#1981 〈万界ダン〉よ!俺たちは帰ってきたーー!!
〈万界ダン〉5層。〈野草の草原ダンジョン〉の追想フィールド。
その日、〈エデン〉は帰ってきた。
「久しぶりだな〈エンペラーゴブリン〉よ!」
「ゴーブ!」
「それじゃあやりますか! 『インフィニティ・バニッシュセイバー』!」
「ゴーーー!!」
5層のショートカット転移陣で転移すれば、そこに待ち構えていたのは〈万界ダン〉の5層守護型ボス。
――〈国落の災厄・ヘルデザート・スペード・エンペラーゴブリン〉だった。
「こうして再び相まみえる日を待っていたぞーーー!」
「ゴァァァァァァ!!」
俺のスキルと〈エンペラーゴブリン〉の剣がぶつかり合ってズドーンと強烈な衝撃波をもたらした。
「ゼフィルス、勝手に仕掛けないの! あなたは〈エンペラーゴブリン〉のときは前へ出たがる癖があるわ」
「仕方ない、これは仕方ないことなんだシエラ! 今度はこれだ! 『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』!」
「ゴアアアアアアアア!!」
シエラに注意されても俺と〈エンペラーゴブリン〉の挨拶はもうちょっと続く。
今度は俺の雷の竜と、〈エンペラーゴブリン〉の杖から発射された巨大火球がぶつかり合って大爆発。勝ったのは俺の『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』だった。
ふはははははは!
「〈エンペラーゴブリン〉! 俺はLVがカンストしたぞーー!! 『天光勇者聖剣』!」
「ゴアアアアアア!」
うんうん! まるでおめでとうと祝われているように思うから不思議だ。
これだから〈エンペラーゴブリン〉戦は止められないんだよ!
〈エンペラーゴブリン〉から怒りマーク出てる気がするけど、きっと気のせいだ!
とはいえ〈エンペラーゴブリン〉は2パーティ推奨のボス。
他のメンバーも随時参戦したことで戦況は一気に俺たちの方へと傾いたのだった。
「ゴッブ!」
「防ぐっすよ! 『全ては無に還る』っす!」
「ここで穿つ――『森界・ヴィクトリーストロング・ベアード』!」
「残念だが、今日はここまでだな――『勇者の剣』!」
「ゴブ」
「おう、また遊ぼうな!」
渾身の『破砕剣』をナキキにブレイクされ、ミジュが顔面を殴ってノックバックさせた。この隙を俺が逃すはずもなく、最後はユニークスキルでフィニッシュしたんだ。
エフェクトの海に沈んでいく〈エンペラーゴブリン〉は、またいつでも来いと言っているようだった。
「〈金箱〉からは――〈帝鬼装備シリーズ全集〉レシピと〈帝鬼念願の剣〉レシピがドロップしましたわね」
「使うのゼフィルス?」
珍しく笛じゃないドロップ。
え? これ、〈エンペラーゴブリン〉が使えと言っているのか? なんだか魂的なものを感じるぞ!
…………惜しむらくは、これってレジェンド級ではなく、〈金箱〉級なところ。
でも、俺の最終装備までの繋ぎにはいいかも?
ふむ。作ってもらってみるか?
「数値は悪くないな。俺の最終装備までの繋ぎにいいかもしれない」
「ええー! 私ゼフィルスがあんなハレンチな姿になるのは、ちょっといやよ?」
「ちょっとなのね」
「ラナ様、今いやの部分で少し間がありませんでしたか?」
「そ、そんなの無いに決まってるじゃない!」
俺が前向きに考えていると、ラナが物申していた。しかし、それにシエラとエステルが反応する。
確かに〈エンペラーゴブリン〉の姿って、上半身筋肉モリモリに派手なマントを羽織っている姿をしているからな。
だが、安心してほしい。
「大丈夫だラナ。あんな上半身裸の姿にはならないから。この装備はちゃんと中まで着てるだろ?」
「あ、ほんとね。そうハレンチじゃなかったわ――だから違うのよ?」
「そうなのね」
「残念です」
「エステルのそれはどういう意味なの??」
レシピにはイラストも描いてある。
それを見せればラナは納得したようだ。
「それじゃあ、次の6層、行こうか」
「!!」
シエラの様子がさっきからちょっとおかしい。
普段はしないような行動、ラナをイジりにいってたからな。
それはもちろん、この次の階層を意識しまくってのことに違いない。
「あのゼフィルスさん。やはりカイリさんの」
「おっとリーナ、それ以上はいけない。俺たちは、〈万界ダン〉攻略の使命と報告を持って帰らなければいけないのだ!」
「は、はい!」
そう、カイリのユニークスキルでその階層をスキップできるとしても、俺たちはその階層を詳らかに調べなければならないのだ。これは使命なのだよ。分かるね?
「ゼフィルス?」
「いや、何でもないぞシエラ」
シエラが首を傾げて俺に何かあったの的な問いをしてくるが、俺は素早く首を振り、シエラが察しないうちに周りを促すことにした。
「――では、みんな聞いてくれ! 俺たちはこれより、〈万界ダン〉の6層へ挑む! メルトたちの調べで、この先は初級下位の1つ、〈幽霊の洞窟ダンジョン〉を模した追想階層だと分かっている。つまり登場するのは究極の〈幽霊〉系だ!」
そこまで言うと、メンバーたちがざわめく。
〈万界ダン〉最初の難関(?)、幽霊ダンジョン。
シエラを筆頭にして、〈幽霊〉系が苦手というメンバーは、実はそこそこいたりする。〈エデン〉は女の子ばかりだもんね。
「ゼフィルスが〈万界ダン〉で幽霊ダンジョンが登場すると知ったあと、なぜか優先するように〈海ダン〉での慰労会を開催したのは、幽霊船イベントで幽霊が苦手なメンバーを見抜き、〈万界ダン〉のパーティ編成に利用しようという魂胆だったんだな」
おっと、いつの間にかメルトが隣に来て得心がいったというように小声で言う。
バレてしまっていたか。結構、スムーズに話を運んでいけたと思ったが、さすがはメルト、もうメルトとの付き合いも長いし、俺のやることを結構見抜いてくる。
俺はそれに無言で頷いておいた。
そう、幽霊が苦手なメンバーを見抜く、これがかなり重要な案件だった。
なにせ、俺たち〈エデン〉はこれまで、幽霊系ダンジョンをさりげなく避けて攻略してきた経緯がある。故に、誰が幽霊が苦手かとか、対幽霊階層突破作戦とか、そういうノウハウが少ないのだ! 意外にもな!
故にあの〈海ダン〉の経験で得意不得意を見抜くのは、必須事項だったわけだ。
話を進める。
「これからフォーメーションを決める。1班、3班、5班、7班、9班の奇数班をメインに幽霊階層を突破するぞ! 偶数班は基本予備戦力。問題があったときに呼ぶ形にしたいと思う!」
そう言うと、偶数班のメンバーでホッと息を吐く反応が複数見られた。
そう。俺は班のパーティ構成を修正し、〈万界ダン〉では奇数班にそこまで幽霊が怖くないメンバーを、偶数班に幽霊が苦手なメンバーを集中して集め、運用していく計画を立てていた。
とはいえポジションなどのバランスもあるので、偶数班の全員が幽霊苦手というわけではないけどな。ちなみにシエラは2班なので偶数班だ。俺が近くで守ってみせる!
「やったるっす! 私の【破壊王】は〈幽霊〉すら破壊するっす!」
「クマのパンチは〈幽霊〉にも通じる。森は〈幽霊〉の温床だもん」
俺の班のナキキとミジュは幽霊へっちゃら派だ。
ナキキの【破壊王】はなんでも破壊するから破壊王なのだ。それは〈幽霊〉も例外ではない。
ミジュの【森界の熊掌者】も同様。ミジュの言う通り、森に幽霊は付きものだ。それ故か、その森の覇者でもある【森界の熊掌者】の拳は、〈幽霊〉にも通じる。
〈四ツリ〉の『森界を縄張りとする者』は、〈幽霊特性〉でもダメージが減少しなくなるのだ。優秀。
「私も幽霊はそこまで苦手ではありません」
「私もかな~。悪魔系とかの中には半分幽霊とか、むしろ全部幽霊、なんてモンスターも多いしね」
森を住処とし、普通の人には見えない精霊が見えてしまうエルフであるシュミネは、当然のように幽霊も平気だった。
1班で最後のメンバーであるシヅキも同様。悪魔召喚や悪魔契約を使えるシヅキが幽霊苦手とか言ってられないもんな。
このように、1班には幽霊がむしろ得意というメンバーを集めてパーティを組んでいるぜ。
奇数班に前後を任せる形で集団行動。
1班が先頭、9班が最後尾となり、俺たちは〈万界ダン〉の6層に入ダンしたのだった。




