第47話 歴代勇者との戦い
「中枢へ戻る」
俺が言った。
フィーネが即座に反対した。
「駄目です」
「何で」
「死刻まで一時間しかありません!」
「だから」
「だから休んでください!」
「休んだら死刻止まる?」
フィーネが黙った。
言い方が悪かった。
「ごめん」
「……」
「でも行く」
レオン。
「俺も」
ミレイア。
「当然です」
ユリウスが立つ。
さっきまで死にかけていた男。
「あなたは休んで」
俺。
「高城殿にだけは言われたくありません」
正しい。
ガイル。
グラム。
フィーネ。
リゼル。
全員戻ってきていた。
「外は?」
俺。
ガイル。
「一時間で準備したまま維持させる」
グラム。
「魔王軍も待機」
フィーネ。
「治癒院には任せられる人がいます」
俺は。
少しだけ嬉しかった。
任せられる人がいる。
誰も。
自分しかできないとは言わない。
◇
生命炉中枢。
再び。
光。
でも。
前とは違った。
入口から。
空気が重い。
「警戒を」
アベル。
剣。
レオン。
ユリウス。
ガイル。
全員。
武器。
俺。
短剣。
一応。
「使う気ある?」
ノア。
「何でお前いる!」
後ろ。
少年。
「来た」
「帰れ!」
「もう遅い」
「誰が連れてきた!」
全員。
目を逸らす。
フィーネまで。
「フィーネ?」
「私じゃありません」
リゼル。
「私も止めた」
グラム。
「気づいたときにはいた」
ノア。
得意げ。
「存在しないからな」
「そこで使うな!」
でも。
今から戻す時間。
ない。
「俺から離れるな」
「分かった」
今回は素直。
嫌なときだけ。
◇
中枢の扉。
開く。
瞬間。
光。
強い。
「下がれ!」
アベル。
地面。
魔法陣。
俺たちの前。
人影。
一人。
二人。
十人。
増える。
鎧。
剣。
槍。
杖。
古い装備。
「何だ」
レオン。
ミレイア。
顔。
青い。
「記録上の勇者たち」
「歴代の?」
「おそらく」
生命炉。
死者。
記憶。
魔力。
蓄積。
その中には、
かつて勇士として選ばれた人間たちの情報もある。
エルディオの声。
『中枢改変行為を検出』
『防衛処理を開始する』
「話し合いは?」
俺。
『結論は予測済み』
「便利だな予測!」
第一の勇者。
剣。
突進。
レオンが受ける。
衝撃。
「重い!」
ガイル。
盾。
別の槍。
弾く。
魔導士。
炎。
ミレイア。
氷の壁。
爆発。
「始まった!」
ノア。
「見れば分かる!」
◇
歴代勇者。
強い。
一人一人。
英雄。
当然。
こちらより経験がある。
でも。
おかしい。
「レオン!」
俺は叫ぶ。
「何です!」
「同じ動き!」
「何が!」
第一の剣士。
右。
左。
踏み込み。
斬り上げ。
また。
右。
左。
踏み込み。
「記録だから!」
ミレイアが気づく。
「保存された戦闘行動を再現している!」
生きていない。
学んでいるように見える。
でも。
記憶の中にないものには。
弱い。
「ガイル!」
「何だ!」
「グラムと入れ替われ!」
「は?」
「いいから!」
巨大盾。
ガイル。
獣人。
グラム。
体格は似ている。
戦い方。
違う。
ガイルが正面。
歴代槍兵。
それに適応した瞬間。
グラム。
横から。
斧。
武器ではなく。
床。
叩く。
振動。
投影。
一瞬揺らぐ。
ガイル。
「そういうのありか!」
グラム。
「戦場で床を使うなと誰が決めた!」
「気に入った!」
「気色悪い!」
また。
仲いい。
◇
ミレイア。
魔導士同士。
術式。
読み合う。
相手は。
彼女より速い。
「ミレイア!」
俺。
「今忙しいです!」
「相手の杖!」
「何です!」
先端。
宝石。
光る順。
毎回。
青。
赤。
白。
同じ。
「三回で一周!」
ミレイアが見る。
次。
青。
氷。
赤。
炎。
白。
光。
「本当……」
ミレイア。
少し笑う。
「単純ですね」
相手。
次の青。
ミレイア。
先に炎。
魔法。
ぶつかる。
蒸気。
視界。
消える。
その中。
フィーネ。
走る。
杖。
魔導士の足元。
「えい!」
殴った。
「フィーネ!」
俺。
「魔法使わないの?」
「今の方が早いです!」
強い。
◇
ユリウス。
歴代騎士。
完璧な剣。
ユリウスも。
完璧。
同じ。
だから。
決着しない。
「ユリウス!」
「何です!」
「崩せ!」
「何を!」
「型!」
「騎士に何を言うのです!」
「相手も騎士だから読まれてる!」
ユリウスの顔。
嫌そう。
「ではどうしろと!」
俺。
少し考え。
「ガイルみたいに!」
「一番嫌です!」
ガイル。
「聞こえてるぞ!」
でも。
ユリウス。
剣。
構え。
突然。
蹴る。
歴代騎士の膝。
「なっ」
俺まで驚く。
相手。
崩れる。
ユリウス。
柄。
顎。
投影。
消える。
ガイル。
「やればできるじゃねえか!」
ユリウス。
「二度とやりません!」
絶対またやる。
◇
レオン。
一番苦戦。
相手。
初代勇者に近い時代の剣士。
速い。
強い。
レオン。
押される。
「レオン!」
俺。
反応。
でも。
何を言えば。
相手。
剣。
レオンの肩。
切る。
血。
「レオンさん!」
フィーネ。
治癒。
レオン。
「まだ!」
もう一度。
真正面。
駄目。
同じ。
「レオン!」
俺。
「勇者やめろ!」
「何ですか!」
「その人の前で!」
相手。
勇者の戦い。
正しい。
美しい。
正面。
だから。
「妹の兄で戦え!」
意味。
俺も分からない。
でも。
レオンは。
一瞬。
止まった。
そして。
笑った。
「無茶言いますね」
剣。
構え。
変わる。
正式な型。
捨てる。
低い。
小さいころ。
妹と遊んだとき。
棒を振り回した。
喧嘩。
泥。
そんな動き。
剣士の投影。
反応。
遅れる。
レオン。
滑る。
剣の下。
潜る。
肩。
ぶつける。
倒す。
剣。
喉元。
投影。
消えた。
「格好悪いですね」
レオン。
「勝ったからいい」
「修一さんらしい」
◇
残る。
中央。
光。
歴代勇者たち。
まだ。
何十。
「多すぎない?」
俺。
アベル。
「五百年分だ」
「無理」
エルディオ。
『撤退を推奨』
俺。
「嫌」
『死亡予定まで三十二分』
「知ってる」
『勝率』
「聞かない」
『〇・七四パーセント』
「聞きたくなかった!」
ノア。
「低っ!」
「言うな!」
でも。
俺は。
周囲を見る。
レオン。
ガイル。
ミレイア。
フィーネ。
ユリウス。
アベル。
グラム。
リゼル。
ノア。
一人なら。
〇・七四。
でも。
「エルディオ」
『何だ』
「その勝率」
「誰が戦う前提?」
一瞬。
沈黙。
「俺一人?」
『高城修一の中枢到達確率』
「じゃあ」
俺は笑う。
「計算やり直して」
全員。
前へ。
歴代勇者たち。
俺は戦えない。
だから。
戦わない。
見る。
指示。
任せる。
「レオン、右!」
「はい!」
「ガイル、中央!」
「任せろ!」
「グラムは左!」
「ああ!」
「ミレイア、後ろの杖三人!」
「分かっています!」
「フィーネ、前出すぎ!」
「分かってます!」
「分かってない!」
「ユリウス!」
「言われなくても!」
「じゃあ任せる!」
「最初からそうしてください!」
アベル。
俺を見る。
「私は?」
「好きにして」
「私だけ雑ではないか」
「魔王だろ!」
初めて。
アベルが。
声を出して笑った。
そして。
剣を抜く。
「なら」
「好きにやらせてもらう」
黒い光。
歴代勇者。
吹き飛ぶ。
「強すぎだろ!」
俺。
アベル。
「魔王だからな」
便利。
◇
俺たちは。
進んだ。
一歩。
一歩。
戦っているのは。
みんな。
俺は。
短剣を一度も使わなかった。
それでも。
前へ進めた。
以前の俺なら。
役に立っていないと思ったかもしれない。
今は。
思わない。
自分にできないことを。
できる人へ任せる。
その人が動きやすいようにする。
俺がずっと。
できているつもりで。
一番苦手だったこと。
それが。
ここで。
初めて。
ちゃんとできている気がした。
そして。
歴代勇者の壁の向こう。
エルディオが。
待っていた。




