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「俺は絶対にプロになるぞ!」
大昔の、何年前かも思い出せない記憶。
まだ思いついた将来の夢ってやつを大きな声で語ることができた純粋な頃――いや、クソガキだった頃の記憶だ。
あの頃の俺は自分の輝かしい未来を信じて疑わなかった。何の困難もなく未来に手が届くと信じ切っていた。今にして思うと頭にゲンコツを落としたくなるものだが、
「絶対なれますよ! あなたなら!」
「ああ、間違いない! だって、わたしが聴いた中で一番上手いもん!」
俺の語る無謀な夢を、笑って肯定してくれる少女達がいた。
仲間がいたからだろうか? 俺は尚更自分の未来を信じ切っていた。
「ああ、俺はなるぞ! お前達と必ず!」
「はい!」
「うん!」
俺達はずっと笑顔で夢を見ていた。いつまでも見ていけると思っていた。
「んん・・・・・・?」
随分と懐かしい夢から誰かの声で起こされる。
「パパ、またこんなところで寝てるー」
目の前には六歳になる俺の娘――重音がいた。
我が娘ながら、いや、母親や周りの影響か活発な性格に育って。いつもツインテールに結われた黒い髪を揺らしてあっちこっち駆け回っている。今日はこの部屋が遊び場なのだろうか。
「あー?」
寝ぼけたままの頭を動かして部屋を見渡す。
家を建てる時、楽器を演奏するために作った防音室だ。俺は部屋に置いてある楽器をメンテナンスしている最中にうたた寝していたらしい。座りながら寝ていたせいか体中が固まって痛い。
「もー、ねぼすけさん!」
「・・・・・・いいんだよ、休みの日くらい」
言いながら体を伸ばして、欠伸を一つ。
「それで、重音。どうかしたのか? ここは遊び場じゃないっていつも言ってるだろ?」
「あ、そうそう。えっとね。パパに聞きたいことがあったの!」
「俺に? なんだ?」
「パパの昔話! どういう風に学校通ってたのか、どうやってママに出会ったのか、どうしてママと結婚したのか、あとあと・・・・・・」
「ちょっと待て、ちょっと待て。一度にたくさん言われても俺だって分からん」
「とにかくパパの昔の話! 青春の話!」
「・・・・・・急にそんなこと言われてもな、ママに聞けばいいんじゃないのか」
「パパの話はパパに聞けって」
「はあ」
それは分かるところだけど、しかし、アイツ、面倒くさがって丸投げしたな?
「それで、どうだったの?」
「どうだったのって言われてもなー」
割とろくでもない生活をしていた。
自分でそれを話していくのは少々恥ずかしいものがある。
「というか、どうしてそんなこと聞きたくなったんだ?」
「なんかねー、テレビでやっててねー」
「何がやってたんだ」
親の思い出を語る番組とかやっているのか? テレビなんてニュースくらいしか観ないからそういうものには疎かった。
「しかし、青春の話なんてな・・・・・・別に面白い話じゃないぞ」
「いいの!」
「そうか?」
「うん!」
「それなら・・・・・・まあ、いいか」
恥ずかしいのは確かだけど、隠すような過去を送ってきたわけじゃない。と思う。
「俺が覚えている範囲の話だからな?」
「やった!」
重音は元気よく頷いて、俺の膝の上に座ってくる。
しかしテレビの影響とはいえ親の昔話を聞きたいとは、最近の子供はマセているのか、それとも色々知りたがるお年頃というやつなのか。子供というのはまったく分からないことばかりだ。日々勉強の毎日である。
「・・・・・・さてと、そうだな。話すと言っても小学生とか中学生の頃はあんまり記憶にないんだよな。どこにでもいる子供だった気がするよ多分」
「でも、楽器はやってたんでしょ?」
「ああ、でも、それだってやってる奴はやってるもんだろ。お前だって習い事やってるじゃん。水泳。俺はそれが音楽関係だったってだけ」
「そっかー」
「だから、そうだな、高校時代の話をしよう」
目を閉じて昔の姿を思い出す。
おそらくそこが自分のターニングポイントだ。
「つまんなくても文句言うなよ。つーか、絶対つまらんからな」
「だいじょーぶ」
そうですかい。
「じゃあ、話してくぞ」




