#1978 最強装備の実力を見よ!最強アイギス完成だ!
研究所の騒ぎと熱狂は留まるところを知らず、しかし情報はしっかり各所に伝わり学園長たちもニッコリだ。
あれ? でもなんか凄い汗をかいている気がするな。きっと心が熱くなってしまったんだろう。分かるぜ。(勘違いです)
「ゼ、ゼフィルス君。それでこの装備は今後、どう扱うのかのう?」
色々なものを抑えるような声で学園長が問うてくる。きっと今にもこの装備の性能にクルクル回りたくなってそれを自制しているのが声に表れているのだろう。
とてもよく分かるぜ。(とても間違ってます)
「もちろんアイギスが最上級ダンジョンで使います! アイギス用に用意した真の最強装備ですから!」
「そ、そうか。これと同程度の性能を秘めた装備の展示用があるともっと情報が広がると思うのじゃが」
「確かにそうですね! もちろんです! ちょっと俺たちの装備を一新してからになるので時間は掛かるでしょうが、学園にはちゃんと寄贈させていただきますよ! 是非広げてください!」
「う、うむ。ゼフィルス君には感謝しかないぞい――カフッ!?」
「おっと、学園長は少しお疲れのようです。少し向こうで休ませますので、これで(学園長逝ったーーーー!? でももうちょっとだけがんばって!? 今コレットさんに持たされたアッツ圧の蘇生茶をお出ししますからー!!)」
「お、おう? 学園長、お大事に?」
どうやら熱狂しすぎてしまったようだ。無理もない。
俺も初めて真の最強装備を作りあげたときははしゃぎまわり、うっかり水を飲むのを忘れて脱水症状が出かかったもん。ほら、視界の端でカイエン先輩がお茶を渡してる。学園長、さっき汗かいてたもんな。
「ゼフィルス氏ーーー!! 今度はどうか、戦っている様子も見させてはくれないか!?」
ミストン所長が学園長よりもキマっている笑顔で俺に聞いてくるので許可を出す。
「もちろんです! ――アイギス、頼めるか!」
「了解です。――ゼニス、出番のようです」
「クワァ!」
「ありがとう! ではこっちの実験場で頼む! ――我が研究所の研究員たちよ! メモの準備はいいか! ペン速を出し過ぎて成果を燃やしたりしたら承知しないぞー!!」
「「「「「おおーーーーーー!!」」」」」
どうやら研究員がペン速を操るという噂は本当だったようだ。
しかも出し過ぎ注意まで懸念されているくらい、ここでは当たり前に使われている言葉らしい。さすがは(?)研究員だぜ。
移動した場所は研究所の裏に併設されている実験場、という名の練習場。
俺たち〈戦闘課〉の校舎裏にある練習場と同じものだ。
的がしっかり立っており、多くの観客が詰めかけていた。
ここがお披露目の舞台だな。
そこに出るのはアイギスとゼニス。
練習場のフェンスの外には研究員たちが綺麗に横一列に並んでおり、回覧板とペンを握りしめている。
いや、すでにメモを書きまくっている人も居るな。あ、燃えた!
「愚か者! 興奮しすぎだ! まだ始まってすらいないぞ! 気を落ち着けるのだ!」
ミストン所長が檄を飛ばす。
メモが燃えたことに対してではなく、燃やしたほどペン速を出してしまった研究員に注意が出されるのがクレイジー。
しかも誰1人疑問に思っていない様子だ。むしろ「あいつ、先走りやがって」「これで少しは落ち着くだろうさ」なんて言葉が聞こえてきたぞ?
研究所ってこういうところだったっけ? なんだかよく分からないけど凄い。
「あの、始めてもよろしいでしょうか?」
「「「「「よろしい!」」」」」
「はい! では始めます。ゼニス、本来あるべき姿を降臨するのです! 『小型化』解除です!」
「クワァ!」
「「「おお!」」」
アイギスが聞けば一糸乱れぬ研究員たちがメモにペンを添える構えの状態(?)でどうぞした。
それを聞いてアイギスがゼニスに『小型化』解除の指示を出せば、ゼニスの体が元の状態へと戻っていく。
「これは!?」
「これが今〈ファーム〉で話題になっている、〈エデン〉の最終形態モンスター!」
「夜を照らす白銀の竜か!」
全長30メートル。翼を広げれば60メートルになるのではないかというほどの超巨大なドラゴン。
それは〈聖竜〉系列の最終進化系にして頂点!
白銀の鱗とファサッとした体毛に覆われし竜。体は細身で、首はそこそこ長く伸び、角は2本、黒色の瞳には優しさと力強さが宿っている。
さらに特筆すべきはそのオーラ。体から白く聖なるオーラのようなものを発しているように見えるのだ。まさに神々しい伝説の竜という言葉がピタリと嵌まる。
「あれが〈伝説聖神竜〉です」
「「「「「おおおおおおおおお!!」」」」」
―――〈伝説聖神竜〉。
それは例の〈竜の試練〉突破者が見ることのできるモンスター一覧。その最後に刻まれている〈聖竜〉系列最強の名。
研究所の職員は、もちろん下に書かれていればいるほど強いモンスターである、と正しい認識をしているため。ゼニスが最高峰のドラゴンであると知っている。もうテンションがうなぎ上りだ! 分かる、分かるぜ! あ、また燃えた。
「気をつけろ! 燃やすのはハートだけでいい! 摩擦とメモとペンの限界を見極めるのだ!」
見極めるところがとても難易度高い。
あと燃やすのはハートだけでいいとか、すごくかっこいい。さすがは研究所で一番の男前を自称するミストン所長だ。
「『ハイジャンプ』!」
「クワァ!」
アイギスがひとっ跳びでゼニスに跨がる姿は壮観。超かっこいい。
俺は一瞬でスクショを構えてパシャパシャした。
ちなみにハイジャンプ中もスカートの中は黒い影に覆われて見えないので安心してほしい。〈ダン活〉は年齢制限B(12歳以上専用)なのだ!
首と胴体の間辺りに跳び乗ったアイギスにさらにスクショが光った。
なんだか研究員の方々から羨ましそうに見つめられている気がする。
「まずは旋回です。ゼニス」
「クワァ!」
力強い羽ばたき。
ミストン所長たちのオーダーは戦闘中。
ゼニスが戦闘で本気を出したときの羽ばたきと加速で一気に飛びだしたのだ。しかし、実験場は飛び出さない。
全力で上空に上がったからだ。
「これほどの速度で上を取ってくるのか!」
「羽ばたきがたったの2回だったぞ!?」
ゼニスに騎乗したアイギスは、それだけでAGIが+1200される。
なのにそれだけに留まらず、〈座天戦突シリーズ全集〉と〈アスカロン〉でもAGIが計+1120ほど上がっているので合計で2320上昇中だ。そりゃ速いわ!
これが専用装備の力だよ。専用装備をさらに真の最強装備にしてエンチャント付けた結果がこれだ。
ふっふっふ、どよめいてるどよめいてる。
だが、ここからが本番。俺もスクショをしっかり構える。
「『竜猫炎防盾』!」
「あれが、盾のスキル!」
「炎でできたドラゴン猫の幻影? いや、実体があるか!」
「あの巨体のドラゴンを丸々防ぐほどの大きさ。あれでは食い下がることも難しい……」
上を取ったら下からの攻撃に要注意。
盾のスキルを使い、下からの攻撃を炎で防ぐのだ。
前の〈炎武・鳳凰盾〉を装備していてゼニスがまだ〈聖光の聖竜〉だったときはよくやっていたワザである。
心なしか、遠目でアイギスとゼニスが満足しているように見えた。
「良いですね。では次――〈六ツリ〉いきます!」
「いきなりか!」
「『ディボルト・オウ・シードン』!」
ゼニスの周りに現れた無数の光から光線が的に放たれる。
真上から大量の光線が降ってくるのだ。これがかなり強い。
的は破壊不能オブジェクトなので破壊こそされないが、その威力は雄弁に語ってくれる。
「あの七段階中、七の的でも沈むのか!」
「もの凄い威力だぞ!」
的には段階的にレベルがある。そしてある一定の攻撃を食らうとダウンするのだ。
最高ランクの七段階目は、ただの〈六ツリ〉程度ならダウンもせずに受けきってしまう。しかし、アイギスの攻撃は、それが威力の少し落ちる範囲攻撃であるにもかかわらず、当たった的は全てダウン、倒れていたのだった。
「次の的を立てよ! 今度は中的だ!」
新たに立てられた的は先ほどよりも大きい。
大きいと耐久力が増すのでダウンしにくくなる、という仕組みだ。
ちなみに普通の的とは小的のことを差し、他に大的もある。七段階に加えてそれぞれ3種類の的が完備されているのだ。
「『真・ドラゴンブレス・ロングスラスト』!」
ここで放たれたのはドラゴンブレス。
あ、なんかとんでもない火炎放射のビームが的を直撃。その後を追うようにして投げ槍も直撃して中的をダウンさせていた。パシャパシャ。
ブレスで防御を破壊し、槍投げでトドメを刺す強力なスキルだ。まあ、最初のブレスで中的はすでにダウンしていたような気もするけど。
「次は大的だ!」
「いきますよゼニス! 『神竜の業火・ファイナルエクシードブレス』!」
「クワァアアアアアアア!!」
とんでもない巨大な火の球。もう太陽だろという見た目の火球が実験場に降り注ぐ。アイギスとゼニスの最強攻撃スキルだ。
フェンスの破壊不能オブジェクトによって守られている俺たちもなんか吹き飛ばされそうなほどの衝撃が舞い、後には焦げた地面と、ダウンする大的が残されていた。
「そ、そんな……! 中的ですらダウンしたところを見たことが無かったのに、大的すら一撃でダウンさせてしまうなんて!」
「すげぇ! すげぇよ!」
「あれ!? 俺のメモ、いつの間にか燃えかすになってんだけど!?」
至る所で歓声が上がる。
ゆっくりと旋回しながら下りてくるアイギス。
良い、このリアクション、とても良い! 俺は研究員さんもパシャパシャ、アイギスもパシャパシャした。
そこからはもう大フィーバーに突入。
質問タイムになると観客席の方々そっちのけで研究員が我先にと質問をしまくってきた。俺たちも丁寧に、時には実演して披露したよ。
「ゼフィルス氏! 予想以上! 遥か予想以上の完成度だった! ゼフィルス氏の広めたいという要望、このミストンがしかと承ったぞ!!」
今の研究所は情報の発信源。
新しい発見や発表が年に何発、何十発と飛び出すので注目度と信用は抜群だ!
またここに、新しい発表が世界に発信された。
その名は――真の最強装備だ。




