生きるって
「どこ行くんだ。家に居ろと言っただろ!?」
「あ、いや、夕飯の買い物に行こうと思って…。」
「こんなおしゃれな格好をしてか?本当はどこに行くんだ?逃げるんじゃないだろうな。なぁ、俺を見捨てないで くれよなぁ!?」
終わった。もう無理だ私。この人の鎖にずっとかけられ続けるしかないんだ。
私の鎖を解いてくれる誰か…。鍵を持っている誰か。助けて。
パパは私の胸ぐらを掴み、ベットに放り投げた。殴られ、カッターで傷つけられ、服も下着も脱がされた。あまりにも乱暴な交わし合いに激痛が走った。痛くて、苦しくて。体の痛みよりも、心がものすごく痛かった。心の激痛が私を私じゃなくしていた。
「やめてって言ってんじゃん!」
パパを思い切り投げ飛ばした。はぁ、はぁ。
「ねぇ、パパ。私にしてることとと同じことしてあげる。ねぇ、ごめんね。私はママじゃないの。ねぇ、パパごめ んね。今までありがとう。」
そう言って多いきりお腹にハサミを刺した。下腹部は臓器が集結しているから死ぬ確率が高いということを何かのドラマで知った。こんなところで役立つなんて。
床には沢山の血が流れてきた。私の足元にまで。その瞬間、ふと我に返った。
「わ、わたし…。何して…。ねぇ、パパ?返事して?!いつもみたいに殴ってよ!!」
何度叩いても、蹴っても反応はなかった。
「ねぇ、パパったら!起きて!私を殴って!!お願いだから!!!!」
訳がわからなくなった。自分がしたことなのに自分が一番わからない。なんでこうなってしまったのか。今はただひたすらにパパを生き返らせる事しか考えられなかった。
気がついた時には太陽が沈み、再び昇ろうとしていた。
「あれ、私…。」
気がついたら裸のまま、眠りについていた。部屋は異臭が漂い、流れた血は床に張り付いていた。
三月の後半とはいえ、朝晩は冷え込む。おかげで血が固まるのも早いわけだ。体がだいぶ冷えてしまったので、床に落ちている服を羽織った。昨日の出来事で、少しボロボロになってしまった。
「あれ…?」
そう、服を拾うために床を見た。パパが居なくなっている。
「なんで。なんで居ないの…。」
不思議と恐怖と安心と。喜怒哀楽が一度に湧いてきた。私は怖くなって走り出した。とにかく思い切り走った。靴なんて履く余裕もなく、玄関を飛び出した。
我武者羅に走って、無意識に辿り着いた先は、私の特別な場所だった。ママとの思い出のこの橋。
心も体も疲れ切り、立てなくなった。色んな感情が混ざり込んで私はもう私がわからなくなっていた。
「ねぇ、ママ。私どうしたらいいんだろう。ママのところに行ってもいいかな。」
どれ泣いても、叫んでも誰も来ない。独りをただひしひしと感じるだけだった。こんなに頑張っても報われない。ボロボロで孤独で、もはや愛おしいくらいに自分が憎い。人が醜い。
人が生きると書いて「人生」。
生きている心地がなければそれは人生と呼ばないと思います。
どんな些細なことでも日々「生きている」実感がないことには人生は始まらない。
早く、アカリの人生が始まって欲しいものです。




