#1961 下級職ジョブチェンジ! テルニア編!
「それじゃあ次はいよいよ〈転職〉だ。テルニアには【盾姫】に、エミメナには【ナイトメア】に、グラジオラには【獣装者】に〈転職〉してもらうぞ」
「「よろしくお願いします!」」
「よろしくお願いいたしますぞ!」
新しく加入した5人のうち、まずはテルニア、エミメナ、グラジオラを連れて、俺は早速発現条件を調える。残りのナゴとキャロルはすでに欲しい職業だったのでそのままだ。
今は一度〈弓聖手〉に戻り、脱退のための引き継ぎなどを行なってもらっている。
「ゼフィルス、【盾姫】の希望者がいるんですって?」
「【ナイトメア】に就きたい子がいるって聞いたよ! ついに先駆者の私にあこがれちゃった子がでちゃった!?」
「俺からもいいか? 【獣装者】への転職希望者が出たという話を聞いてきた」
とここでギルドハウスにやって来たメンバーが3人いた。シエラとエリサとラウだ。
3人とも、下級職時代はテルニアやエミメナ、グラジオラと同じく【盾姫】、【ナイトメア】、【獣装者】に就いていたメンバーである。一応声を掛けてみたら、二つ返事、いや、返事の前に自らここに赴いてきたのだ。
「シエラ、エリサ、ラウ。よく来てくれたな。紹介しよう。新しく〈エースシャングリラ〉の後輩になるテルニア、エミメナ、グラジオラだ」
「あ! シ、シエラ先輩!? あ、あのハローです! 私テルニアって言います! シエラ先輩に憧れて、【盾姫】に就きたいと希望しました!」
「エミメナです。エリサ先輩にあこがれています。会えて話せて感動です」
「グラジオラですぞ! ラウ獣王のご高名はかねがね! 我も〈エデン〉下部組織の名に恥じぬよう研鑽を積み、ラウ獣王の隣に立ちたい所存ですぞ!」
「シエラよ。〈エデン〉のサブマスターをしているわ。そう、あなたが……テルニア、少し立ち回りを見せてもらえるかしら?」
「はい! 喜んで!」
「もちろん構わないわ! エリサちゃんが後輩のために一肌脱いであげるわよ!」
「感激です!」
「ラウだ。グラジオラよ、そこまで畏まることはない。俺のことは普通にラウと呼べ、獣王は付けなくていい」
「では敬意を込め、ラウ先輩と呼ばせていただきますぞ!」
おお、テルニアはシエラに憧れて【盾姫】に就きたいと言っていたからな。
本物のシエラを見てすっごいキラッキラな目をしている。もう俺とか視界に入ってないんじゃないか?
エミメナも同じく。腹ペコキャラかと思ったら、職業については真摯に向き合っている感じか。エリサも満更じゃなさそう。エリサに【ナイトメア】へ就いてもらったのは、【悪魔】系職業の先駆者になってほしかったからだった。そしてついに後輩ができそうでテンションが上がっているように見える。
グラジオラもラウを見て若干緊張しているように見えるな。豪快で緊張とは無縁そうと思っていたが、やはり【獣王】は別らしい。
「シエラ、早速スラリポマラソンで【盾姫】の条件を満たす予定なんだが、その様子を見るか?」
「ああ、あれね。……お邪魔しても大丈夫かしら?」
「もちろんだ。むしろ投げるスライムによって盾の使い方とか少し見られると思うぞ」
「……私にも少し投げさせてくれる?」
やはり新しい【盾姫】が気になる様子のシエラ、テルニアの盾捌きを是非目で見たいと参加を求めてきたので許可を出す。
「エリサとエミメナはそのあとで」
「おっけー! ――それじゃあエミメナ、レクチャーの時間よ!」
「お菓子いっぱい持ってきました!」
「有能よこの後輩!」
こっちはお茶会になっちゃったな。エリサの職業は頭脳プレイなところがある。その辺を伝授する気だろう。
「グラジオラは――」
「ああ。すまんゼフィルスさん、少しグラジオラに胸を貸すことになりそうだ。適当なところで切り上げるから先にそっちを頼む」
「了解だ」
なぜかラウはグラジオラの手ほどきをすることになっていた。
まあ、ヒマして待ちぼうけするよりかはいいだろう。
というわけでまずはテルニアから【盾姫】の条件を調える。
「えっと? これってスラリポマラソン、ですよね? 最近有名になってきている」
「そうだ。これを使って手っ取り早くモンスターを対象にした条件を満たすのが狙いだ。これからスライムを投げるから、盾で受け流してみてくれ」
「え、ええ?」
「……そういえばこの子、レベルは大丈夫なの?」
「おう。ちゃんと聞いてある」
「私は【氷城主】のLV29ですよ。レベルが低めなのは一度LV15の時に〈転職〉を経験してるのと、あと【盾姫】の条件が伯爵家では伝わってきてますから、LV30にするのを待ってもらっていた感じですね」
「それで【盾姫】を希望した訳ね。でもそれにしたってこの時期によくそのレベルで待ってもらえたわね」
「お姉ちゃんが私をギルドマスターにするって言って、レベリングはいつでもできるからまずは城の勉強だって色々叩き込まれてたんですよ~。でも私は城の防衛とか才能からっきしで時間ばかり吸われちゃって、この通りです~」
「いや、むしろそこで止まっていてくれてラッキーだった、【盾姫】はLV30を超えると逆に発現しなくなってしまうからな。シエラは条件を広めてくれたのか?」
「〈【LV30~LV75】を経験した事が無い〉という部分だけね。これだけは研究され周知される頃には、【盾姫】になる希望を削がれた子が多く出てしまうから。ゼフィルスには悪いけど、広めさせてもらったわ」
「大丈夫だ。問題ないって! 俺も広めていいって言ったからな」
そう、【盾姫】には〈【LV30~LV75】を経験した事が無い〉というとんでもない条件が含まれている。
俺たち〈ダン活〉プレイヤーでさえ最後の最後まで分からなかった条件だ。これがリアルで発覚するころには、シエラが言うように【盾姫】になれなくて悲嘆に暮れた女の子がたくさん出てしまうことだろう。故に俺は〈【LV30~LV75】を経験した事が無い〉だけは広めてもいいとシエラに言っておいたのだ。
シエラはすでに「伯爵」の家すべてに広めてくれたらしいな。
正直、この時期にLV30未満の【盾姫】希望者とか絶対居ないだろうと思っていたのだが、実際はこの通りだ。テルニアがマジ逸材! シエラにも大感謝!
もうね、絶対に手放したくない。むしろ手放すことなんてできないよ!
「そう……。テルニア、まずはこのスライムを受け流してもらえるかしら」
「この距離で!?」
「モンスターはわざわざ距離を気にしてくれたりなんかしないわ。中距離でものを投げてくるなんて平気でしてくるわよ。しっかり見て」
「分かりました!」
テルニアはそう言って自分の大盾、〈氷属性〉の中級上位級のカイトシールドを取り出して防ぎ始めた。
さすがは伯爵の姫。シエラが初期に持っていたものと近い感じの盾だ。
なんだか懐かしさが込み上げるなぁ。
そして2人で〈錬金セット〉から這いだしてくるスライムをむんずと掴み、投げまくった。
「あの、これって本当に【盾姫】の条件な感じ!?」
「ええ。私の時もやったわ。信じられないでしょうけど、本当にこれで条件が満たせるのよ」
「なんだか思っていた感じと違う!」
「そうね。分かるわ」
通じ合う2人。シエラがなんか横目のジト目で見つめてきている気がするんだ。
俺のテンションを上げてどうしようっていうんだ?
「テルニアはなぜ【盾姫】に就きたいの?」
「この距離の投擲を防ぎながら平然と会話を希望!?」
「防ぎながらでいいから答えて」
「全然良くない気がするんだけど……。その、私、シエラ先輩に憧れてて、あんな風に誰よりも前に出て味方を守りたいなぁってずっと思ってたんです」
「そう……」
「やっぱり【氷城主】は向いてないなぁって思ってて、でも期待の視線が重くってもうどうしようって思ってたときにミサトさんから声を掛けてもらったんですよ。嬉しかったなぁ。それでなんやかんやあってここに居る感じです」
「【盾姫】に拘る理由は、私なの?」
「はい! それはもう! シエラ先輩は私たち伯爵の姫みんなのあこがれですから! ――あう!?」
「油断したわね。もっと集中するのよ」
「話しながらじゃやっぱり集中できないですよー!?」
途中スライムが顔面にヒットしたりもしたが、概ねシエラとテルニアは仲良く語りあった。
そういえば昔、【盾姫】は唯一シエラの曾祖母のみが就くことができた職業だと聞いたことがある。そして、次に発現したのはシエラだ。つまり、シエラの家系しか未だに【盾姫】に就いていないことを意味する。
他の伯爵の姫も【盾姫】に就かせてしまって良いのか? シエラも色々と複雑そうな顔で、どうやらテルニアにその素質があるのかを確かめたかったらしい。
ずいぶん真剣に話してた。そして。
「そろそろ良いと思うんだが。シエラはどうだ?」
「そうね。テルニアは【盾姫】に就いても大丈夫だと思うわ」
「いいんですか!?」
「ええ。私の後輩になって頂戴」
「よ、喜んでー!」
こうして無事テルニアはシエラから認められたんだ。
俺も見ていたが、盾捌きは結構な腕前だった。しっかり基礎を学んで来た子特有の盾捌きをしていた。
タンク初心者にありがちな盾を壁としてしか使わない、怖がって盾に身を隠してしまい相手を見ない、なんてことがなく、結構近い位置からスローされるスライムを、しっかり見てから盾で捌いていた。
テルニアはこれで良しっと。
次はエミメナいきますか!




