地の迷宮
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「おはよう……って何やってんだよ」
「いえ、別に失敗したという訳ではないんですよ?」
「白が一切ない目玉焼きを作っておいて、うっかりだと?」
「手元が少しすべってしまっただけで……」
「人、それを失敗と言う」
「ですよねー」
朝、焦げ臭い匂いで目が覚め、ルクが盛大に目玉焼きを焦がしていた。これを失敗と言わずして何と言うか。
リベンジをしたが、どうやらルクは朝食を作るのが不得意らしい。
やれやれ……これだからお子様はすぐに見栄を張る。え? 俺もお子様? 馬鹿言っちゃいかんよ。俺は思春期をとっくに過ぎた妄想男だ。
「貸せ」
「料理されるんですか?」
「前に働いていた店でな。人並みにできるように仕込まれた」
料理は、親父とトールさんに教えてもらった。朝食なんて欠伸しながらでも余裕だ。
俺は、トールのレシピ本を開く。せっかく貰ったのだから使わない手は無い。
「ん~美味しいです~……って、モトキ様に作らせてどうするのですか!」
「いや……俺は構わないけど。というか、半ば趣味だから朝食は俺が作るよ」
「いいのですか?」
「いいもなにも、タダ飯食わせてもらってんだからな」
この朝食無料というサービスは、少しだが食費が浮く。
残金で回復薬など、冒険に必要なものが買える。嬉しい限りだ。
「お、起きたか」
「おはよ、モトキ」
「早く準備しろ。今日も行くぞ」
エンナは朝飯を口に放り込むと眠たそうな顔で迷宮探索の準備に取り掛かる。
こんな寝ぼけた顔をを見ると、大丈夫かとい気持ちになるが、意外と闘えるので何も言わない。
「それじゃ行きましょ」
「おう」
「お気を付けてー」
元気良く手を振るルクに背を向けると、迷宮へと足を進める。
***
「まだいける?」
「大丈夫だ、問題ない」
「それじゃもう少し潜るわよ」
いや~爽快爽快。剣でモンスターを引き裂くって最高だね。なんというか感触がさ。
最近、闘うのが楽しくなってきている。強くなってきたからだろうか?
「これで五十五層か。そろそろ余裕なくなってきたな」
「それなりに敵も曲者ぞろいだしね」
「あと45層か。長いな」
「一体、どれくらい強くなればいいのかしら」
答えは知っている。この層のモンスターを一発で倒せる実力ではないと、最奥層までは辿りつけない。それは、どこかの鬼畜爺が体で示している。
俺もエンナも強くなった。他の冒険者よりか、ずっと強い。
まだまだチートへの道は険しいが、いつか迷宮の主を一閃できるようになりたいな。
「っと、おでましか」
「二体のゴーレムね」
この迷宮では狩り慣れたモンスターだ。しかし、油断は禁物。
ここの迷宮のモンスターのダメージを受ければ、死には至らなくとも、腕なんかは簡単に潰されてしまうのだ。そんな事になれば俺の冒険者人生は終わりだ。
「よし……」
剣をだらんと構える。地に剣が着いている状態だ。見るがいいこの剣裁き。
そのままの状態で、ゴーレムとの間合いを詰めに掛かる。
俺がゴーレムと接触する前に、俺の上を通り過ぎる影が一つ――エンナだ。
エンナの速さに目がいってしまい、俺から注意が逸れる。
(オーケー……)
剣をゴーレムに叩きつける。しかし、それだけでは粉砕には至らない。当然だ。
俺は、一発目で使った遠心力をそのままに二体目に当てる。ここからが本番だ。
「よっしゃあ!」
今度は、二体のゴーレムの間に入ると、俺自身を軸にして剣を一周回す。
本来ならば届かない距離――しかし、俺のリーチは通常の二倍だ。なぜだか知らんのだが、空の迷宮にいた時からある能力なのだ。
二体のゴーレムは足が切断されたことによって倒れる。それを待っていたかのように無数の斬撃が飛び交う。俺でも、なんとか目で追えるレベルだ。
「けっこうアッサリね」
「ああ、強かったが硬いだけだ」
「それにしても速いな」
「そうかしら?」
最近エンナの成長が凄まじい。一体どこまでいくんだ?
今、エンナと決闘をしたら、俺は迷わずエンナに全財産を賭けれる自身がある。
一度だけエンナが、ベラルさんの様にエネルギー刃を出すのを見た事がある。
もしかして俺って足手まといなんじゃ……いや、そんなことはない。二人のコンビネーションがあってこその勝利……だよな?
「っは!」
俺が考え事をしている最中に、ゴーレムが現れ、エンナは二本の短刀でエネルギー刃を作り出し、ゴーレムを瞬殺する。
「また出た。最近良く出るのよね~」
「は……はは」
誰か助けて欲しい、この状態。
やばい、俺は足手まといだった。エンナが口に出さないだけで。
俺だって「俺って強いんじゃね」と思った事はある。だがエンナはもっと強いだろう。なにせ一瞬で倒したのだ。俺が足を崩すのに二発かかったゴーレムを。
「エンナ……俺って弱いか?」
「そんなことないわよ。敵が二体の時なんかだと頼りになるし」
「……ぐすん」
「ど、ど、どうしたのよ、急に泣いて!?」
「いや……俺って必要とされてるんだなってな」
エンナに「私はモトキ無しじゃ生きていけないの」とのコメントを頂いたおかげで元気が湧いてきた。そうだ、俺だって弱い訳ではないのだ、決して。
エンナとの差を狭めるには、スキルの存在が必要不可欠だが、俺のジョブのスキルは、言ってしまえばボス専用らしいのだ。だからスルーする。本当に使えないスキルだ。
親父に教えてもらったスキルについては、使えるのだが射程が絞り切れていないため、エンナを巻き込む恐れがある。これもまだ使えない。
「ゆっくり強くなっていけばいいか」
「そうよ。というか十分モトキは強いけどね」
***
――どこかの洞窟にて――
「ツイニキタカ」
あるモンスター……いや、これは怪物だ。形を成していない紛れもない怪物だ。
圧倒的な邪の気。それは周囲を冷たくする。
魔鬼はゆっくりと浮き上がる。それだけで洞窟内の石が吸い寄せられる。
「マツリ、ハジメル」
魔鬼にとっての活動源は、地上にある物全て。故に、どんなものでも吸い取る。
何を思ったのか、突如魔鬼は五つに分かれる。
「コレデ、マカイトニンゲンカイニイケル」
魔鬼は、三国と二つの魔界に一匹づつ派遣することにする。様子見だ。
「マズハ、ゼンハンセンダ」
魔鬼はそう言うと、洞窟ごと自分の体に取り込む。
頑強なる体を手に入れた魔鬼は、それぞれの目的地へと向かっていく。
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