パパ
「アカリ、おはよう。突然倒れちゃうからびっくりしたよ。あんなところで暮らしていたら病気になってしまう。これからまた、パパと幸せに暮らそう。」
そう言って、優しいパパはご飯を持ってきた。こんなのは罠だ。絶対にまた私を…。
「こんなのいらない!私に近づかないで!」
その瞬間、パパの表情は一気に変わった。優しいパパは一瞬で終わったのだ。
「うっせぇんだよ!!お前はなぁ、俺のいうことだけ聞いていりぁいいんだよ?!いい加減気づけよ!なぁ!?」
私の髪を掴み、壁に頭をぶつけた。頬を殴られ、意識が朦朧としていた。
「なぁ、アカリ。お前は母さんみたいにいなくなっちゃいけねぇんだよ。」
少しの笑みを浮かべながら私の下着の中に手を入れてきた。
まただ…。私はもう、この人から逃げられない。逃げたくても捕まってしまう。どこにいても、どこまでも追いかけてくる。涙を浮かべても、痛いと叫んでも、パパは止めてはくれない。一層のこと、あの山で死んでしまえばよかった。
パパに見つかり、再び一緒に暮らし始めてから二ヶ月が過ぎた。あの日以来、パパの言うことを最大限守り、最小限の自分で居ることに徹底した。パパの言うことにはいつ何時も従った。おかげで、手を出させる回数はかなり少なくなっていた。
三月が後半に差し掛かったある日、「今日は夜が遅くなるから、留守番よろしくね」そう言われた。久しぶりに長い時間の外出だった。夕方までに帰ってくれば、パパにはバレないと思い、私も久しぶりに出かけることにした。
身支度を整え、パパに殴られた痣を隠し、普通の女の子を演出した。
「よし、これで誰にも怪しまれない。」
扉を開けた瞬間、眩しい光が私を照らした。太陽があまりにも眩し過ぎて、外の世界がまるで異国の地のように感じた。私が知っていた冬は終わり、春という季節に差し掛かっていた。
「暑い…」
しかし、せっかくここまで準備をした。パパもいない。
「よし!楽しむぞ!」
そう声に出して、歩き出した。その時、パパが帰ってきた。
「え?パパ?」
家族だけが全てでは無いんです。
所詮、”生まれた場所”に過ぎない。