第二十八話 64式小銃
四日目に入ると俺達は武器を
初めて搬出する事になった。
その武器というのは
「64式小銃」だった。
朝のラッパでいつも通り
定時刻に起きるとこの日は
明らかに点呼に
行く時間が早くなっていた。
一区隊の俺達は他区隊より
先に着いたのだ。
俺はその事に驚いていた。
いつも遅い三班ですら
早く感じたからだ。
無事に点呼が終わって
部屋に戻って朝の準備を始めた。
この時も昨日まではゆっくりと
ベットメイキングを
していたのだがよほど
昨日の事が効いたのか?
皆、無言で早々と
ベットメイキングに取りかかって
早いやつは
0630(まるろくさんまる)の
朝食までに終わらせる者が
出てくるほど動作が機敏になっていた。
かくゆう俺も
もう反省を受けたくないと思い、
動作を早くして
ベットバディと協力して
ベットメイキングに取りかかった。
いつも通り、
朝食を食べ終え、部屋に戻ると
皆、我先にと朝の準備を始めた。
朝の準備を終えると
今度は皆で清掃を始めた。
その時に内務の上岡が
取り締まりから聞いた事を
俺達にこう話した。
「今日から銃、触れるみたいやで。」
上岡はそう笑みを
浮かべながら俺達に話したのだ。
清掃が終わると
今度は屋上に集められた。
どうやら、
「自衛隊体操」を行うみたいだ。
自衛隊体操の内容は
以下の通りからなる。
①その場駆け足の運動
②脚前腕斜上振
③腕回旋膝半屈
④腕水平振側開
⑤首の運動
⑥片膝屈伸
⑦胸の運動
⑧体の前後屈
⑨体の前屈前倒
⑩体の斜前屈
⑪その場跳躍
⑫統制運動
⑬体の側屈
⑭体の前屈前倒振
⑮体の回旋開脚跳躍
⑯開閉跳躍
⑰腕前上脚
⑱後振腕屈伸
⑲膝半屈
⑳腕側振もも上げ
そして、最後に深呼吸をする。
簡単に言うと
自衛隊バージョンのラジオ体操である。
各区隊がそれぞれ、
別の場所で行う事になり、
一区隊は屋上にする事になったのだ。
助教以外の隊員達が
各班で一列縦隊で並び終えると
入山班長が俺達の前に
立ってこう言った。
「整頓する!」
「気をつけぇぇ~~!」
休めの姿勢でいた俺達に
気をつけの姿勢にするよう
命令する入山班長。
「各自、体操が出来る間隔に広がれ!」
入山班長がそう言うと
俺達は国旗がある方の
隊舎側の端から屋上の入り口の
手前まで広がって並んだ。
俺達が並び終えると入山班長が
こう言った。
「まず、班付達がやるから見とけ!」
「はいっっ!」
入山班長の言葉に俺達は
そう答えると班付達の
自衛隊体操をじっくりと見ていた。
俺達は一通り見終えると
入山班長がこう言った。
「今のが自衛隊体操や。」
「今日から毎日やるから覚えておけよ!」
「はいっっ!」
入山班長の言葉に
元気よく答えた俺達。
「気をつけ!」
入山班長がそう言うと俺達は
その場で前を向いて気をつけをした。
「その場駆け足の
運動からよぉ~~い……」
「始めっっ!」
入山班長がそう言った瞬間に
自衛隊体操が始まった。
俺達は初めて
自衛隊体操を行ったのだが
すぐに疲れて息が上がっしまった。
「はぁ、はぁ、はぁ……。」
「もう一回!」
「はいっっ!」
俺達は息が上がっていたが
国旗掲揚で行う時間の
ギリギリまで行った。
その後、整頓し直してから
グランドに向かうと
国旗掲揚を行った。
その後すぐに、
区隊長から話があった。
「休めっっ!」
気をつけの姿勢で区隊長の方を
見ていた俺達は区隊長の命令で
休めの姿勢になった。
「今日から64式小銃って
いう武器を搬出する事は
班長達から聞いているな?」
「はいっっ!」
俺達は嬉しそうに
大きな声で返事をした。
「やっとお前達は
武器を触れるんだ。」
「良かったな?」
「はいっっ!」
俺達が元気よく答えると
区隊長がこう言った。
「後は佐藤班長、よろしく。」
区隊長がそう言うと俺達の前に
佐藤班長が話始めた。
「はい!」
区隊長の問いかけに小さな声で
返事をする佐藤班長。
「今日から64式小銃の
分解結合をやってもらう。」
武器が触れるんや!
やったぁぁーー!
俺達は皆、
そういった嬉しさでいっぱいだった。
小さくガッツポーズしている
同期も何人かいた。
「エアコンが聞いた所でやるんや。
お前ら、嬉しく思えよ!」
堤下班長が佐藤班長の
横に立ってそう言った。
「はいっっ!」
俺達が元気よく答えた。
涼しい所でやれるんや!
そんなん最高やん!
そんな嬉しい気持ちで
いっぱいだった俺達は
早く64式小銃を触りたくて
うずうずしていた。
そして、佐藤班長の話が終わると
すぐに佐藤班長の引率の元、
64式小銃が置いてある
本管隊舎に向かった。
本管隊舎の前に着くと
佐藤班長がこう言った。
「今から言う事は
これから武器係がするから
覚えておくように。」
「はいっっ!」
佐藤班長の言葉に
そう返事をした俺達。
すると佐藤班長は村中班付と
向かい合うとこう言った。
「64式小銃、34。
搬出よぉ~~い!」
「64式小銃、34。
搬出よぉ~~い!」
「搬出!」
「搬出!」
佐藤班長の言葉に村中班付は
オウム返しをしてそう言った。
この動作は申し送り事項と言って
何を何個搬出するかを
確認するために必ず必要な動作なのだ。
佐藤班長と村中班付の
実演が終わると村中班付が俺達の横にいった。
すると、佐藤班長が俺達にこう言っていた。
どうやら、これから武器庫を見せて、
格納する時に同じ事をするから
先に武器庫へ俺達を案内した。
64式小銃は必要な分は
既に搬出しているので大丈夫だと言うのだ。
そして、佐藤班長の話が終わると
佐藤班長、一班の取り締まり、
一班の内務の順に
本管隊舎の裏口から中に入っていった。
本管隊舎の裏口から中に
入っていくと俺達は四階にある
武器庫に向けて階段を昇っていった。
階段を一段ずつ上に昇っていくと
こんな声が聞こえてきた。
「お疲れ様です!」
上の階段の方から同期が誰かに
挨拶する声が聞こえてきたのだ。
「お疲れ様です!」
「お疲れ様です!」
だんだんとその声が
近づいてきたのだ。
見てみると
本管中隊の人だったのだ。
俺もすぐさま、敬礼した。
「お疲れ様です!」
俺が元気よく
敬礼しながら挨拶をした。
「うっす!」
慣れた言葉で
軽く返事をする本管中隊の隊員。
何回かそんなやりとりが
あって四階の武器庫に着くと
前の方からこんな合図が送られてきた。
「静かにしろ。」
俺も前の同期から合図が
送られると後ろにいた同期に
そう言って合図を送った。
武器庫の隣では本管中隊の
隊員達がデスクワークをしていた。
そのため、「大きな声を出すな!」
という助教達の合図だった。
武器庫に入ると背の順で
順番に小銃をゆっくりと見ていった。
武器庫を見終え、本管隊舎から出ると
いつもの駆け足で
プレハブ小屋の第一教室前に着いた。
すぐに「別れ!」の号令で
部隊を解散すると
第一教室の中に
入っていくのだった……
第二十九話へ続く……
64式小銃は自衛隊に入隊すると
初めて扱う小銃です。
関東などの部隊ではいきなり、
89式小銃を扱う部隊があると聞きました。
かなり年季が入っていましたが、
私が64式小銃を使った時は
まだ現役で扱えた事に驚いていました。




