。

 

 何で、こんな事になったんだろう……?


 今日。私は部活があって、帰りが遅くなった。

 ただ部活があっただけなら、もっと早く帰れたんだけど……

 今日は先輩達を送り出す会があって、部活の後に皆で遊びに行っていた。

 引退した先輩達との別れ(とは言っても、卒業までまだしばらくあるけど)。

 その別れを忍ぶ様に、皆涙を我慢する。

 そして、その皆とも別れて、帰宅。

 そこには、いつもの生活が待っているはずだった。

 お母さん。お父さんがいて、私がいて……


 でも……


 そこには、炎があった……


 何かが燃えている。

 それは、帰り道からわかっていた。

 巻き上がる炎が見えたから。でも、それがまさか自分の家だなんて、思いもしなかった。

 周囲の喧騒。それすらも、私には他人事の様に思えていた。

 なのに……


 我が家の前についた途端、私の意識はフリーズした。


 何で……?


 そして、何かが失われた気がした。


 喪失感が、私の中を支配する。

 お父さん……

 お母さん……


 もしかしたら、二人ともどこかに避難してるかもしれない。

 そう思って、周囲を見回す。

 でも、それらしい姿はない。


 やがて訪れる消防車。

 周囲に響くサイレンの音。

 そして、私の中で〝現実〟として理解されていく目の前の光景。


 怖い……


 いまさらに、そう思った。

 何で、この炎を見て綺麗だなんて思ったんだろう?

 この炎は、私から幸せを奪っているというのに……


 やがて炎は消える。

 やじ馬も減っていく。

 残ったもは、消防署の人と私だけ。

 残ったうちの一人が、私に声をかけてくる。

 何て言ってるんだろう?

 聞こえない。

 何も、聞こえない……


 気がつけば、頬を涙が伝っていた。

 私は、〝私〟以外の全てを失った。

 その時、確かにそう感じていた。


 もし、そこに何かが残ったというのなら……

 

 それは何?


 私にとって、それは必要なモノですか?


 そこに残ったモノ……


 それは、何ですか……?

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