#1895 〈聖界ダン〉30.5層〈座天使・ソロネ〉戦決着
〈ソロネ〉の第一形態は輪の戦車、〈輪戦車〉による『火車突撃』戦法だ。
これ、今の〈エデン〉のタンクたちでも重ね合わせた〈六ツリ〉スキルで受け止めないと止まらないほどの超高火力を持ち、轢かれたらもちろん大ダメージの上ほぼ確実にダウンするというとんでもない攻撃を繰り返すのだ。
しかも常に移動し続けているというのがかなり厳しく、こちらの攻撃もタイミングを見極めないと当たらない。
工夫が必要だ。なかなかの難易度だな。
だが、さっきも言ったようにタンクが引きつけて防御スキルを重ね合わせまくったら止められるため、止めたら攻撃を繰り返せば第一形態はさほど苦戦しない形態だったりする。
「うちのタンク陣の度胸には頭が下がる! 初手でシエラ嬢とシャロンの防御が破壊されたのを見ているのに止めに掛かる度胸は並大抵ではないぞ――『グラビティ・メテオ・エクスボール』!」
「はっはっは! それが〈エデン〉メンバーだ! 2人でダメならとりあえず全員で防御! 受け止められたならそれは受け止められる攻撃というわけだな! ――『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』!」
非常に思い切った手段だったが、おかげでこのボスも止められる存在だと分かったのは戦況に光明が見えた気分だっただろう。みんなの士気が一気に上がったからな。
それにタンク全員で攻撃を受け止めてもダメならまた別の戦法を考えるだけだ。
最終的には普通の『火車突撃』なら5人で受け止められることが判明。
こうして1本目のHPバーをゼロにすることに成功し、第一形態は無事終了。
続いて第二形態だ。
「輪が増えた?」
「三輪になったな」
第二形態ではなんと幾何学模様の輪が増えた。
〈ソロネ〉第一形態は、巨大な輪の中に天使が浮かんでいる姿をしていたが、
今度は巨大な輪が3つになり、正面から見ると携帯電話の記号の*のような姿、その中心に〈ソロネ〉がいるという形態になっている。つまり。
「まあ、こう来るよな!」
「みなさん! 固まってくださいまし!」
「360度自由自在に動きまくるぞ! 正面を向いてないからと安心するな!」
そう、第一形態の時は車輪が向く方にしか進めなかったが、*形態になったことで横回転も可能になったのだ。つまり、車輪が縦回転するのでは無く、横に転がってくるような感じの移動もしてくる。なのに〈ソロネ〉本体は姿勢を保ったままで、輪だけ縦横無尽に回転し転がるとんでも形態になったのだ。
自分の方を向いていないから大丈夫だと思ったら、いきなりこっち来た!? なんてことも起こりうるのでマジとんでもない形態。
「オオオオオ」
「エステルはヒーラーたちを連れて空から回復! タンクとアタッカーは前に出るぞ!」
ここでヤバいのはもちろん紙装甲のヒーラーなので、エステルの〈戦艦・スターライト1号艦〉に乗り込んでもらい空へと逃がす。
慣れないうちは空の安全圏を利用するのが最善だ。第二形態までの〈ソロネ〉は地上を縦横無尽に駆け巡るが、空への攻撃手段はほとんど無いのだ。
まあだからと言ってアタッカーやタンクを含め、全員が空を飛び始めるとまた〈ソロネ〉がとんでもないことをし始めるのでここはヒーラーのみ逃がすのがコツ。
ヒーラーにタゲが移らないようにタンクがヘイトを取りまくり、下に集中。
どんな機動でも最後はタンクに来ると分かっているのでそこで受け止めてアタッカーが攻撃、という〈ヨウネル〉戦や〈勇者猫〉戦でも活躍した戦法でダメージを与えていった。
「動きが滑らかに横移動するからびっくりするが、要は攻撃手段が突撃だけだろ? それなら慣れてしまえば攻撃に移るのも難しくない! 『ゼルワン・カイザーバスター』!」
「まさにその通りだ。――ルキア、いけるか?」
「うん! いつでもいいよー」
「全員タイミングを合わせるぞ! 5秒前で行く! 5、4、3、2、1――」
「『クロノス』!」
ここで活躍したのがルキア。
ルキアのユニークスキルはレイドボスさえ強制的にストップさせることができる、とんでも能力の使い手だ。
特にこういう『突進』系をメインどころか、『突進』しかしないというボスは格好のカモで、クールタイムが終わるごとにボスをストップさせてみんなで一斉攻撃を叩き込みまくったのだ。ルキアの魔法がぶっ刺さりまくる!
そんなことをしていれば2つ目のHPバーも無くなり、第二形態も終了。
ついに〈ソロネ〉の第三形態が始まる。
「輪は増えなかったが……」
「結界?」
「それだけでしょうか?」
メルト、シエラ、リーナの前で形態変化が終わる。
だが〈ソロネ〉の見た目は第二形態とあまり変わらず。
大きく変わったのは〈ソロネ〉本体を囲むように展開している3つの輪、その隙間に結界が展開していたのである。
つまり、ソロネを中心に球形の結界が発動していると思って相違ない。
「まずは俺が一当てする! 『フルライトニング・スプライト』!」
みんなが様子見する中、先手は俺。
剣先からドーンと放たれた雷の花火は、見事に〈ソロネ〉に命中して弾け飛ぶが、ダメージは無し。結界に阻まれてしまったのだ。
「あの結界、防御スキル!」
「オオオオオオ!!」
攻撃が防がれたことで〈ソロネ〉の結界は防御スキルだと誰もが察した。
カタリナたちが展開する結界にそっくりだったからな。つまり、
「つまり、結界は割ればよろしいのですね――『執事の極みで結界は全て破壊です』!」
ガシャーン!
「オオオオオオ!?」
結界破壊完了。
セレスターーン! なんかボスが守りと攻撃を兼ね備えた暴走車になりますよ、的な雰囲気を出していたのに即で割ったーーー!!
見ろ、心なしか、ボスが動揺しているように見えるじゃん! 俺には「あれーー!?」とか幻聴が聞こえたよ! 幻聴だけど!
「『ファースト・クレイジー・リボルバー』! ダメージを確認!」
「! 結界割れましたわ! 動き始める前にダメージを稼ぐのですわ!!」
「なによ、第三形態だからって大したことないじゃない! 『大聖光の無限宝剣』!」
「オオオオオオ」
シズが銃弾を撃ち込むとHPバーが減った。つまり結界はもうないということだ。
リーナの指示でドカンドカン攻撃が放たれると、結界の無くなった〈ソロネ〉は普通にダメージを受けるようになる。
こりゃダメだと〈ソロネ〉は輪を回転させ、ランダム縦横無尽運動を開始、これをされるとマジで攻撃が全然当たらない。範囲攻撃でドカンドカンやりながらダメージを稼ぎつつヘイトも稼ぐ。
「ここまでは第二形態とほぼ変わりませんわ。ですが、きっと何かあるはずです」
「その通りだリーナ。みんなも警戒を怠るな!」
そういった直後、縦横無尽に駆ける〈ソロネ〉がまた結界を張る。実は割られても一定時間で結界を張り直すことができるのだ。
ちなみに結界はセレスタンのような結界破壊スキルを使わなくてもダメージの蓄積でも破壊できるぞ。その辺もカタリナたちの結界と同じ仕様だ。結構硬いけどな。
だが、〈ソロネ〉の行動はここで終わらない。
「あ! 祭壇を登り始めたわ!」
「まさか!」
初めに〈ソロネ〉が居た祭壇。
そこはピラミッド状になっており、中心は地上から100メートル以上も上にある。
そこを〈ソロネ〉が駆け上がり始めたのである。
みんなも思ったことだろう。初手で〈ソロネ〉がしてきたあれ、『100メートル直滑降火車突撃』が来ると!
「今度こそ受けきってみせるよ」
シャロンが盾を翳しながら気合いを入れたセリフを放つ。とてもかっこいい。
初手とは違い、すでにヴァンによる〈第二拠点戦法〉を発動しており安全地帯を形成、さらに壁を増築しまくっているのだ。今度こそ受け止めてやると気炎を放つのも分かる。だが、そんなシャロンの気合いはスルーされることになる。
「な! 飛んだ!?」
そう、なんと勢いよく祭壇を登り切った〈ソロネ〉、その勢いのままポーンと空に大進出。
今まで閉じていた天使の翼が開かれ、なんと空を飛び始めたのだ。
翼の枚数は3対7枚。1枚が肩から出ている。
その翼が光ったと思うと、『直感』系スキル持ちたちが素早く反応した。
「みなさん、防御をーー!」
「ん、あれ危険!」
「シエラ、ドアを!」
「! 『プラネットドアヘヴン』!」
アイギスとカルアの声が響くと同時に俺もシエラに指示。上空に4つの巨大な丸い穴を展開。そこは天国へ向かう入り口。
〈ソロネ〉が翼を振るうと、まるで絨毯爆撃のような光の光線が雨のように降り注がんとした。全体攻撃だ。だが、その8割方はドアの向こうに吸い取られて消滅。
残り2割もそれぞれが防御スキルを使って防ぎきる。
「フィナ! 『大天使フォーム』を使い〈スターライト〉へ!」
「はい!」
「どんどん攻撃が来るぞ!」
しかも今の絨毯爆撃は単発では無かった。
上空に陣取った〈ソロネ〉が肩の翼を振るうと光の光線の雨が降る。
合計で4回も降り注いだんだ。
「被害状況は!」
「大丈夫ですわ! 退場者無しです!」
「さすがはエステルとラナ殿下ね」
〈スターライト〉よりも上に陣取った〈ソロネ〉の光の雨はもちろんエステルも攻撃範囲に入っていたが、ヒーラーの結界やエステルのスキルで逃げ切り、そっちは被害無し。途中でタンク役のフィナを行かせたことでほとんど無傷だ。
だが、もちろん〈ソロネ〉の攻撃がこれで終わるはずがない。
翼を畳んだソロネが、今度は輪を回転させながら空を駆け始めたのだ。
「空を駆ける。あれが本当の第三形態ですか……!」
「結界のせいで撃ち落とせません!」
「見て、〈スターライト〉に向かってるよ!?」
「狙いは〈スターライト〉ですわ!」
結界で覆われた〈ソロネ〉が〈スターライト〉に狙いを定めて落ちてくる。あれは命中したらマズいな。――よし、
「ラウ、一緒に来てくれ!」
「なに!?」
「『英勇転移』!」
俺は素早く近くに居たラウの手を掴むと素早く転移。
「ゼフィルスさん!?」
場所は〈スターライト〉の甲板の上だ。
見れば、ギリギリで〈ソロネ〉が命中する軌道だった。
これが〈ソロネ〉の厄介なところ、追跡機能だ。だが止めてしまえば問題は無い。
俺はラウを甲板に落とすとユニークスキルを使う。
「『完全勇者』!」
無敵モード。
そして〈ソロネ〉が命中するも、『完全勇者』のおかげで、弾かれたのは40メートル級の〈ソロネ〉の方だった。
いや、マジすげぇ光景。40メートル級の戦車が勇者のボディに弾かれたよ。
「オオオオオオ!?」
「ラウ! 今だ!」
「そういうことか! 『獣王の拳を防げる訳無し』!」
ガシャーン!
2度目の結界破壊完了。
俺の意を正確に掴んだラウが甲板から飛び出し、結界をぶっ壊したのだ。さらに。
「フィナ! 叩き落としてやれ!」
「!! 了解です! 『天落』!」
「オオオオオ!?」
それは飛んでいる相手を地面に叩き落とすスキル『天落』。
〈ソロネ〉は空を飛んでいるというより、空を道のように駆けているせいか、それとも結界を過信しているせいか、『落下防止』を持っていないのだ。
つまり、フィナの『天落』スキルは、結界に阻まれず、本体に直撃したら落下してしまう。
「オオオオオオ!?」
ズドーンと地面に叩き付けられる40メートル級〈ソロネ〉。
すると輪の中に居る〈ソロネ〉はダウンしていたんだ。
「総攻撃だーーー!!」
「やってやるわー! 『大聖光の無限宝剣』! 『神の天誅』! ほらマシロもよ!」
「はい! 『天光』! 『フォトンノヴァ』!」
〈スターライト〉の甲板からもヒーラーの攻撃が降り注ぐ。
これは相当なダメージになったな。
「シエラ、ラクリッテ、トモヨ、モニカ、キキョウは祭壇の前に陣取れ! 登らせるな!」
「! そういうことね、了解よ!」
ダウン終了後は祭壇封鎖。
そう、〈ソロネ〉は高度を保つために祭壇を駆け上がらないと空を飛べないという特徴がある。
そこを突き、祭壇の前にタンク集合。
案の定祭壇目掛けて突撃してきた〈ソロネ〉だったが、1度見た戦法を〈エデン〉のメンバーが許すわけも無い。タンクたちが受け止めて上らせない。
そのまま第二形態の時のようにじわじわ削られ、時間経過で張られた結界はなんかよく分からない感じで破壊され。
ついに3つ目のHPバーもゼロになってしまうのだった。
「オオオオオオ…………」
そして、膨大なエフェクトを発生させて沈んで消えれば、当然のように――4つの〈金箱〉がドロップしていたんだ。




