表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/21

21・プールですよ!

 青い空!白い雲!

 夏本番にはまだ早いけど、プール開きには絶好の気候です。

 そろそろプールの季節だなぁと思っていたら、りおちゃん一家に誘われました。

 家族で少し遠くのレジャー施設まで遊びに行くんだとか。


 一緒にどうですかと誘われたわたしは、もちろん頷きましたとも!

 残念ながら母は仕事のため不参加。

 母イチオシの水着をリュックに詰め、いざ出発!


「みあちゃんー!!」


 玄関を開けた途端、りおちゃんが突撃してきた。

 予想していたのでガッチリと受け止める。

 いつものわたしと思うなよ!


 ぐりぐりとお腹にすり寄るりおちゃんの頭をなでなでする。猫っ毛がふわふわで気持ちいい。


「あらあら理央、ミアちゃん困ってるわよ」

「理央ちゃんママ、今日はよろしくお願いしますね」

「いいえー。ミアちゃんが一緒だと理央が大喜びなんですよ」


 頭の上で母同士の世間話が始まるけど、いつものことです。


 今日は、りおちゃんパパと初対面です。

 車で待っていたパパさんは、爽やかなお兄さんでした。

 若ーい! 聞いたら、御年28とのこと。五歳サバを読んで言われても納得してしまいそう。


 子供組はファミリーカーの後部座席でおやつを交換。

 自分では選ばないお菓子もあって、うきうきしていたり。

 何だか最近、もやもやすることが多かったので、りおちゃんの全開の笑顔を見ているだけで気分が明るくなります。

 やっぱり幼児は可愛いなぁ。りおちゃんは特別美人さんだけどね!


 おやつを食べていると、すぐににプールに着きました。

 温泉も併設されているという施設は大きくて、わくわくします。

 ママも一緒に来られたら良かったのにね。


 りおちゃんママと一緒に着替えて、いざプールへ!

 どーんとそびえるスライダーに、テンションが上がります。

 いやー、こんな大きなプールに来たのっていつ振りだろう。


 りおちゃんパパの号令の下、準備体操を済ませたわたしとりおちゃんは、プールに突撃ですよ!

 飛び込んだ水は程よい冷たさ。快適な温度が保てるのは、屋内プールの最大のメリットですよね!

 はしゃいでいると、りおちゃんに「みあちゃん」と腕を引かれた。

 振り返るや、顔にパシャンと冷たい衝撃。水飛沫の向こうでりおちゃんが笑っている。


「やったなー!」

「きゃー!」


 しばらくお子様向けの浅いプールで水を飛ばしあって遊び、プールサイドでひと休憩。

 りおちゃんパパが買ってきてくれたおやつセットは、子供が喜ぶおまけ付きでした。

『ゴー! アニマルダー!』のおもちゃを見て、りおちゃんが顔を輝かせている。しかし問題はおもちゃがひとつしかないところでしょう。

 りおちゃんパパは、りおちゃんママにこっそり怒られていました。


『ゴー! アニマルダー!』はわたしも結構好きだ。

 かなた君との繋がりはともかく、こっそり結城英を応援しているわたしとしては心が揺らぎます。

 だって実物に会ったら、カッコ良かったんだよ!

 笑顔が爽やかだったんだよ!

 今年のクリスマスはグッズが欲しいと言おうかな―と思っていました。


 ……まあここは、大人になるとしましょう。

 わたしの方が精神的に年長者(としうえ)ですし。

 りおちゃんの、この期待でキラッキラの笑顔を見たら、煩悩が浄化されていくようだよ!


「りおちゃん、どうぞ」


 おもちゃを差し出すと、りおちゃんの表情が輝きます。

 しかしフッと首を傾げた彼女は両親を見上げた。


「みあちゃんのは?」


 りおちゃんパパが、うッと怯んでいます。だから言ったでしょう、と困り顔のりおちゃんママ。

 両親の顔色を正しく読んだりおちゃんは「ないの?」と迫ります。

 うるうるした瞳に罪悪感を苛まれている模様。

 りおちゃんが手元に目を落とした。

 きゅっと眉を寄せた後、りおちゃんは握った手を差し出してきました。


「あげる!」

「えっ」


 わたしは差し出されたおもちゃとりおちゃんの顔を見比べた。

 りおちゃん、アニマルダー大好きだよね?

 差し出す手がプルプルしてますけど! 目もうるうるしてますけど!


「みあちゃんだからいいの!」

「……ッ」


 りおちゃん一人っ子だから、普段おもちゃを誰かに譲ることなんてないと思う。

 それがこうして譲ってくれるなんて。

 渡されたおもちゃが、じんわりと温かく感じた。


「ありがとう」

「うん!」


 ミアも一人っ子だから、実はおもちゃを譲って貰うのは初めてかもしれない。

 あー、何だか鼻の奥がつんとする。嬉しいような、こそばゆいような。

 こうやってみんな大人になっていくんですね。


 スライダーや温泉も満喫しての帰路、気がついたら車の中で寝ていた。何だか重いなと思って見ると、わたしの膝の上で腰に抱きついたままりおちゃんが寝ていた。

 健やかな寝息をたてている頭をぽんぽん撫でると、猫みたいにぐるると唸ってすり寄ってくる。


 楽しかったな。また来れるといいな。

 そう思いながら、あくびをひとつ。眠くなっちゃいました。

 もう少し寝ようかな。


 うとうと眠りの中に引き込まれていったわたしは、前の席のりおちゃんの両親が頻りにカメラのシャッターをきっていたことは知りませんでした。

 それを知るのは、もっとずっと後の話。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ