悲願成就。
私と百合と隆臣の三人で、とあるレストランの個室にいた。
隆臣から大事な話があるから時間を作ってくれとと言われて、今日のよき日に誰の邪魔も入らないここで、話をすることになった。
内容は私にはわかりきっているのだけど、わかっていない体でいなければならない。
私も少し緊張していたし、二人も緊張しているようだった。
食事をするしぐさがぎこちなかった。
どうでもいい他愛のない話をして和ませようとしても意味はなかった。
食事を終えて、落ち着いたあと本題に入る。
「麗香、きみに謝らなければならない」
「何を?」
「きみという婚約者がいるのに俺は、百合のことが好きになってしまったんだ」
隆臣が真剣な顔で話す。
うん、知ってる。
どうでもいいけど真剣な時ほど笑いが込み上げてくることってない?今まさに私がそれなんだけど。
百合が緊張した面持ちで私を見ている。
そんな不安そうな顔しなくていいのに。
「そう、で?」
「きみとの婚約を破棄したい」
キターーー!!!
そうよその言葉を私は待っていた!よくぞ言ってくれた!えらいぞ隆臣くん。褒めてつかわす。
そんな感じで内心はお祭り状態なんだけど、そんなことを悟られるわけにはいかないから、なんとかにやけるのを耐える。
さて、答えは出ている。
それをどう伝えるか。二人が気にやまないようにしたい。
「わかりました。破棄して下さって大丈夫です」
「あの、本当にいいんですか?」
百合がおずおずと聞いてくる。
私はそれに、にっこりと笑って答える。
「私は結婚は好きな人とするものだと思いますから。親に言われるまま婚約者という立場にはなっていましたけれど、私は隆臣さんにそういった感情はありませんでしたし」
隆臣が少しむすっとした顔をする。
特に恋愛の要素がなかったとしても、一応婚約者だった人間に興味なかったと言われたらちょっと複雑だろう。
「隆臣さんがダメなわけではないんです。隆臣さんは初対面の印象はあまりよくなかったんですけど、最近は好感を持てますから」
あっ余計へこました。
百合もちょっと驚いたような複雑な表情だ。
「隆臣さんが変わったのは百合さんのおかげなんでしょう?私では無理でしたわ」
だって興味なかったからな。
二人は少し照れたような顔をする。
「私は二人はお似合いだと思いますよ。きっと相性がいいんです」
特に修羅場になることなく丸く収まったことで、少しホッとしたらしい二人の表情からは、緊張の色はなくなっていた。
「ありがとう。また後日、神宮寺家のほうに正式な話がいくと思う」
「はい。きっちりと両親には言い聞かせておきますから」
二人が不思議そうな顔をする。
あれ?変なこと言ったか?
「それでは、本日はこれでお開きかしら?」
「そうだな、本当にありがとう」
「いいえ。百合さんを幸せにしてあげて下さいね」
立ち上がって隆臣と握手をする。
百合はそれをにこにこと見守る。
そのあと二人が出ていこうとして、百合が少し悩んだあと私にこっそりと聞いてきた。
「あの、もしかして他に好きな人がいらっしゃるとか?」
「え?ないない。ありませんよ?私はそもそも恋愛に興味ありませんから」
なんでそんなこと聞かれたのかわからないけどビックリして一瞬、素で返してしまった。ほんとなんで聞かれたんだか。
このあと実家のほうに正式に婚約破棄の話がいって、実家に呼び出されて両親と話した。
母親はしきりにそれでいいのか聞いてきたけれど、私は問題ないと返した。たぶん母親は私が嫌がったら、娘がショックを受けて嘆いていますから考え直してとでも言うつもりだろう。
母親は私が隆臣と結婚することが一番の幸せだと信じて疑っていない。父親は隆臣の家の西園寺と縁戚になるメリットしか考えていない。でもさほど真剣に考えていないので、ダメならダメでどうでもいいと思っている。
そうやって無事に婚約は破棄されて、私は婚約者ではなくなった。
自由だ!
そろそろ百合には私のことを話してもいいかもしれない。
麗香と友美が同一人物であることを。
でもとにかく今は悲願成就のお祝いだ。
翼ちゃんと由森に連絡して、細やかなパーティーを開くことにした。
喜びでいっぱいでいろんなことを忘れていた。
たとえば取り巻きたちのこと。




