#1959 〈弓聖手〉から引き抜き完了。次もあるよ!
「我は現〈ハンマーバトルロイヤル〉所属のグラジオラと申す者。こんななりだが1年生ですぞ。よろしく頼みますぞゼフィルス先輩!」
そう頭を下げて挨拶してくるのは、すでに俺よりもでっかい1年生、グラジオラと呼ばれた「熊人」カテゴリーの男子だった。
いやデカいな! さすがは熊人男子。ミジュやクラみたいな熊人女子はロリ手前みたいな、どちらかというと小柄な体格なんだが、男子はデカい。
この体格差で同じ種族とか色々とパナいぜ熊人は。
グラジオラと名乗った男子は身長180センチ越え確実。ガッチリとした体格の持ち主で制服の上からでも筋肉が盛りっと着いているのが分かる。髪は赤毛でワイルド。結構な迫力を持つ顔をしていた。
「よろしく。俺は〈エデン〉ギルドマスターゼフィルスだ。しかしグラジオラはでっかいなぁ」
「ははは! よく言われます! まだまだ伸びますぞ!」
「1年生だもんな!」
すでに俺どころか〈エデン〉全員の身長を超えているグラジオラ。これで1年生だというのだから恐ろしいぜ。
「おーいミサトー、全員集まったみたいだぞー」
「はーい。ということでレミちゃん。よろしくね!」
「全然宜しくないけど!?」
先ほどミサトが言っていた4人が集まったっぽいのでミサトを呼び戻すが、やはりレミとの話は平行線の様子だ。レミはこっちに戻ってくるミサトを抜かしてナゴたちのところに駆け寄る。
「ナゴやん、キャロル、エミメナ、本当に抜けちゃう気!?」
「はい。前から言っていますように、【ワーカー】系は2人も要らないですから」
「〈ハンマーバトルロイヤル〉さんとは相性がよくないみたいですから~」
「アディ先輩信者の集団はちょっと」
ナゴは手でメガネの位置を正すようにクイッとしながら端的に答え、キャロルは片手を頬に添えて困ったように言い、お菓子とチヤホヤされるのが好きっぽいエミメナは両手をバッテンにしているな。確かに、〈ハンマーバトルロイヤル〉はアディ先輩大好き集団って感じがするところだけど。
それを聞いたレミが肩を落とす。
「ガクン……。うう、せっかく良い感じのメンバーを確保できてたのに~」
ナゴ以外の2人は1年生だからな。結構奔走したっぽいし、ここまで育ててきたのは間違いなく〈弓聖手〉だ。それが引き抜かれるというのだからレミの苦労も察する。
「悪いな。今度なにか装備でも融通するからさ。最上級のやつ」
「ぐぬぬ。まあ、無理を言って引き留めても良い結果にならないというのは分かってるよ。〈エデン〉の下部に行きたいって言ってそっちが了承するなら私からはちょっと文句言うくらいしかできないしね。ギルドマスターがアディになる前に手続きするよ」
最上級装備の融通をちらつかせたら話がスムーズになった予感。
「というわけだよゼフィルス君! どうこの人材! あ、ちなみにグラジオラ君も〈転職〉希望ね!」
「【憤怒】に就かせていただけるのでしたら、是非そちらを希望したく! 我、一層の奮闘を誓いますぞ!」
「すごいな。さすがは〈エデン〉のスーパースカウトウーマンミサトだ! 素晴らしいぞ!」
希望を告げたところでほぼほぼ希望に沿う人材を即で見つけてくるとかうちのスカウトウーマンが凄すぎる!
……これ、ミサトの後任も必要なんじゃないの?
「この4人なら多分セレスタンチェックも合格だと思うけど、それに通ってから正式に移籍の手続き始めちゃうで良いんじゃないかな?」
「了解だ。――それじゃあ4人とも、一度〈エデン〉のギルドハウスに来てくれるか?」
「「「「はい(はい~)(応!)」」」」
というわけで早速4人をセレスタンに会わせることにした。
レミには合格したら脱退の手続きをしてもらうことで合意し、その場で別れる。
「なんだか緊張しますね~」
「あのSSランクギルドの総本山、限られた人しか入れないというギルドハウスに今、私たちが!」
ギルドハウスまでやってくると、キャロルとエミメナがそんなことを言って場を盛り上げようとしてくれる(?)。俺もそれに一役買おう。
「ふっふっふ、心構えをしておけよ? ここから先は俺たちの自信作、最高の居心地をプレゼントするギルドハウスへ入場する。油断していると、取り付かれて動けなくなるかもだぜ?」
「たはは~、温泉とかその気になったら数時間入ってても飽きないもんね~」
「……温泉があるのですか?」
「お、ナゴは温泉好きか? うちの温泉は複数の〈温泉結晶〉から直接掛け流しだから凄いぞ?」
「ふ、複数?」
ナゴの声が震える。そういえばこの世界で温泉と言えば〈温泉結晶〉から引くか、採集してくるくらいしかないんだったな。〈温泉結晶〉は凄まじいお値段だし、震えるのも分かるぜ。
「いやぁ壮観ですな! 我、ここに来ることを夢見たこともありました。夢が一部叶いましたぞ!」
「そいつは良かった。なら、中も是非堪能していってくれ」
「お邪魔いたしますぞ!」
グラジオラは度胸が据わってるな~。なんでも笑い飛ばしてしまいそうな中々の胆力を持っているようだ。
こうしてギルドハウスに入ると、まず目に飛び込んできたのは豪華絢爛な大部屋。
もう魔改造されすぎて、下はふかふかのジュータンが敷き詰められ、どこのパーティ会場かと見間違う作りに変貌している。長いテーブルが左右に置かれ、ここで色々と会議から打ち上げまで様々なギルドイベントを開催するのだ。
そして正面には、少し前に新調した特大美麗な神棚がドン!
その中心におわすのはもちろん〈幸猫様ファミリーズ〉の御神体だ。
いつ見ても素晴らしい。―――〈幸猫様〉!
おっといけない、今は案内中だった!
「セレスタン、いるか?」
「お待ちしておりました皆様」
「うお!?」
「「ひゃ!?」」
俺が声を掛ければ横から一礼する執事が現れてグラジオラ以外が大変ビビる。
きっと〈幸猫様ファミリーズ〉に見とれて気が付かなかったのだろう。そうに違いない。
「こほん。セレスタン、チェックを頼みたい。この4人が新しい候補だ」
「畏まりました。―――はい、4人とも問題ないでしょう」
「もう終わったの?」
「はい。元々調べはしておりましたので」
セレスタンが今日もセレスタンしてる。いや、彼ら彼女らはミサトを通して〈エデン〉に応募してきたって言ってたからな。そこからセレスタンが調べてくれたのだろう。そうだといいなぁ。
「そっか。俺から見ても問題無さそうだし、採用でいいだろう」
「そんなに簡単に決めてしまって良いのですか?」
「おう。うちにはうちのルールがある。その1つがセレスタンのチェックを通ることができるか否かなんだ。4人とも通ったから問題無し」
「おお! 我、感動に至り! これからよろしくお願いしますぞゼフィルス先輩!」
「こちらこそよろしくなグラジオラ。それじゃあ――」
「では、ここから先は僕が引き継ぎましょう」
4人の採用手続きを進めようとしたところでセレスタンが替わると立候補。
その目には、あと1人、お探しでしょう? と書いてあった。確かに。
「頼めるかセレスタン」
「お任せください」
「頼む。それじゃあ4人とも、まずはセレスタンに従ってくれ、俺とミサトはもうちょっと用事があるから一時的に離れる。またあとで合流しよう」
「「「「はい!」」」」
「――ミサト」
「はいはーい! 次はこっちだよ~」
こうして俺は4人を一旦セレスタンに預け、ミサトと再度スカウトの旅に出発した。
さっきミサトはこう言ってたからな。「この募集したい5人、全て紹介できるかもしれないよ」って。しかし紹介されたのは4人。あと1人、タンク希望が足りていない。
つまり、残りの1人は別口ということだ。
「それじゃあいこう~! 次向かうのは〈氷の城塞〉だよ!」




