#1931 マリー先輩に海のお誘い!そして生産7人衆発覚
「マリー先輩いるか~」
「いるで~」
〈海ダン〉で夕方まで狩りをしたあと、その足でマリー先輩のデパート、〈トップマリー〉へ赴いた。
男子たちはすでに解散済みだ。
「前もって連絡していたとおり、〈海ダン〉の素材をたんまり持ってきたぞー!」
「いつも前もって連絡してもらえると嬉しいんやけどな!」
「そりゃダメだ。それじゃあマリー先輩の度肝を抜くことができないじゃん!」
「やっぱりうちの度肝を狙ってたんか! 毎回驚かされるうちの身にもなってや?」
「毎回よろこんでんじゃん!」
「いつもおおきに!」
今回はマリー先輩も慣れ親しんだ〈海ダン〉素材の納品なので前もって連絡しておいたんだ。さすがに〈海ダン〉素材ではマリー先輩の度肝を抜くことは、もうできないだろう。
…………マズいな。マリー先輩の度肝を抜ける素材が残り少ない。最上級ダンジョンは、あと2つしかないのだ。マリー先輩の度肝を抜けなくなったら、俺はなにを楽しみに素材確保をすればいいんだ!? いや、ダンジョン攻略だけでも楽しいけど!
今気が付いたが、俺、もしかしてマリー先輩に逆に掌で転がされてない?
マリー先輩の度肝を抜きたくて最上級ダンジョンもたっぷり攻略して来ました! 素材もマリー先輩のためにたんまり持ってきました! 全てはマリー先輩の度肝を抜くために!
俺の行動原理が、まさかのマリー先輩中心!?
いやこれはきっと気のせいだろう。気のせいだよね? 気のせいのはずだ。
「そうだ、マリー先輩! 今年も〈エデン〉は〈海ダン〉で慰労会をする。今回も来てくれるよな!?」
「うちが〈エデン〉の一員に入ってる!? お誘いいつもあんがとな。でも今年はデパートがオープンしたばかりやし――」
「よし、マリー先輩も行こう!」
「話聞いてたか!?」
だってなんだか断られそうな雰囲気だったんだもん。
俺はマリー先輩を説得する。
「安心してくれ。マリー先輩も疲れが溜まりに溜まっているはずだ。ここで一度慰労しておいた方が良い!」
「むむ!? 話を聞いておらへんようで、ちょっとは聞いてたんか?」
「それにだ。働き詰めのマリー先輩、そんなマリー先輩を慰労できるのは、この世に俺くらいしかいないだろ!」
ババン! そう俺の後ろに大きなテロップが輝いたのを感じた気がした。
決まったな。世界トップクラスの生産職たちが集まるお店、〈トップマリー〉のトップであるマリー先輩。この方を労い、感謝の気持ちを伝えることができるのは、もう俺くらいしかおるまい。
こんな口説き文句を言われてはマリー先輩も首を縦に振る以外の選択肢は無いだろう。
「いや、いつも苦労やら骨折りやら度肝やら抜いてくるのは、ほぼ兄さんやからな?」
「あれ?」
おかしいな。俺が思っていた返答と違う。
まるで俺が毎回マリー先輩を困らせているみたいではないか。
そんなことはないよね?
「なんで兄さんは首を傾げてるんや??」
「ふわぁ~、マリー」
「ん? おおメイリー。そっちはどうや?」
とここでマリー先輩に話し掛けてくる者がいた。
俺とマリー先輩の会話中に話しかけることができる人物なんて、1人しか居ない。
そう、メイリー先輩だ。
「こっちは全部終わった。それよりも今年も海行きたい。マリーも行こう?」
「おっと、これは思わぬ援護射撃だ! いいね。マリー先輩、メイリー先輩もこう言ってるし、行こうぜ!」
「メイリーが自分から日光の下に出たいとは、成長したんやなぁ」
「うん。去年楽しかったし」
そう、去年の海には〈エデン〉〈アークアルカディア〉のみんなの他に、マリー先輩とメイリー先輩も一緒に行ったのだ。楽しかったなぁ。
「というかマリーが行かないと私たちが休めない」
「むむ。それを言われると辛いなぁ。――私たち?」
「あそこ」
含みのある言い方のメイリー先輩が指さす方向を見ると、そこには物陰からこっちを伺う2つの影が見えた。あれは、〈トップマリー〉の従業員! それも、
「あ、バレた。やほーゼフィルス君!」
「ゼフィルス様、なかなか会いに来てくれないので私、寂しかったですよ?」
「ミリアス先輩にソフィ先輩、久しぶりだな」
そう、元〈生徒会〉生産副隊長のミリアス先輩と、元〈青空と女神〉ギルドマスターのソフィ先輩がこっそり覗いていたんだ。
どうやら俺とマリー先輩の会話中に唯一割って入れるメイリー先輩が代表で突撃してきたらしい。
「なんやみんな、こっそり聞いてからに、仕事はどないしたんや」
「だって、〈エデン〉が海に行くって聞いたらいてもたってもいられないじゃん!?」
「そうです。マリーさんは去年ゼフィルス様たちと一緒に海で遊んだとのこと。もし今年も機会があるのなら、私も連れて行ってください」
「休みでバカンスは必要だよマリー」
「分かった分かったわ。ふう――兄さん、悪いけどうちの従業員たちもつれていってくれへんか?」
「そんなのお安い御用さ! というか、俺もメイリー先輩やミリアス先輩、ソフィ先輩も誘おうと思ってたんだ。いつもお世話になってるからな」
「そんじゃ、決まりやな」
「「「わぁ!」」」
こうして〈エデン〉の慰労会に〈トップマリー〉の4人も加わることに決まる。
マリー先輩から他の従業員で〈エデン〉と深く交流を持ちたい者も海に連れていってもいいか打診されたが、これは慰労会。仲の良いメンバーの方が気が休まるだろうということでこの4人のみとした。
「そうなると、〈トップマリー〉は1日休業だな」
「まあ、元々お客はんはあまりおらへんし問題ないで」
さすがは超超超高級店。むしろ利用者が世界にごく少数なので臨時休業も思うがままのようだ。羨ましい!
「ゼフィルス君、タネテちゃんとかレンカちゃんには声は掛けないの?」
ミリアス先輩が挙手して聞いてくる。
「もちろん2人にもお世話になってるし、誘ってみるつもりだったさ!」
「やった!」
「久しぶりに生産7人衆が勢揃いですね」
「なにその心惹かれる響き!?」
生産7人衆!?
ちょっとそれ知らないんだけど!? 詳しく!
「あれ? ゼフィルス君知らない? 各分野でトップクラスの生産職に与えられた、あの異名を――!」
「異名!! 俺の知らないところでそんな異名が!?」
なんてこった。まだ俺に知らないことがあっただなんて!
これは聞き出さなければならない!
「こらミリアスったら、大げさに言ってはいけません。ゼフィルス様が勘違いされるでしょう?」
「なんや、兄さん知らんかったんか? そっちにも2人居るやろ?」
「〈エデン〉〈アークアルカディア〉に2人……! もしかしなくてもそれは!」
「せや。ハンナはんとアルルや。2人とも、生産7人衆の中でも【錬金術】系と【鍛冶】系のトップ職人として抜擢されとる」
「なんと!」
知らなかった。まさかそんな話が?
「ちなみに他の人物は!? まさかレンカ先輩にタネテちゃんも!?」
「そうだよ~。レンカちゃんは【爆師】系、タネテちゃんは【クラフター】系だね!」
先ほど声を掛けようと振られた2人も、まさかの生産7人衆だった。
やっべぇ。ちょーかっこいいじゃん! ん? レンカ先輩が【爆師】……?
あ、【爆師】か。そういえば回数回復はオマケだった。
一瞬分からなくなっちゃったのは秘密にしておこう。
「そして、残りの3人は、私たちなんです」
「な、なんだってー!? まさか、マリー先輩も!?」
「せや。【服飾】系のトップをもらっとる」
「なんと!!」
まさかの事態だ。
マリー先輩が当然のように胸を反らす。相変わらず、微笑ましい感じのロリ具合。
マリー先輩も生産7人衆の1人だったとは……!
ここまで5人判明。ということは、残り2人?
「じゃあソフィ先輩に、まさかメイリー先輩も!?」
「ちょーーーと待ったーーー!?」
ここで待ったが掛かった。
「私は違う」
「私私! 【調理】系の生産も忘れないでーー!」
「おお! ミリアス先輩か!」
うっかりミス!
大丈夫、忘れてないよ? ほ、本当だって。
ちなみにメイリー先輩は違うらしい。メイリー先輩の【コーディネーター】は【服飾】系統に分類されているからな。となると、最後はあの方しかいない。
「ソフィ先輩が最後の?」
「ええ。私は【アイテム職人】系ね」
「おお~」
なんだか凄い。誰に認められたとかそういうの一切聞いてないけど。誰もが納得する人選なんじゃ無かろうか? その生産分野で最強の生産7人衆。すごく素敵です!
ちなみに最近【木工師】系エルフが台頭してきており、8人目に添えるか協議しているらしい。【木工師】は分類上【クラフター】系に入るので、タネテちゃんのライバルとするか、分けるか、難航しているとのことだ。
いやぁ貴重な話を聞けた。
ハンナめ、こんな面白そうなことを話して無かったとか。明日朝食の席で聞いてみようと決める。
「それじゃあ、俺は今からレンカ先輩とタネテちゃんに会ってくるぜ。水着は任せてもいいか?」
「もちろん承るで! 任しときぃ! ただサイズ測ってない子は一度来てほしいで」
「オーケー言っとく!」
「またねゼフィルス君! ハンナちゃんたちにもよろしく言っといて~」
「海、楽しみにしています!」
「おう、またな~」
こうして注文と約束を取り付けて、俺はまずレンカ先輩の下へ向かった。




