#1951 夜のモンスターなんちゃらの肝試し大会!
「というわけで――今年もやって参りましたーー! ドッキドキの肝試し! 幽霊船が溜め込んだお宝をみんなでぶんどってこようぜ企画! その名も〈夜のモンスターハント〉だーーー!!」
「「「「きゃーきゃー!」」」」
「その名前、すでに意味を成していないわよね」
時刻は夜。
真っ暗な海辺に光るフラッドライトに照らされて、俺はみんなの前で盛大に宣言していた。
あ、シエラがジト目だ! やったー!
「肝試し! 〈エデン〉ってこんなこともするのね! ミツル君、楽しみだね!」
「こ、この装備で戦闘するってマジなんですか!?」
「ぴ、ぴえん」
「こんなところで戦った経験はありません。良い経験が積めそうです」
ソア、ミツル、シオン、ユナが超大型の幽霊船、いや、幽霊島とでも表現すべき巨大なフィールドが海をこっちに向かって進行してくる光景に震えていた。いや、ソアとユナはやる気だな。ユナはリーナになにか言われたと見えるんだぜ。
もちろん〈幽霊船長の隠し財宝の地図〉は使用済み、去年〈幽霊船長〉を倒して確保しておいたのだ。船ご到着までの間にルール説明。
まず大事なところ、装備は水着な!
「安心しろって、2層のここに登場するモンスターはみんな初級上位級から強くても中級下位級だ。上級職のみんなであればたとえ装備が水着でも負けることはない。そもそも水着はここ〈海ダン〉の素材で作った物だしな!」
〈海ダン〉の素材で作った装備が〈海ダン〉のモンスターに後れを取るなんてことはない。基本〈ダン活〉では、そのダンジョンの素材で作った装備なら、攻略は可能なはずなくらいの能力はあるのだ。見た目が紙装甲どころか装甲のその字もないからといって防御性能に心配は無い。(矛盾)
きっと肝試しを楽しむことができるだろう! そもそも、そんなガッチガチに装備してたら肝試しにならないしな! 安心材料が無くてドキドキする、それこそが肝試しの楽しみ方なのだ。ちなみに武器と盾もレンタルな!
「それじゃあチームを分けるぞ! 最初は〈エースシャングリラ〉組が突入してもらい、〈エデン〉組はだいぶ経ってから突入だ。ハンディだな!」
「ふ、またぼくのお宝センサーが1人勝ちしてしまうんだね」
「あ、ニーコは今回『お宝レーダー』禁止な」
「なんでさ!?」
だってそれニーコ超有利じゃん。ニーコの職業は【トレジャーハンター】だぞ?
ちなみに〈エースシャングリラ〉の【賊職】系の子にも同じように言っておく。
お宝探知系は無しで、自力でお宝を手に入れよう!
もちろん経験者であり、LV100カンストの〈エデン〉組はだいぶ経ってからの突入だ。
だが、ここで予想外な提案がシエラからもたらされる。
「ゼフィルス、今回は私たちはここに残りましょう」
「なぬ?」
「人数も人数だし、私たちギルドマスターとサブマスターはここで司会なり指揮なりをしていた方が良いと思うのよ」
いや、色々言っているが単に自分が入りたくないだけだろう。だってシエラだもん。
もちろん却下だ! 理由? そんなの肝試し中のシエラが大変可愛いからに決まって――いや、これを言ったら絶対に参加してくれないだろう。それっぽい理由をでっちあげなければ。
「いや、それには及ばない。ここで司会なり指揮は〈アークアルカディア〉が執ってくれるからな。――そうだろう〈聖剣〉?」
「はい。この〈聖剣のサトル〉! 見事に肝試しイベントの司会をやりきってみせます!」
「……サトルってそんな二つ名だったかしら? 〈デスマのサトル〉とか、そんな二つ名だった気がするのだけれど」
勇者に引っこ抜かれた聖剣に振れば、キリッとしたかっこいい姿で任せろと言う。きっと名誉挽回したいに違いない。故に俺はサトルに任せるのだ。
ちなみに〈聖剣のサトル〉の二つ名は広まらず、〈デスマのサトル〉の二つ名に戻ってしまうことになるのは別の話。
「それにシエラ、次に行くのはあの〈万界ダン〉だぞ。幽霊やアンデッドモンスターも登場する。ここで少し慣れておき、耐性を得ておくのが吉だ」
「……そう、ね。確かにその通りだわ。〈万界ダン〉を突破するためには必要なことよね」
そう、夏休み中に再度攻略を検討している最上級ダンジョンのランク4、〈万界ダン〉。ここを攻略するためにもシエラの力が必要だ。
故に幽霊やアンデッドにはある程度慣れておかなければならない。ここみたいな何度か来ている幽霊やアンデッド発生ダンジョンは貴重なのだ。是非ここでシエラには慣れていってもらいたい。
ついでに他の狙いもある。幽霊が苦手なメンバーのピックアップだ。
戦闘に影響を与えるほど幽霊にビビるメンバーをこの際にリスト化し、〈万界ダン〉のパーティの組み合わせに利用しようという計画だ。
故に俺は今年の海回を夏休みの最初に持ってきた経緯があった。
その辺も添えてシエラに説明すると、ようやくシエラが〈幽霊船〉へ乗り込むことに前向きになってくれた。
「ゼフィルス殿、幽霊船、到着しました!」
「よっしゃ行くぞ! まずは〈エデン〉組が手本を見せる! そしたら〈エースシャングリラ〉組は乗り込め! そして大量のお宝を持って帰ってくるんだ! お宝と豪華景品がみんなを待ってるぞ!」
「「「「おおー!」」」」
話している間に船が到着したので、制圧開始。
おお、いるいる。いっぱいいる。
「まずはこうだ! 『シャインライトニング』!」
「「「――――!?」」」
船の縁から乗り込むと同時に範囲攻撃で一掃し、最上級ダンジョンでブイブイ言わせているLV100の世界トップのメンバーが50人規模で船に乗り込んだ。
「「「カタカタカターーー!?」」」
何を言っているのかは分からないが、スケルトンたちが動揺しているように見える不思議。
「うわぁ」
「じゅ、蹂躙だね~」
「ぴ、ぴえんだよ。相手が」
「作戦もなにも無かった……」
むしろスキルを使わなくても通常攻撃でも確殺なので、作戦を立てるまでもなかった。
俺たちが制圧したエリアを軸に〈エースシャングリラ〉も乗り込んでもらい、レディ。乗り込んだ瞬間だけがちょっと怖いので、そこは〈エデン〉が担当した形だ。一度乗り込んでしまえば脅威はさほどでもない。
なんだかみんなが唖然と固まっていた気がするのは、きっと気のせいだろう。
あ、お宝発見! 幸先がいいぜ。
そろそろ見本を見せられただろう。俺はゴーサインを送る。
「いってこい〈エースシャングリラ〉!」
「「「「はい!」」」」
「がんばってねー!」
「応援してるよー!」
「たくさんお宝集めるんだよー!」
サチたちの応援に背中を押され、〈エースシャングリラ〉が巨大船の奥へと消えていく。
「アイギス、アルテ、フラーミナ、シヅキは空から追跡を頼む」
「了解です」
「まっかせてください!」
「それじゃあ私は南側を」
「私は西側かな!」
テイムモンスターや召喚体に騎乗できるメンバーを送り出す。もちろん万が一のためだ。
ちなみに俺たちは30分したら出発の予定。
その間、〈竜の箱庭〉を出して〈エースシャングリラ〉の活躍をみんなで観察するんだ。
「なんだかこうやってギルドメンバーの活躍を見るのって新鮮だね!」
「俺たちは割と見慣れているけど、ハンナはそう思うよな」
「〈エースシャングリラ〉の面々も強くなったわね。もう五段階目ツリーが使えるのだったかしら?」
「全員が使えるようになるにはもう少し時が必要ですわ。ですが〈イブキ〉も人数分できましたし、後は早いですわよ」
「夏休みでこれだけ強くなれば十分という気はしますが」
「甘いですわクラリス。私たちに追いつこうというのですわよ? 夏休みが終わる頃には上級中位どころか上級上位を攻略中でも驚きませんわ!」
うんうん、みんな〈エースシャングリラ〉への期待がいっぱいだな。
ノーアなんか、もしかしたら早く肩を並べて戦いたいと思っていたりするのかもしれない。
俺も卒業までに〈エースシャングリラ〉の面々をLVカンストまで持っていきたいぜ。しっかり育成したい。
そしてノーアの言う通り、夏休みが明ける頃には――ふはは!
「よーしもうすぐ30分!」
「ついに私たちの番ね! 私のお宝感知に死角は無いわ!」
「勇者君勇者君! ぼくにも『お宝レーダー』の許可を!」
「ラナのパッシブ忘れてたな……」
〈エースシャングリラ〉の成長を見守ってたらもう時間だ。
〈竜の箱庭〉で見る限り、そして空から監視するアイギスたちからの報告では、みんなそこまでダメージを受けたりせず、ピンピンしているそうだ。まだ下級職のメーレイやロイの2人も問題ない様子。
だが、お宝ゲットはまちまちの成果。現在のトップは【賊職】系【盗賊女王】の子だな。
「ラナ殿下は少し手加減してあげてね」
「もちろんよ! でも王女としての威厳は見せてあげるわ!」
「というわけでニーコは諦めてくれ」
「ガーン!」
レディゴー!
「うわ! 〈エデン〉のみなさんが放たれた!?」
「あはは、すっごーい! エフェクトの光で船が照らされてるよ」
「こうして見ると、綺麗かも」
「負けていられません! 私たちも頑張りますよ!」
〈エデン〉が放たれると、〈エースシャングリラ〉の面々も気合いを入れて狩りまくった。
【賊職】の子がトップなので、その辺のお宝は採られているとみていい。逆にお宝ゲットした子が少ないエリアへと真っ直ぐ向かえばまだ残っている可能性大だ。
「あ、ゼフィルス先輩です!」
「カルア先輩もいるですよ!」
「私分かる! きっとカルア先輩はもふられについていってるの!」
ここに居たのはフェンラ、クラ、マルティのチームだった。
だがマルティや、カルアは俺と同じチームだからついてきているだけだぞ? でもチャンスがあればもふってみたい。
「ん、お宝発見!」
「〈幸猫様〉方、ありがとうございます!!」
簡易お祈りでパカッと〈銀箱〉をオープン。中身を回収して次の宝箱へ。
「フェンラ! これはマズいです。私たちも本気を出して挑むのです!」
「クラ~、あっちからアンデッドの群れ来てるよ~?」
「! まずはあっちを殲滅です!」
「……私に任せて」
「「「シエラ先輩!?」」」
「『グロリアスバッシュチェイサー』!」
ちなみにこっちは俺とカルア、シエラの3人チームだ。
シエラがアンデッドの群れに4つの小盾の追跡シールドバッシュで蹂躙していた。
それ、〈六ツリ〉の攻撃スキルじゃん! たとえタンクでもオーバーキルである。シエラが本気すぎる!
「シエラ!」
「ゼフィルス、あまり離れすぎないでよ」
「わ、悪い悪い。お宝発見が止まらなくてな」
「「「…………」」」
シエラの下に戻ると、いきなり手を掴まれた。
こう袖の端をちょこんと摘まむみたいな、いじらしくも可愛い感じの掴みだったんだ。よく見れば、シエラの表情が、若干潤んでる?
あと、後輩たちがこっちをガン見してます。そこへ。
「バァ!」
「「「「キャーーーー!?」」」」
「! 出たな幽霊め! ナイスこんにゃろー!」
地面からお化けがこんにちは。
あまりの出来事にシエラと後輩組が悲鳴を上げ、シエラは案の定、俺に抱きついてきた。水着のシエラが抱きつく? 今年もナイスだこんにゃろー!
通常攻撃で撃破。
「シエラ、もう大丈夫だ」
「…………」
そう言うと、ゆっくりと俺から身体を離すシエラ。
その顔は、赤くなり、そして盛大なジト目だったんだ。ジト目最高!
ガツンと一瞬で撃ち抜かれてテンションがどっか逝きそうになったよ。
「わわ、これ、見ても良いものなのでしょうか?」
「すごくお似合いです!」
「ご主人、そこで撫で撫でしてあげるの~」
あ、そういえば観客がいたんだった。
シエラがさらに赤くなってて、大変可愛かったです。




