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爺さんと俺の異常性

ダメだし訂正点、感想を頂けたらうれしいです。

 

 

 「それにしても、よくあんなことが言えたわね~~。並みの神経じゃないわよ」

 「自分でもちょっとびっくりですよ」

 

 ケインさんが俺に詰め寄る。

 いや、元々はアンタが無茶振りしなければ、こんなことにはならなかったと思うんだが。まぁ過ぎたことを言っても仕方ないか。


 「ふぁぁ……」


 現在11時。

 起きた時間が昼なのでここまで起きていられたが、所詮はガキの体だ。少し眠気がくる。

 店の騒音のせいでまだ起きていられるが。


 客の一人が俺に向かって手招きをしてくる。

 見たところ中年のようだ。

 

 「おい坊主。こっち来て酒でも飲め」

 「いや俺、未成年ですし」

 「未成年でも酒を飲んじゃいけないって法律は無いだろ」


 なるほど、この世界では未成年でも酒は飲んでいいのか。

 だったら断る理由は無い。人間関係は築ける時に築いた方が良い。



 「お、中々いけるじゃねぇか坊主」

 「はい、ありがとうございます」

 「まあ、ヒッグ…ここは悪い所じゃねぇ。いずれ慣れるさ」


 そう言いながら客の一人が杯に酒を注ぐ。

 周りを見渡して見るともう料理を食っている人はほとんどいない。厨房からも音が聞こえてこない。


 「そういえば、ここって何時閉まるんですか?」

 「そんなことか。ここは12時には閉まるよ」


 なるほど。あと1時間か。

 もっと夜遅くまでやっているのかと思った。

 あと少しの辛抱だ。ガンバ俺!



 「さて俺もそろそろ帰るか。今日は色々と楽しめたぜ坊主」

 「えっと…ご来店ありがとうございました」

 「あいよ」


 手を振りながら客である男は店を後にした。

 そういや名前聞くの忘れちゃったな。今度聞いておこう。




 ――30分後、俺は酒を飲んだのは失敗だったと気づいた。

 

 滅茶苦茶眠い。

 酒が回って頭もボーとしてくる。閉店まで持ちそうに無い。

 客も少なくなってきてるし近場のイスに座る。

 

 なんとなく周りを見渡す。

 カウンターの方で親父が俺に向かって手招きをしている。

 親父の目の前には60は過ぎているだろうと思われる老人が座っていた。 顔だけ見ればヨボヨボの爺さんだ。



 「お前の自己紹介見たぞ。なかなか肝が据わっているじゃねぇか」

 「ああ…今思うと、どうかしてたとしか思えん」

 「まあ、そうへこむな。一応成功したんだから。それでトモ、お前を呼んだのは他でもない、ガルハールがお前と話したいと言うから来てもらった」

 「どうもガルハールじゃ。トモといったか? お主は、この世界に召喚されたらしいな」

 「親父まさか話したのか!?」

 「…ああ。すまん、つい口を滑らしちまった」


 おいおい口軽いな。大丈夫かこの人は?

 ん? もしガルハールさんが俺を召喚した奴らと繋がっていたら? やべぇ…捕まる。


 「あ~でも問題は無い。この人は絶対他言しないから」

 「親父が言っても説得力がな~」

 「おいおい、どういう意味だこら」

 「そのまんまだろ」


 まぁ、親父は人を見る目はあるからな。俺も認めてくれたし。

 ガルハールさんも信用できるかもしれない。

 親父が認めたんだから信じてあげてもいいか。どっちにしろ親父が口を滑らした時点でもう終わってるしな。


 俺は諦めた表情でガルハールさんを見つめる。

 悪い人ではなさそうだが油断してはいけない。

 

 「ステータスでも見るんですか?」

 「ああステータスを見せてくれんか」


 俺はステータス画面を開く。


 タカハシ・モトキ 男 9歳

 メイン:変動者

 サブ:無し

 固定能力:勇者もどき 


 最初の頃と全然変わっていないな。

 隣を見るとガルハールさんが目を子供の様に輝かせている。そんなに凄いか。


 「カプセル無しでステータスが見れるのか。話に聞いておった通りじゃ」

 「メインは変動者か。ガルハールも確かこれじゃなかったか?」

 「ああ。じゃがワシ以外で初めて見たわい」

 「俺を召喚した奴がこんなジョブは聞いたことが無いとか言ってたけど」

 「それはワシ、報告しとらんもん」


 なるほど、それで知らなかったんだな。

 それにしても、そんなに珍しいジョブなのかこれ。なんか得した気分だ。


 「どれスキル欄も見せてくれんかの」

 「はい」


 俺はスキル欄を開く。そして俺のスキル欄を見たときガルハールさんの顔が変わった。


 「これは異常じゃ……!」

 「なんでですか?」

 「初期の技から攻撃力が10倍なんていうのは普通ならありえん」

 「え?そうなんですか?」

 「まあ、これを見なさい」


 ガルハールさんは小さいカプセルを取り出して先端をポチっと押す。そうするとステータス画面が出てくる。

 カプセルってそんな形してんのか。


 ガルハール・シェイサー 男 67歳

 メイン:変動者

 サブ:拳士

 固定能力:鋼鉄の拳・歴戦の勘


 「見て欲しいのはこれじゃよ」


 ガルハールさんはスキルと書かれたボタンをタッチする。するとたくさんのスキルがズラーと並んでいた。

 ガルハールさんは一番前のスキルをタップする。

 



 

 「え……!?」


 俺は絶句してしまった。




 スキル:アルバスラッシャー

 効果:攻撃力1.1倍



 「これが普通なんじゃ」

 「え?でも1.1倍って」

 「召喚されたことに影響があるのかもしれんな」


 見たときから強いとは思ってたけどここまでちがうとは驚きだ。

 自分が更に特別だということを改めて知った。

 てかゲームなら、かなりのバグだ。効果が明らかにチートだ。


 「あと発動条件のすごく強いっていうのは何じゃ?」

 「いや敵の方を見ると敵の頭の方に浮かぶんですよ」

 「それも召喚された者の特性なんじゃろうか」


 とにかく同じジョブを持った人間に出会えたことで俺の異常性がよく分かった。

 確かに効果は強いが、それと同時にこの技を制限する枷も強い。

 


 「さてもうそろそろ帰るかの」


 もう時刻は11時50分。

 店にはもう客はガルハールさんを除いて誰もいない。どうやらかなり話込んでしまったようだ。


 「じゃあの、ブルーズ、トモ。また来るぞい」

 「おう、また来いよ」

 「ご来店ありがとうございました」


 俺はガルハールさんに手を振ると、目を細める。

 どうやら活動限界が訪れてしまったようだ。



 「さてお前はそろそろ寝ろ、トモ」

 「でも店の片付けは?」

 「ああ、そのことか。実はこの店は自分で荒らしたら自分で片付けるっていうルールがあるんだ。食器も自分であそこ箱に入れなければならない。そのルールを守った上でみんな騒いでるんだ」

 「へ~そうなのか」


 確かにゴミなどは散らかってない。

 もし逆らったら店を追い出されたりするんだろうか。


 「まぁそういうことだ。あとガキは夜更かしするな。ケイン、こいつを、寝床に案内してやってくれ」

 「は~いよ」



 俺とケインさんは階段を上がり廊下を歩いていく。


 「なんか色々すみません。本当は皿洗いなんかをしなきゃいけないのに」

 「こちらこそゴメンね。なんか酒に酔って無茶振りしちゃって」

 「いえ、お陰でいろいろな人と話せましたから」


 ケインさんがドアの前で立ち止まる。

 ドアを開けると中へ入っていき、すぐ戻ってきた。 

 

 「はい、これ持って」

 「おっと」

 

 ケインさんから布団を渡される。大きさから考えるに子供用だろう。

 そして、またケインさんがちがうドアの前で立ち止まる。

 ドアを開けて明かりを点ける。


 「今日はここで寝てもらうわ。明かりはこっちにあるわ」

 「ありがとうございます。でも本当に俺だけ先に寝てしまっていいんでしょうか?」

 「子供は気を使わなくていいの」


 まあ中身は大人だけどね。今回はそのお言葉に甘えさせてもらおう。

 大きな欠伸すると、瞼が更に重くなる。



 ケインさんが居なくなると俺は部屋に布団を敷き始めた。

 そして敷き終わると布団の上に寝転がる。眠気が俺を襲う。

 今日は色々なことがあった。

 そういえば俺のスキルがなんであんなに強いのかは分からずじまいだな。



 と、その時、俺の目の前にステータスが浮かぶ。

 そういえば固定能力ってなんだ?

 ガルハールさんも教えてくれなかったな。勇者もどきってどんな能力なんだろ?なんとなくタップしてみる。


 


 勇者もどき

 効果:スキルの効果強化・スキルに発動条件付与・仲間にも影響を与える


 「はは……そういうこと」


 そうか。分かったぞ。

 なぜ効果がこんなに大きくて発動条件なんてものがあるのかが。




 




 「すべてコイツのせいかーー!!」



 俺の叫びは夜の闇に消えていった。





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