33 公園で見つけた軌跡
カイゼリスはおにぎりが入ったビニール袋を持ちながら、一定の速さで走っていた。
どのくらい走れば辿り着くかは分からないが、ミサキが真っ直ぐ進めと言っていたので、迷わず真っ直ぐ進んでいた。
7分程走ったところで、生い茂る木々が見えてくる。
「あそこがヒカリガオカコウエンか」
少し速度を上げる。
横断歩道の手前で止まり、信号が青になるのを待った。
「とても広い公園のようだな」
右を見ても左を見ても、ずっと公園が続いている。
彼はワクワクした。
公園の中に入ると、道の左右は木々が生い茂っており、暗かった。
けれど雰囲気は良い。
道なりに行けば公園の全容が見え、それはそれで楽しそうだ。
「どうするか……」
どちらに進むか、彼は迷っていた。
しかし、初めて来たのだ。道なりに進んで行く方が良い気がした。
万が一、迷って帰れなくなったら、困るのは自分だ。
「今日は道なりに進み、地形を覚えよう」
彼はそう言うと、道なりに走り出した。
少し真っ直ぐ進むと、開けた場所に出た。
右にはベンチが並び、その先には小屋の様な屋根が見える。
左には小さなトイレ小屋があった。
「どちらへ行くか」
カイゼリスは左へ行くことにした。
左に走っていき、突き当たったら右回りで公園の全体図を想像するつもりだった。
走り出すと、すぐ右側に火を起こす場所が数個見えた。
野営をする場所か?
そのまま進むと、そのうち木で出来た遊具が見えてきた。
まだ朝だからか、子供は一人もいなかった。
子供が遊ぶ場所か。
そのまま真っ直ぐ進むと、遊具がたくさんあり、それが見え無くなったところで、右に曲がる道が出てきた。
突き当たりは公園の出口が見えたのでそこで曲がる。
その道は少し不思議で、四角い板が上の方に取り付けてあり、その真ん中辺りから太い鉄の棒で輪っかが作ってあり、そこには網が掛けてあるものが一定間隔で並んでいるのだ。
これはなんだ?
カイゼリスはそう思いながら通り越した。
そのまま真っ直ぐ進むと、開けた場所に出た。
小さな柵に囲まれているそこの中を、色々な年齢の男女が線に沿ってグルグルと走ったり歩いたりしている。
自分もそこで走るか迷ったが、今日はやめておいた。
あまり面白くなさそうだ。
そのまま道なりに走る。
その時、
ビュンッ……
と聞き慣れた音がして、立ち止まった。
左右を見る。
しかし音はしない。
「なんだ、今の音は?」
カイゼリスは耳を澄ませた。
ビュンッ
また聞こえた。
「これは、矢が飛ぶ音だ……」
彼はもう一度左右を見渡した。
右側は線にそって歩いたり走ったりする男女。
そちらでは無い。
左側の木が生い茂っている所を掻き分ける。
そしてフェンスの向こうを見た。
「弓を射っているではないか!!!」
見た事が無い形をしているが、弓だということはわかった。
「この世界にも弓があるのだな」
カイゼリスは興味津々で、フェンスに沿って歩く。
目線は中で弓を射つ人達に向けられていた。
そのうち、出入口に到着したので、そのまま入って行った。
「どうしました?」
窓口で声を掛けられる。
「見ても良いだろうか?」
「良いですよ。そこの待合室を出た所まででしたら入って貰って大丈夫です」
「わかった」
カイゼリスはガラス張りの待合室を出て、小上がりの広場で見学を始めた。
「弓だな」
彼は呟いた。
レーマンで使用していた弓は、しなる木で作った簡易的なものだった。そこに丈夫なツルを張って狩りをしたものだ。
しかしここに置かれている弓は、金属で出来ており、色とりどりに着色されている。
そして棒の様なものが差してあり、不思議な形をしていた。
「やったことはありますか?」
先程の窓口の男性が話し掛けてきた。
「弓はある。が、この弓を使ったことは無い」
「……アーチェリーは初めてということですね」
この弓はアーチェリーと言うらしい。
「ああ」
「土曜日や日曜日でしたら、初めての方も少し射つことが出来ますよ。有料ですけどね」
「ドヨウビ……」
確か、仕事が休みの人が多い日だったか。
ミサキも休みのはずだ。
あとユウリョウという言葉が何かわからん。
「あ、有料とはお金がかかるということです」
カイゼリスの表情を見て、男性は言い換えた。
「わかった。ありがとう」
カイゼリスは、弓を射っている人達を見学し、待合室へ戻った。
そして、何となくガラスに貼ってある写真を見た。
帽子を被った男女が写っている。
「…………!」
彼は突然、1枚の写真を食い入るように見つめた。
そこには、少し若い姿のミサキが写っていた。




