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第30話 とある研究にて

「で、結局テーマ戻したんですね」


第3寮の地下研究施設には机いっぱいに資料やら実験データやらが積み上げられている。その中に埋もれているのは天才ミスティー・ブルー。並べられた栄養剤は彼の限界レベルを物語っている。

呼び出されたアドラーは到着するなり大量の書物の中から先行研究に関する文献がないかもう一度調べろと命令された。後輩に授業さぼらせてまでやらせる内容かとひとりごちていると案内された部屋には先客がいた。


「あら。ごきげんよう」


そこには頭を抱えているルカ、珍しく眼鏡をかけてものすごいスピードで仕事をこなすレイ、そして一人優雅なティータイムを楽しむシャル。聞けばルカは休み時間歩いているところを拉致され、レイとシャルは授業をさぼりがてら遊びに来たところをそのまま監禁されたらしい。3人それぞれ別の仕事を任されているが、この様子では進行スピードに大きな差ができそうだ。


「なにこれ!?」


椅子に座ると、途端に全身に痛みが走る。慌てて立ち上がろうとするものの体は椅子に張り付けられたかのように言うことを聞かない。


「この椅子魔法がかかってるんだ」


ルカが絶望した声で言う。


「仕事をしてないと体に電流が流れ続ける。急いで作業したほうがいいぞ」


半ばあきらめたように言うレイモンド。


「なんでシャルは優雅にティータイムしてるわけ?」

「シャルは例外。痛覚死んでるから」

「え?」


作業していた手が思わず止まる。


「痛った!!」

「だから言ってるだろ……」


アドラーは半泣きになりながら作業を続けた。

こんなの人権侵害だ訴えてやると思うが、ここはライデンだということを思い出して絶望した。ここでの出来事は裁判所も受理してくれない。もうキリがないので。

校門前にも書いてあるように、ここではいかなる国の憲法および法律が通じない。ついでに言うと倫理観も。

廊下を歩いていて流れ弾に当たるなんて経験ができるのはおそらく世界でこの学校だけだろう。そういえば兄貴たちも何回か死にかけたって言ってたな。なんだっけ、誰かの実験でグラウンドが爆発したとかなんとか。


3時間後。ようやく解放された彼らはもはや屍だった。

絶対今日は悪夢を見るだろうと確信した。脳が整理する記憶が地獄すぎるので。

人工知能の研究にどこまで文献を漁る必要があるのかは知らないがとにかくミスティーの気が済んだならよかった。


研究のほうの実務になると手伝えることはほぼないため、4人は地下からの帰還を許可された。

エレベーターに乗っていると、珍しく途中で扉が開く。

何階だったかは記憶していないが、乗り込んですぐだったのでかなり下のほうの階だろう。


扉の向こうにはたくさんの木箱。そして並べられた銃や爆弾。

どれも学校にあるはずのないものたち。

木箱に書かれたたくさんの国や地名。遠くに見える転送魔法の魔法陣。

彼らの頭には同じ単語が浮かんだ。


「密輸……」


ルカが咄嗟に扉を閉めた。


「賢明な判断だったな」

「……僕何も見てない」


秋に逆らうのはやめよう。

心の中でそう思った。

実際にはどこの寮も似たり寄ったりであるが、彼らがその事実を知るのはもう少し先の出来事である。



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