#1956 ゼフィルス流超パワーレベリングランクアップ
それから【錬金術師】の卵たちの過酷な――否、超楽しいパワーレベリングが始まった。
「はわわ、はわわわ!? なにこれ? レベルが、レベルが!? 一気に2も上がりましたー!?」
第一号はセイカの悲鳴から始まった。
もちろん嬉しい悲鳴さ!
「ほ、本当に失敗しても素材が減りません!」
「すごい……、すごいよ! レイドボスの素材が消える心配がないなんて!」
「失敗って成功時よりももらえる経験値が少ないはずなのに、なにこの経験値!」
「レ、レベルがどんどん上がっていってしまいますー!?」
ふははははは!
いいぞ! 【錬金術師】の卵たちよ、良い反応だ!
その調子でどんどんレイドボスの素材を使い、レジェンドレシピのポーションを作製しようとして失敗していくのだ!
ペナルティやデメリットなんてほとんど無し! 最初は恐る恐るだったものの、一度大丈夫だと分かった【錬金術師】の卵たちはその後一気にレベリングにのめり込んでいったんだ。
「ステ振りは特に気をつけろ! ハンナと同じ道を行きたいのなら、このステ振りを目指すんだ! 余計なものに貴重なSPやSUPを振ったら頂きには到達できないぞ!」
「「「は、はい!!」」」
もちろんステ振りにはしっかり気を使っている。1Pも無駄にはできない。
パワーレベリングの弊害と呼ばれている現象の1つがこの余計なものへのステ振りなのだ。パワーレベリングした者は、なぜか弱くなってしまうという現象だな。
本来ならレベルは苦労して1ずつ上げるために貴重なSP振りは熟考を重ねて振るものだが、パワーレベリングだとSPを軽いノリで「あ、これ便利そうだから取っとこー」と余計なものに振りかねないのだ。これが弱くなる原因だと俺は思っている。
その辺はしっかり周知して教え込んでいるし、ハンナという頂きが目の前にある学生たちは、見本という名の完成形を見せられているのだ。
その通りにステ振りすれば頂きへ到達できるのに、寄り道なんてまずしない。
これも今年から1年生の必須科目に〈育成論〉が導入されたおかげだろう。思いのほかスムーズにみんなステ振りができている。――しかし、
「あの! ハンナ様は〈スラリポマラソン〉の上位者と聞いています!」
「私も、ハンナ様は〈スラリポマラソン〉で育ったと聞きました!」
「私たちも〈スラリポマラソン〉をしなくてもいいのでしょうか?」
「いや、〈スラリポマラソン〉は必要ない。いいんだ、気にしなくても大丈夫だ。みんなはこっちに集中しような」
「「「「は、はい!」」」」
ハンナという存在が大きすぎて勘違いする人も出てきている様子だ。
こういうのが危ない。そう、危ないんだ。俺は正常な道をしっかり伝授した。
そんな順調すぎるほどのレベリングは、あっという間に成果を上げる。
「カ、カンスト、LVがカンストに届きましたー!」
そう、ついに【錬金術師】系の卵の1人、【合成師】のセイカが最初に下級職LVカンストに届いたのだ。
「は、早すぎましゅー!?」
「こんなレベリング、これまでの歴史を圧倒的に塗り替えましたわよ! これが、最上級ダンジョンから産出するアイテムや素材の力ですか……!」
「ゼフィルス君、全力出しすぎだよー!?」
これには先輩のシレイアさん、アルストリアさん、ハンナもビビってたぜ。
いや、それも分かる。
8人交代でグローブを使わせても2日でレベルカンストしてしまうレベリングよ?
もうね、パナイですわ。
〈失敗挽回の錬金グローブ〉があれば【錬金術師】のレベリングは即で終わっちゃう! もちろんその次の日には残り7人も全員LVカンストになっていたさ!
こうなれば後は恒例のあれだよ。
「よし、準備は整ったな。それじゃあ次は――」
「あ、ゼフィルスさんの手が怪しい動きを」
「あの動き、私、知っているような気がしましゅ!」
俺は懐からペラリと8枚の〈上級転職チケット〉を取り出したのだ。
「次のステップに移る! 次はとうとう――〈上級転職〉だ! 今から測定室に行くぞ!」
「「「「…………!!」」」」
これには【錬金術師】の卵たちも息を飲んでたな。
もっと体育会系っぽく「応!」とか言うかなと思ったのだが、衝撃が濃すぎて声がでないっぽい。だが、こういうリアクションもまた良し。
「超高速レベル上げという信じられないような方法で自分のLVがカンストして夢かと思っていたのに、そこからさらに〈上級転職〉という名の隕石までズドンと降ってきて1年生たちが完全にキャパオーバーしていますわね」
「ゼ、ゼフィルス君、こういうことはほんと容赦がないというか、全力を出し過ぎちゃうから」
「良いこと、です! 後輩さんたちは、恵まれてましゅ! それに気がつけるかは少し時間が掛かるかもですが……」
【錬金術師】の卵たちが全員LVカンストしたので、そのまま〈測定室〉にレッツゴー。
8人中7人は【錬金術師】なので、ハンナ、アルストリアさん、シレイアさんと同じく【アルケミーマイスター】の道を示してあげた。もちろん発現条件を満たすために〈スラリポマラソン〉も履修済みだ。
さらに。
「【アルケミーマイスター】に〈上級転職〉する者には、今なら特別にハンナの上級職育成論も公開しようじゃないか!」
「「「ほ、本当ですか!?」」」
ハンナに施した上級職育成論メモの公開も約束!
実はすでに世間に公開しているハンナのステータスは下級職【錬金術師】まで。
上級職である【アルケミーマイスター】のステータスは非公開となっている。
まあ、ハンナのステータス公開に踏み切った理由が、生産職に無駄な戦闘スキルなどを覚えさせるという悪習を予防したかったからだからな。上級職まではさすがにステ振りを公開していなかったんだ。
だが、身内ならば、それもハンナの後任に就く立場のメンバーにならば構わない。
俺の提案に、7人は勢いよく食いついた。そして残り、唯一【合成師】という職のセイカはというと。
「あの、私はどんな職業につくのがいいでしょうか!?」
素直に俺に意見を聞き、身を委ねてきたんだ。ほんとセイカいい子。
「任せておけ。セイカは【合成師】の上級職、高の下、【イノベーションシンセシス】に〈上級転職〉してほしい!」
「【イノベーションシンセシス】! 高位職!? そ、それは初めて聞く上級職です! ゼフィルス先輩、知ってるんですか!?」
「勇者だからな!」
ここで伝家の宝刀も炸裂。これは決まっただろう(?)。
「勇者って凄いですね!」
「だろ?」
さあ、どんどん上級生産職を増やしていくぞ!
ハンナやアルストリアさん、シレイアさんの後輩をじゃんじゃん生み出すのだ!
ふはは!
1人1人丁寧に発現条件を整えて送り出すと、まずは7人がしっかり【錬金術師】から【アルケミーマイスター】になることに成功した。
「やった! 私、ハンナ様たちと同じ【アルケミーマイスター】になれたよー!」
そうやって喜びはしゃいで嬉しさを表現する者も居れば、
「ほけー……」
未だに状況を処理できずほけーっとする子も居た。だが概ね問題無し。
続いてハンナのステータスを大公開して、最強育成論メモをペラリ。
この通りにステを振れば第二のハンナになれると言ってしっかりと育成論通りにステータスを伸ばしてもらったんだ。あとは、
「最後はセイカだな!」
「よろしくおねがいします!」
「おう。セイカには、ハンナたちも使ったこの〈信じる心〉をまず使ってもらう」
「はい!」
今日は〈信じる心〉のバーゲンセールだったぜ。ぶっちゃけ〈上級転職チケット〉よりも今は〈信じる心〉の方が手に入りにくいので、8個は結構ギリギリだった。また時間があるときに集めておかないとな。
「また、大失敗を10回、劣化品の上級品の作製の成功、そして『合成』スキルを使った回数が1000回を超えていることもクリアしているはずだ。後はこの〈上級転職チケット〉を持って〈竜の像〉にタッチすれば上級職が出ているはずだ」
「はい!」
それまで7人が〈上級転職〉するところを見ていてすでに覚悟は決まっていたのだろう。
迷いなく〈竜の像〉へ向かったセイカは、〈上級転職チケット〉を持つ手を胸に添え、もう片方の手で〈竜の像〉へ触れる。
すると出てくるのは――上級職のジョブ一覧。
「あ」
そしてその中には、しっかりと【イノベーションシンセシス】の項目が浮かんでいたんだ。
セイカはそれを見て一瞬呆けたように固まったが、次の瞬間には一気にポチッと【イノベーションシンセシス】を選択していた。思い切りが良いな。
ジョブ一覧から【イノベーションシンセシス】以外のものが消え、セイカの頭の上に輝く。
「おめでとうセイカ! 今日からセイカは上級職、高の下、【イノベーションシンセシス】だ!」
「は、はい!! ありがとうございますゼフィルス先輩!」
「おめでとうセイカちゃん」
「セイカさんおめでとうございます、とても頼もしいですわ」
「おめでとうございますぅ!」
「ありがとうございますハンナ先輩! アルストリア先輩! シレイア先輩!」
【イノベーションシンセシス】は【合成師】のパワーアップバージョン。以前も話した通り、ランダム要素はあるものの『合成』系のスキルでよりすさまじいものを生み出すことができる可能性がある!
そして、基本は【アルケミーマイスター】と同じく錬金もできるのだから素晴らしい……! まあ、大量生産では【アルケミーマイスター】には敵わないが、その分たまに〈合成ガチャ〉で貢献してもらいたい!
そう説明する。
「頼りにしているぞ、セイカ!」
「はい! 頑張ります!」
これで【錬金術師】の卵たちが全員上級職になった。
もう卵なんて呼べないな。これからは新米とでも呼ぶとしよう。
さあ、まだまだ終わりじゃないぞ? ここからまたガンガンレベル上げしてもらうぜ。
せめて夏休み中に六段階目ツリーは覚えてもらわないとな!




