#1955 下部錬金工房に訪問!みんなレベルカンストへ
言ったからには早速行動に移す。
「セイカ、みんなを集めてもらえるか?」
「は、はい! 多分、今日はみんな〈エースシャングリラ〉の錬金工房に居ると思います!」
「お、それなら直接行った方が効率よさそうだな。やっぱり俺が行く」
「はわわ!?」
セイカは【合成師】で〈錬金術課1年1組〉所属の女の子。ハンナの後輩だ。
そして、見事この前の1学期の期末テストで〈錬金術課〉300人中1位に輝いた秀才である。
ハンナの見込んだとおりだな。面接の時セイカに最初に注目していたのは、ハンナだったからなぁ。
そのおかげもあって、今はハンナに直接付いて教えを受けていたりする。
他の7人の【錬金術師】たちは別行動。なにせ、〈エデン〉のギルドハウスの錬金工房はさすがにそこまで大きくないのだ。
そこで今セイカが言ったとおり、白羽の矢が立ったのが〈エースシャングリラ〉のギルドハウス。
ぶっちゃけ〈エースシャングリラ〉の面々は結構〈エデン〉のギルドハウスに居ることが多いため、自分たちが手に入れたAランクのギルドハウスを持て余しているのが現状だった。そこで、ならばその一部を改装し、工房にできないかとソアやミツルと交渉。無事許可を得たので、今は大きな錬金工房を設置し、【錬金術師】の卵たちの練習の場となっている。
そこに俺が直接行くと言いだしたものだからセイカが「はわわ」していたな。
なんだか師に似てきたんじゃないか?
ということで即出発。
「セイカ、みんなはちゃんとレベリングできているか?」
「は、はい! おかげさまで! みんなすっごく喜んでたんですよ。校舎の錬金工房室はその、交代まで長かったですから」
「そいつは良かった」
セイカは学年トップということもあって、【錬金術師】の卵たちのリーダー、まとめ役も兼任している。さすがにハンナを煩わせるわけにはいかないと、卵たちが自主的に行動した結果だ。ちなみに毎日報告をサトル、もしくはアルストリアさんにあげているらしい。
また、今セイカの話にも出てきたが、〈エースシャングリラ〉にわざわざ工房を作ったのは、校舎にある学生用工房の数が不足しているからだ。
質の良いアイテムを作るにはそれなりの設備が必要。しかし、考えてもみてほしいのだが、〈錬金術課1年生〉はこの2年で生徒数が10倍に増えたのだ。そりゃ錬金釜など、施設が足りなくなるって。もちろん増設はしているらしいが、1人1個を独占できる数は当然無く、現在は交代で使っているのが実情だ。
だが、ギルドハウスの工房はそんなことはない。ちゃーんと1人1つ、自分用の工房を用意してあるので交代もせず、ずっと錬金し続けられているわけだ。メキメキ腕が上がるな!
こうして〈A地帯〉に来た俺たちは、そのまま〈エースシャングリラ〉が持っているギルドハウスへと到着した。
「うーん、ここももうちょっと工夫というか、華がほしいですわね。〈エデン〉の下部組織の名が泣きますわ」
「はい、少し寂しい、ですね」
「内装だけじゃなく、外装も力を入れたいよね。あ、でもソアちゃんたち忙しいかな」
到着した〈エースシャングリラ〉のギルドハウスはなんというか普通だった。見た目はスタンダードからイジってないんだからそりゃ普通だな。手を加えたのは内装の方だし。加えて温泉からなにから豪華に揃えている〈エデン〉のギルドハウスに敵うはずもなく、〈エースシャングリラ〉の多くが〈エデン〉のギルドハウスを利用している現状、〈エースシャングリラ〉の外装にお金を掛けるのも勿体ない、みたいな意見が出てこうなっている。
ただ、〈エデン〉ギルドハウスの改装に力を入れてきたアルストリアさん、シレイアさん、ハンナからすると、これは寂しすぎるらしい。
「ま、外見はとりあえず後回しだ。中に入ろう」
「はい、こっちです!」
セイカの案内でギルドハウスに入り、目的の工房のある方へ進む。
なんだか、ふと昔の〈青空と女神〉のギルドハウスを思い出したよ。
そういえば〈青空と女神〉もギルドハウスの外見度外視派だったなぁ。
「みなさん! ゼフィルス先輩、ハンナ先輩、アルストリア先輩、シレイア先輩が来てくれましたよー!」
「「「「お待ちしてました!!」」」」
工房に入ると壁際に揃って直立する7人の学生たちが緊張した表情で立っていた。
すでに今から行くねと連絡はしてあったのだが。内容までは伝えてなかったのでどうやら緊張させてしまったらしいな。
「出迎え感謝! まずはおはよう!」
「「「「おはようございます!!」」」」
「れ、錬金術師のみなさんが、体育会系のノリですぅ!?」
「ゼフィルスさん、分かってやっていますわね。相変わらず人の心を掴むのとノせることがお上手ですわ」
ノリで挨拶したらシレイアさんからおののかれ、アルストリアさんからは褒められてしまった。ふはは!
「早速だが、今日俺たちがここに来たのは他でもない。実はちょ~~っとした提案があってな」
「ちょっとした提案、ですか?」
俺が〈空間収納鞄〉から〈失敗挽回の錬金グローブ〉を出しながらそう言うと、卵の1人が反覆して首を傾げる。
しかし、俺の取り出した〈失敗挽回の錬金グローブ〉を見たアルストリアさんたちはというと。
「この提案をちょっとと言い切りましたわゼフィルスさん」
「さ、さすがですぅ」
「う、ううーん、ゼフィルス君、やり過ぎなければいいんだけど……」
なぜかとても複雑そうな表情をしていたんだ。そんな表情をすることなんてないのだよ?
というわけで、説明する。これさえあれば、レイドボス素材を用いた最上級錬金を下級職の【錬金術師】が行なっても、素材が失われないことを。
本来であれば、ハンナの【アルケミーマイスター】で言うと『上級錬金』スキルを〈系統進化スキル〉の『最上級マイスター』で進化させ、『最上級錬金』スキルにしないと最上級素材を錬金することはできない。
だが、失敗確実であれば下級職の『錬金』でも使うこと自体はできる。マジでとんでも赤字戦法なので〈失敗挽回の錬金グローブ〉がない時はやりたくなかったが。これが揃った今、むしろやらない理由が無かった。
説明を受けた卵たちがおののく。
「レ、レイドボス素材を使った錬金!?」
「失敗前提!? しかも失敗しても素材が無くならない!?」
「永遠に錬金できる、永久機関ですか!?」
「さ、最上級素材を使ったレシピなんですかこれ!?」
「そそそそそそんな、きききき貴重なものを私たちににに????」
ふっふっふ、震えてらっしゃる。
ちょっと刺激が強すぎてしまったようだ。だが、セイカはニコニコしている。
俺と同じく震えるみんなを見て楽しんでいるのか?
「やったねみんな! これを使えば私たちもすぐレベルカンストだよ!」
違った。純粋に喜んでいただけだ。さすがセイカ、マシロ並の純粋さを持つと言われるだけある!!
よし、ここで追撃だ。
「もちろんレベルカンストの次は――〈上級転職〉が待ってるぜ? カンストした者はすぐに言え、俺が即で上級職にしてやるからな!」
そう言って俺は用意しておいた8枚の〈上級転職チケット〉をペラリと見せる。
「「「「ひゃああああ!?」」」」
「「「おおおおお!?」」」
【錬金術師】たちから悲鳴が上がったな! ふははははは!
「加入して1ヶ月と少し、もうレベルカンスト、そして、〈上級転職〉してしまいますのね」
「ね、年々、下級職のカンストが早くなってますぅ!」
「でも、レベルが早く上がるのは良いことだよ。正直、私の後を引き継ぐにはレベル上げの期間がネックなんじゃないかなと思ってたし」
「あ、それは分かりますわ」
「た、確かに。レベル上げ問題が解消されれば後は即戦力ですぅ!」
アルストリアさんとシレイアさんは最初こそ少し遠い目になっていたが、ハンナの言葉に持ち直していた。
そう、生産職はダンジョンに入らないからレベル上げが遅い。ぶっちゃけ1年で上級職のレベル100へ持っていくのは難しいのだ。故に、こうして奥の手で一気に上げきる所存。
さあ、忙しくなるぞ~。
主に【錬金術師】の卵たちがな!




