魔鬼の出現
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「何かあったのかしら?」
「朝っぱらからこの人か。おい、何があったんだ?」
「お、聞いてくれよ兄ちゃん。国が戦力を欲しがっているんだとさ」
「ほー」
朝からギルドの方が騒がしいと思ったら、どうやら王国印のある依頼書が発布されたらしい。
俺自身、初めて王国印の依頼書を見た。
「んー結構報酬良いわね。どうする?」
「今の俺達なら受けられるランクだけど……どうすっかな」
う~ん……何か詐欺っぽいんだよね。報酬が高すぎる。
これだけ報酬が高いなら、それなりのランクを求められるはずなんだか。
「このランクでこの報酬って破格だろ」
「しかも、依頼内容は国の遠征に付いて行くだけって……特に何を倒せとは書かれていないのよ」
「この王国印が付いてるってことは、イタズラではないと」
『魔鬼討伐任務』
『魔鬼のしもべの討伐です。八日間の旅に、報酬は……』
依頼内容は、魔鬼遠征の人数増強だ。国の兵士では手が足りないらしい。
それなら他の国に手を借りれば? と思うかもしれないが、各国で起こっているらしいのだ。これまた急な話だな。親父のところは大丈夫だろうか、なんたってあの勇者の国だからな。
「モトキ、魔鬼って何?」
「ん…ああ。魔鬼っていうのはな……」
「ふーん。すごいのそれ?」
「俺も会ったことないから一概に強いとは言えないな」
エンナは話の内容を理解したらしいのだが実感が湧かないらしい。そりゃそうだよな。
それにしても結構すぐに現れたな魔鬼の野郎。代理人少年によればこいつを倒せばいいらしいけど、冒険者まで招集するとなると強いんだろうな。
「で、私達はその魔鬼っていう怪物をぶっ倒せばいいのね?」
「早まるな……おそらく本体はこの国の英雄様がやっつけてくれんだろ」
「え? 私達は倒しちゃいけないの?」
「ああ、俺達はあくまで雑魚潰しだ」
エンナは俺達冒険者が倒すと思っているのか。俺達は、あくまでお膳立てであり、雑魚相手だ。
ちなみに英雄は、この国に召喚された勇者みたいな立場の人間だ。
「んじゃ、行くか?」
「この紙によると、強さは推定三十層クラスって書いてあるから、問題ないでしょ」
「決まりだな」
意外と早く決まった。エンナも興味あるようだが、俺も実はかなり魔鬼に興味がある。だからといって、戦闘大好きな種族ではない。
***
「ん? ボライ、何の準備してんだ?」
「モトキか。あれだ、遠征の準備だよ。かなり報酬がよかったんでな」
「で、本音は?」
「報酬も良くて、戦闘もできるから一石二鳥ってわけよ」
「だろうな」
ボライにとって報酬など二の次三の次だろう。とりあえずこの男は戦闘さえできれば文句が無いらしい。未知の敵への好奇心は分からなくも無いが、宿は一体どうするんだ?
「宿は休業ですよ。だって、モトキ様方がいなくなったら誰も残りませんもの」
「それもそっか」
「そういやボライがいなくなったらルク一人だけじゃないか。一人は寂しくないのか?」
「いえ。すこし長い休暇を取ったと考えればいいだけです」
父と違ってできる子だな。父とは頭の作りからりがうのだろう、それか素か。
それにしても、この宿って俺ら以外に泊まっていないのか。
「娘よ。しばしの別れとなるが……」
「父ちゃんは、金を稼いでくればいいのよ」
「……了解した」
いやーお厳しいね。
父が心配の言葉を言い終わる前に金の話とは。それだけ財政がきびしいのだろう。
「そういやモトキよ」
「なんだボライ?」
「お前、昼と夜どっちにするんだ?」
この遠征は組が二つに分かれている。昼に戦うチームと夜戦うチームだ。
「夜の方が実入りがいいから夜にしようと思うのだが……エンナは希望あるか?」
「私も夜で構わないわ」
「それじゃ俺も夜にするか」
ボライも俺達と同じ夜戦チームに入る。
おそらく二人より三人と考えたのだろう。確かに知っている人がいるだけで安心感が増す。
***
寝室で寝転がる。隣ではエンナが装備の点検をしている。
「エンナ、お前は緊張とかしてるか? 初めて戦う相手だぞ」
「冷静に対処すれば問題ないわよ。だって本体でなければ、そこまで強くないんでしょ?」
「それもそうか。いままでだって乗り越えてきたしな」
「必ず勝つわ。私とモトキの剣なら」
そうだ、俺とエンナの剣のコンビネーションは強い。このコンビネーションのお陰で五十層を超えても戦えているといっても過言ではない。
本来ならば、この歳で迷宮探索で五十層を攻略できる事自体がおかしなことなのだ。冒険者の間では五十層を超えたら上級者、六十層を超えられたらベテラン、七十層ともなると未知の領域だ。
こんなにも迷宮の深層に行けるのも頼もしいパートナーあってこそだ。今では当然になっているが、エンナはこの旅には同行する予定はなかった。
「本当にエンナは頼りになるな」
「な、何よ急に!?」
「本当だろ。実際、俺一人じゃメンタルが持たなかっただろうし」
「そう……なの?」
俺は嘘は言わない。本当の事だ。
無力な俺の傍にいてくれる一人の少女。
強さについては申し分なく、旅を一緒に盛り上げてくれる。
「エンナ、後悔してないか?」
「何を?」
「だって剣の修行投げ出して、国を出たんだろ。絶対ベラルさん怒ってるぞ」
「そうね~素振り一万回くらいは覚悟してるわよ」
「そうか」
そういやベラルさんは、エンナが国を出てしまったと知っているはずなのに連絡すらない。
俺の傍にいたいというエンナの気持ちを汲んでくれたのかもしれない。
ふとエンナがなにかを思い出したように自分のバッグを弄る。
「そういえば報告しなきゃならないことがあったんだった。これ見てくれる?」
「ん? ステータスカプセル?」
「そ、なんかおかしな能力が追加されててね」
「どれどれ……」
<魔力活性>
効果:魔力が十五倍になる
は…………? なんぞこれ?
いや、俺はこの能力が発現した理由を知っている。原因は俺の糞能力<勇者もどき>だ。
「それにしたって強すぎだろ……枷、発動条件とかあるのか?」
「見たところ無いから、常時発動しているんじゃないかしら」
「弱点が無しかよ……」
この糞能力、俺には枷をつけて簡単にはスキル発動できないようにするくせに、他の奴に能力を追加した時は恩恵を与えるのか。俺のことを嫌ってるだろ絶対。
「強いのはいいんだけど、私、魔法は全然使わないのよね」
「そういや最近使ってないよな」
「私の得意魔法って職業にもあるとおり練成なんだけど、あれめんどくさいのよね」
「おいおい、強くなれるチャンスを無駄にするなよ」
俺は内心でホッとする。エンナの魔法を使わない宣言に。
だってこれ以上エンナに強くなられて、実力が引き離されるのはなんとしても避けたい。
「俺にも魔法の才能があればな~」
「そういえばモトキが魔法使っている姿見た事無いわね。使えるの?」
「少しならな……ファイア」
指先にライターの様ににが灯る。この大きさが俺の限界だ。
ちなみにガル爺とか親父に教えてもらったのだが、結局、火魔法しか使えなかった。
九十九%の確率で俺はエンナに魔法では勝てない。
剣では普通に勝負したら勝算はあるかもしれないが、モンスター相手だとエンナの方が強い。
「エンナ、俺って必要? 俺って役立たず?」
「なにいってんの? 十分役に立ってるじゃない」
「んじゃ……役に立った報酬として胸もませろ」
「…………わかったわ」
エンナがベッドから這い出す。
その足取りは軽快で、迷うことなく一つの得物のほうへ歩いていく。
ちょ……剣は反則だろ。俺はただ胸もませろと言っただけなのに。
「俺の、タイミングは完璧だったのに……なぜだ?」
「そこ関係ないでしょ」
最近優しかったから、調子に乗っていた。俺が悪い。
だからタガーを抜くのはやめてもらいたい。布団に入ってるのに寒気がするからさ。
「ごめん。調子乗っていた」
「聞く耳も持たない」
夜のデスゲームはこれからだ。
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