あけおめぇ
幸せいっぱいなクリスマスのあと、私はすぐに実家に帰ることになった。両親が早く帰れとうるさいのだ仕方ない。
実家に帰るのは憂鬱なことだが、クリスマスの浮かれ気分をひきずっていた私は、なんとかしばらくは耐えることができた。
年越しそばは無駄にこだわりの有る高級なやつで、美味しいんだけど私としてはカップ麺で十分なのになと思う。
前世ではごろごろしながらカウントダウンを見て、新年を迎えると同時にメールを友達に送信。あとは良い夢見れますようにと祈って寝る。そして翌日は昼過ぎまで惰眠を貪るといった過ごし方だった。
しかし今は違う。
神宮寺家では早めに蕎麦をいただいたあとは、神宮寺家専用の除夜の鐘をつきにいく。そして先祖が奉られた御堂で年を越して、新年の挨拶とより一層の繁栄を祈る。それから帰って一旦就寝。といっても寝る時間はほとんどない。
というのも正月は親戚一同が集まる新年会がある。
本家である我が家は会場になるため準備が大変なのだ。使用人さんが会場の設置やらはやってくれるけれど、振り袖を着て髪もメイクもばっちり決めて、ぞくぞくと集まる親戚連中に挨拶しなければならない。
異様に早く来る親戚もいるので、油断はできない。親戚といっても皆仲が良いわけもなく、遠い遠い分家もいて、ほとんど会ったことのない者もいる。本家のことなどどうでもいい者もいれば、本家にとってかわろうと野心を持っているものもいる。能力があるならばとってかわられても私は良いと思っているが、両親は気に入らないようだ。
本当に朝からめんどくさい。
もちろん新年会だから酒も出るのだが、スタートから酔っぱらうおじさんとかがいる。酔っぱらうと女の子に絡みにいって本当に迷惑である。基本的には振り袖着用なので、一人では絡まれたら逃げ切れないのだ。
ただ一つだけ、この新年会には良いことがある。
お年玉を貰えることだ。
皆結構稼いでるからなかなかの額が貰える。
しかもこれは基本的に没収されない!常にじり貧な私にはありがたいことである。まあでも大半は貯金しますけどね。将来のことを考えると貯金は大事。
私と同世代の子も何人かいるが、そちらも親世代と似たようなもので、かかわりあいになりたくないもの、本家に取り入りたいもの。
取り入りたいやつの対応が一番めんどくさい。私に隆臣がいたとしても口説こうとしてくる。だいたいそういうやつは楽してやろうってやつが多いので果てしなくめんどくさい。野心のあるやつは、私のことなど関係なく、むしろ父を失脚させてやれば良いと言うと、本当にそれでいいのか確認したあとそちらに狙いをシフトチェンジしてくれたので楽なものだ。
男はそれでいいが、女はまた違う。
ねちねちと嫌みを言って下さる。特にいきおくれや出戻り組だ。結婚してなくてもしっかりと一人立ちしている人はいきおくれではない。結婚したいのに出来ない人のことを私はいきおくれと表現させて貰う。
なんで自分が嫁に行けないのか、戻ってきてしまったのかを理解しようとしない彼女たちは、その苛立ちを婚約者のいる私にぶつけてくるのだ。学生のうちからなんて早すぎない?だの、安心していてはダメよ飽きられてしまったら終わるから等、どうでもいいアドバイスをいつもいつもくださる。
そして隆臣が好きな女の子は学園に限らず親戚にもいる。
その子には毎回嫌みを言われるが、正々堂々としているので、いっそ清々しいがアホの子なので、じゃあ私の代わりに隆臣と婚約者にとは進められない。嫌いじゃないんだけどね。
夜になるにつれ本格的な宴会となるので、未成年の者たちは新年会の会場から一足早く退室する。私は扉の前に立って、全員が使用人に案内されて、ゲストルームへむかったのを確認してから自室に戻る。
部屋に入って鍵をかけたらそっこうで振り袖を脱ぐ。
重たくて苦しかった。
適当な部屋着に着替えて着物を皺にならないように吊ったあとは携帯を確認する。皆からのあけおめメールに笑顔になる。
初詣とか一緒に行けたらいいんだけど、家の予定が目一杯つまっている。明日は親戚総出で初詣だ。神宮寺家の専用のお社があるのだ、意味がわからない。
そのあとはカルタ会やらなんやら平安貴族かみたいなことをしたりとめんどくさい。そんなに旧家でもなければ京都とかそういう関係でもないんだけどね。最初はどういう目的だったにせよ、今はただの恒例行事でしかない。
成人式の前に、成人祝いをしたらやっと怒濤の恒例行事が終わる。
その頃には学校もはじまるというものだ。
少し緊張している。
百合からのメールで、百合の叔父と隆臣の両親に挨拶をしたことを聞いている。私のことがあるので、もちろん両家とも簡単にはいかなかったようだ。二人の気持ちを聞いた上で、私にきちんと話をつけることが、二人の仲を認める条件となったらしい。
まあ私というよりは神宮寺家なんだろうけど。
隆臣からも大事な話があるので時間を作ってくれと言われている。
きっと婚約破棄の話をされることだろう。長かった、ここまで来るのに一年。いろんなことがあったし、悩んだこともあった。もう少しでそれがすべて報われるのだ。
ゴールまであと少し。




