#1890 5層守護型ボスがまるでレイドボス・連型!?
〈聖界ダン〉の攻略法が分かればあとは早い。
そう、ここはほとんどレイドボス・連型みたいな天使モンスターたちが襲ってくるダンジョンなのだ。
まあ、予想はできていたけれどな。こっちも戦力の数が重要となる。
戦力が少なければ押し負ける、というか突破はできない。
天使たちを突破し続けないと先へ進めないダンジョン、それが〈聖界ダン〉だ。
もうお察しかもしれないが、〈猫界ダン〉が猫世界だったように、ここ〈聖界ダン〉は天使の世界だな。
罠は少ない、というか罠アイテムに関しては皆無。正々堂々と正面から打ち破ることを推奨する、それが天使。
シンプルではあるが総力戦、戦力がダイレクトに響くダンジョンなんだ。
自分たちがどれだけ育成に力を注いできたか、それが試されると言っていい。
俺たちは1層の巨樹、2層では大きな石のモニュメント、3層では巨大な天使の像、4層では巨大な本など、ゴールの形は違えど、神聖な何かを守る天使たちを相手に制圧――ではなく突破し順調に階層を更新していった。
そして5層に到着。
「5層は守護型ボスがいるところだけど、なるほどね。こうなるわよね」
「『看破』! あれは〈大天使級・メタトロン〉と言うそうです」
「あれって天使たちが大天使に率いられているってことよね? もう! ただの守護型ボスがレイドボス・連型みたいになってるじゃないの!」
ラナの言葉がまさに的確だった。
守護型ボスってどこに出るの?
答え、階層門のすぐ側だよ。
つまり、階層門の周りにたくさんいる天使の中にボスが混じっているということだ。
それもうレイドボス・連型とほとんど変わらないんよ。報酬は守護型ボス級だけど。
「でも数字は2よ」
「2パーティでこの数の天使を相手にしろと言うのでしょうか?」
シエラの言う通り、〈メタトロン〉のアイコンに書かれている数字は2。
これまで通りなら、2パーティでボス戦せよ、という意味だが。
率いられている天使が多すぎる。10人ではとてもではないが難しい。
まあ、不可能ではないが。
とはいえ、その考えは若干違う。
「いや、アイコンがあるのは〈メタトロン〉だけだ。ここは役割分担だな。天使を相手にするメンバーとボスを相手にするメンバーで分かれるぞ!」
「! 確かに、天使にはアイコンは付いていませんわ!」
「眷属では無いから天使を攻撃するのは他のメンバーでも可能ということね。フォローが重要なボス戦ということ?」
俺の言葉にハッとするリーナ。気が付いたな。
そう、実はボス戦をする2パーティ以外でも天使に攻撃することは可能だ。
つまり、他のメンバーでボス戦中の2パーティを援護せよ、天使にボス戦の邪魔をさせるなというのがコンセプトなんだ。
シエラの言葉通りだな。
ということで、早速パーティを選択する。
「最初は1班と2班で行こうか。――シエラ、おそらくみんな慣れてない最初はじゃんじゃん天使が押し寄せてくるだろう。頼めるか」
「抜かせはしないわ。任せて」
1班のリーダーはいつも通り俺、2班のリーダーはいつも通りシエラだ。
今回は初めてのボス戦ということでシエラに頼んだ形。
1班は俺、ノエル、ラクリッテ、エフィ、マシロ。
2班はシエラ、メルト、ミサト、ノーア、クラリスだ。
「ノエル、バフは切らさないように、今回ラクリッテはボスをメインに頼むぜ。もし天使の方が過剰に来てしまった場合は俺とタンクをスイッチ。シエラと一緒に天使を引き寄せてほしい」
「了解だよ~」
「は、はい! 頑張ります!」
ラクリッテがボスタンク、シエラが抜けてきた天使を抑えるという布陣だ。
シエラを信用していないわけではないが、イレギュラーが起こらないとも限らない。ボス戦中に大量の天使たちに襲われたら大変だ。
故にバックアップをラクリッテに頼んでおき、その時は俺がボスを相手にすることになる。
「まあ、メルトもいるし、問題無いとは思うけどな」
「ああ。こちらに来る天使は全て叩き落とそう」
2班にメルトを入れておいたのはまさにこのため。
シエラの防御とメルトの重力があればまず天使は近づいては来られまいという判断。今回の2班は防御役だな。もちろん、ノーアとクラリスも入っているので、アタッカーもできるし、レジェンド級ドロップも革命で狙える布陣となっている。
今回の〈聖界ダン〉では2班が引っ張りだこになる予感だ。
「それじゃあ行くぞ、フォロー頼む!」
「「「「おおー!」」」」
こうしてまず俺たち1班と2班が進み、聖域の境界を越えると、天使たちが一斉にこっちへ向く。〈大天使級・メタトロン〉も同じだ。
「ノーア! 〈メタトロン〉にアタック!」
「『投擲必中』ですわ!」
ノーアの〈四ツリ〉スキル『投擲必中』はその名の通り必中だ。
ノーアが投げた大剣は、〈盾の天使〉を避け、狙い違わずボスに命中する。これで2班はボス戦に入ったな。次は1班の番。
「ノエル、ラクリッテ、頼む!」
「オッケー! 『滅びのメロディ』!」
「ポン! 群がるは幻の甘い夢の蜜! ――『甘夢幻二塔盾』!」
ノエルの〈六ツリ〉スキル『滅びのメロディ』は〈カウントダウン即死〉の全体攻撃だ。20秒歌い続けると、聞き終わったモンスターが〈即死〉する。
その間ノエルへの敵意が上がって狙われやすくなってしまうが、そこはラクリッテがカバー。リスクが高すぎるが故にスキルLV1でもかなり高い〈即死〉効果を持っている。
ボスには100%レジストされてしまうのだが、ボス戦に入るなら全体攻撃のこれが有効。ついでに周囲の天使にかなり〈カウントダウン即死〉が入ったので一石二鳥だ。
「「「「―――!」」」」
もちろんラクリッテの甘い蜜の塔だけではごまかせず、魔法の雨と天使部隊が襲ってくるが。
「わたくしたちはゼフィルスさんたちをフォローですわ! モニカさん!」
「この雨は私だけで十分でやがりますよ――『大強欲吸覇城占盾』!」
モニカがこれまでと同じ戦法で魔法の雨を防ぎ。
「天使たちのタゲはこちらで貰っておきます――『神敵認定』!」
「それ天使にはしちゃダメな挑発スキルなんじゃないかな?? 私もするけどさ! ――『エル・フォース』!」
フィナやトモヨが〈六ツリ〉の大挑発スキルで天使たちのタゲを取ってくれたな。
いや、トモヨの言う通り、フィナの挑発スキルは天使特効なんよ。天使たちが愕然とした顔をしていたからな。あ、〈カウントダウン即死〉の時間が来てそのまま光に還った天使が大量に……南無。
「メタ!」
だが、ボスの〈メタトロン〉はすでに1班と2班と戦闘中になっているため、外側の大挑発スキルに全く興味が無い様子だ。
これも結構厄介なところで、これまでのパーソナルフィールドの結界とは違い、一応他の班の攻撃も〈メタトロン〉には届くのだが、効果が全く無くなってしまうのだ。ここ要注意。たとえサチ、エミ、ユウカの超強力コンボ攻撃をぶっ放したとしてもノーダメージ、ノーノックバックで切り抜けるからな。
そしてリーナも即狙撃してそのことに気が付いたようで、天使への戦いに集中している。
「メタ!」
〈メタトロン〉は身長3メートルと、最上級ダンジョンのボスにしてはかなり小柄で、盾無しの片手剣を持っており、ラクリッテに一気に接近して攻撃を繰り出していた。
「ポン! ポン! ポン!」
「行くぜ――『勇者の剣』!」
「回転率上げていくよ~『音速リズム』♪」
「上等――『アルティマス・グラディウス』!」
「回復します! 『エクストラハートヒール』!」
ラクリッテが強力なヘイトを稼ぎつつも両手盾という強固な盾で剣を捌く。
かなりの威力と早さだが、マシロの回復を得ているラクリッテには大きな問題は無い様子だ。ポンポン言いながら盾で弾いている。硬い。
「結構天使が来るわね――『シールド・テラ・クワトロ』! 『クイーンオブカバー』! メルトはあちら側をお願い」
「任された――『アーカーシャ・グラビティ』!」
「シエラさん回復するよ~『ヘブンヒール』!」
「私たちはボスを相手にいたしますわよクラリス! 付いてくるのですわ!」
「待ってくださいお嬢様! あ、突っ込まないで、私を置いていかないでください!」
「おお! 良いところに来てくれたクラリス。ちょっと俺たちを乗せて飛んでくれ、〈メタトロン〉が上空に飛んで行っちまったんだ」
「行きますわよクラリス!」
「できればお嬢様には地上に居てほしいのですが、致し方ありません。『千剣の翼モード』!」
ラクリッテに抑えてもらい、結構なダメージを負うと、〈メタトロン〉が空を飛ぶ。空を飛ばれると近接攻撃メインのメンバーでは厳しいが、こっちにはクラリスがいるのだ。
ノーアと一緒に『千剣の翼モード』に乗せてもらい追いかける。
〈メタトロン〉にはもう1つ厄介な特性があるのだ。
「エフィ! 抑えナイス!」
「『フォトン・エルソード』! 『フォトン・エルソード』! 『フォトン・エルソード』! 『フォトン・エルソード』! こっちも楽しかったから大丈夫」
空へ飛んでいってしまった〈メタトロン〉は好きにさせていると周囲の天使へ向けてHP回復魔法を飛ばしてくるので、そうはさせないためにエフィに『大天使フォーム』させて送り込んでいたのだ。
おかげで〈メタトロン〉は一度天使全体回復を使用したあとは、エフィの攻撃に反撃で応じ、回復を使えていない。
「ゼフィルス様、天使たちが迫って来ています!」
クラリスの警告通り、天使たちが〈メタトロン〉のフォローへ駆けつけるが、それはもちろん知っている。これが〈メタトロン〉の厳しいところで、ある程度HPを喪失すると天使を嗾け、自分は空中でヒーラーに徹する特性があるのだ。
もちろんコレまで通り、守護型ボスの〈メタトロン〉を倒さないと階層門は開かないので、空中にいる相手に有効打が与えられるメンバーが必須になる。だが、問題は無い。
「大丈夫だって、こっちにはシエラが居るんだ!」
「『カバーシールド』!」
そう言って割って入ってきたのは――小盾の1つに乗ってやってきたシエラだった。
シエラは〈六ツリ〉スキル『盾乗り空中移動』で空中移動が可能。
おかげで天使たちの攻撃に割り込んだというわけだ。
「こっちは任せて」
「頼んだシエラ! ――クラリス、突っ込ませてくれ!」
「! 分かりました! 『千剣の翼・シャインセイバーミレニウム』!」
「腕が鳴りますわね!」
「メタ!」
クラリスが光の翼を顕現して突っ込むと、反応した〈メタトロン〉が反撃にスキルの斬撃を放ってきた。
だが、もちろん予期していたノーアがカウンターで受け止める。
「『ミョルニル』!」
相手のスキルの力を自分の力に変え、カウンターのハンマーが〈メタトロン〉にズドンした。
そんな〈メタトロン〉をかばおうと〈盾の天使〉たちが割り込んで来ようとする。しかし。
「今だ! 『インフィニティ・バニッシュセイバー』!」
「いきます!」
ズッッッッッドンと、俺の全体攻撃が轟き、周囲の天使もろとも〈メタトロン〉に大きなダメージを叩き込むと。そこへクラリスの光の翼が直撃。さらに、
「トドメいただき――『ジェットバーストフェニックス』!」
「メ―――!」
最後はエフィが美味しいところを持っていく。
火の鳥を纏った高速の突撃スキルで天使たちがかばう余裕もなく強力な攻撃を受けた〈メタトロン〉はそのままHPをゼロにしながら墜落してしまったのだった。
だが、これだけではまだ終わらない。
「『ドロップ革命』ですわ!」
「おっしゃ! ボスは倒した! 続いて周囲の天使も殲滅するぞ!」
ボスを倒しても防衛する天使がまだいるというのがこのダンジョンの特徴。
これでは宝箱を開けることもできない! 全部殲滅してやんよ!
とはいえすでに多くの天使は別の班メンバーが倒していたため、俺たちが参戦したあとは5分も掛からずに5層の巨大な柱のような聖域を制圧したのだった。




